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失敗した朝
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不快感には覚えがあった。ぐっしょりと濡れた布団と服。どっちも伊吹さんがくれたものなのに。あまりの出来事に視界が滲む。
「っ、ひゅっ……ぁ、う……」
どうしよう。あれだけ恐れてたのに、やってしまった。寝ないように気をつけていたのに、昨日は伊吹さんと映画を見てそのまま布団まで連れてこられて、眠気に負けたんだ。寝たらダメだってわかってたのに。
こんなのバレたら、追い出される。嫌だ。
どうしたら隠せるか、なんて無駄なことを考えていると、扉を叩く音が聞こえてきた。思わず身体が固まる。
「朔也くん、起きてる?」
なんて答えたらいい。正直に言ったら許されるだろうか。いっぱい謝って縋ったら、伊吹さんの慈悲で追い出されないかもしれない。伊吹さんのお仕置きはどんなのだろう。殴られたら痛いだろうな。俺が悪いから仕方ないけど。
「昼ご飯作ったよ~」
続けて声をかけられる。そうだ、失敗に気を取られていたけど今の時間を確認していなかった。もう昼になっているらしい。
「いぶき、さん。ごめ、なさ……っひ」
ちゃんとドアを開けて対応するべきなのに、緊張して身体が上手く動かなくて、弱々しく謝ることしかできなかった。
しかし伊吹さんには聞こえていたらしい。
「え、泣いてる?ごめん、部屋入るね」
その言葉と同時にドアが開いて、伊吹さんと目が合う。近づいてきて、俺の隣にしゃがんだ。たぶん、もうバレてる。
「っ、ごめんなさい。ごめ、なさぃ……かたづける。ふとん、かいなおす」
「あー、やっちゃったか。布団は買い直さなくていいから、一旦落ち着こうな」
「ん、っひぅ、っう……」
「ほら、深呼吸」
「ひっ、うー……っは、ぅ」
背中をさすられて深呼吸を促される。上手く息が整わない。
「片付けはあとにして、お風呂行こうか」
「っ、やだ、ゃ、だ。おふろ……」
お風呂、嫌い。やだ。こわい。お風呂は苦しいし痛いから一番嫌い。怖い。お風呂だけはやだ。
「うーん、お風呂は嫌?」
「やだ、やだ。なんでもするから、おふろ、こわい」
「わかった。ちょっと待ってて」
こんなのわがままだ。俺が悪いのに。確か、昨日もこうやって寝るのを拒んだ気がする。いいかげん伊吹さんも俺のことが嫌いになる。
お風呂の代わりの罰はなんだろう。
「戻ったよ。タオルで拭こう。替えの下着も持ってきたから服脱いで」
「っはい。ごめん、なさ……っ」
謝りながら濡れそぼったズボンを脱ぐ。パンツはピッタリと張り付いていて脱ぎにくいし気持ち悪い。惨状を見てまた泣きそうになる。既に泣いてるけど、止められなくなった。
「拭いていい?俺の肩に手置いててね」
「ん、んぅ……」
恥ずかしい、こんなこと本当は自分でやるべきだなんてわかってるけど、逆らいたくないし、頭を撫でられたから甘えても許される気がして抵抗するのをやめてしまう。
太ももに暖かい布が触れた。そのままゆっくりと濡れているところを拭われていく。気持ちいい。
「終わった。じゃあパンツ履こうね」
「ぱんつ、はく……」
「っふふ、いい子」
「ぅ、いいこじゃない。失敗、したもん」
おねしょしたのに、伊吹さんに手伝わせたのにいい子だなんて変だ。褒められるのは嬉しいけど、慣れない感覚でむず痒い。そんな俺の気も知らず、また伊吹さんは俺を撫でる。
「朔也くんのおねしょは癖みたいなものだろうし、そんなに落ち込まなくていいよ」
なんで怒ってないんだろう。布団汚しちゃったのに。もらった服も、びちゃびちゃになった。
「じゃあ……おしおき、しないの?」
「しない。朔也くんはしたくておねしょしちゃったんじゃないでしょ」
「でも、でも、おもらししたから、失敗すんの、二回目……」
「ん?……あー、車の中での話か。あれは別に二度目はないぞってことじゃなくて、なるべく気ををつけてほしいってだけだよ」
「じゃあ、追い出さない?おれのこと」
「うん、当たり前。お仕置きも絶対しない」
俺があまりに泣き止まないからか、ついに伊吹さんに抱きしめられた。頭から背中まで、宥めるように触れられていく。伊吹さんはどこまでも優しい。俺、たぶん甘やかされてる。心地いい。
「さて、布団片付けようか。俺はベランダに干しておくから、シーツを洗濯機に入れてきて」
そっと離れていった伊吹さんは敷布団からシーツを剥がした。濡れたシーツを受け取って洗濯機に向かう。
伊吹さんになら、トイレが苦手なこととかいつもおねしょしちゃうことを打ち明けても大丈夫だと思えた。
「っ、ひゅっ……ぁ、う……」
どうしよう。あれだけ恐れてたのに、やってしまった。寝ないように気をつけていたのに、昨日は伊吹さんと映画を見てそのまま布団まで連れてこられて、眠気に負けたんだ。寝たらダメだってわかってたのに。
こんなのバレたら、追い出される。嫌だ。
どうしたら隠せるか、なんて無駄なことを考えていると、扉を叩く音が聞こえてきた。思わず身体が固まる。
「朔也くん、起きてる?」
なんて答えたらいい。正直に言ったら許されるだろうか。いっぱい謝って縋ったら、伊吹さんの慈悲で追い出されないかもしれない。伊吹さんのお仕置きはどんなのだろう。殴られたら痛いだろうな。俺が悪いから仕方ないけど。
「昼ご飯作ったよ~」
続けて声をかけられる。そうだ、失敗に気を取られていたけど今の時間を確認していなかった。もう昼になっているらしい。
「いぶき、さん。ごめ、なさ……っひ」
ちゃんとドアを開けて対応するべきなのに、緊張して身体が上手く動かなくて、弱々しく謝ることしかできなかった。
しかし伊吹さんには聞こえていたらしい。
「え、泣いてる?ごめん、部屋入るね」
その言葉と同時にドアが開いて、伊吹さんと目が合う。近づいてきて、俺の隣にしゃがんだ。たぶん、もうバレてる。
「っ、ごめんなさい。ごめ、なさぃ……かたづける。ふとん、かいなおす」
「あー、やっちゃったか。布団は買い直さなくていいから、一旦落ち着こうな」
「ん、っひぅ、っう……」
「ほら、深呼吸」
「ひっ、うー……っは、ぅ」
背中をさすられて深呼吸を促される。上手く息が整わない。
「片付けはあとにして、お風呂行こうか」
「っ、やだ、ゃ、だ。おふろ……」
お風呂、嫌い。やだ。こわい。お風呂は苦しいし痛いから一番嫌い。怖い。お風呂だけはやだ。
「うーん、お風呂は嫌?」
「やだ、やだ。なんでもするから、おふろ、こわい」
「わかった。ちょっと待ってて」
こんなのわがままだ。俺が悪いのに。確か、昨日もこうやって寝るのを拒んだ気がする。いいかげん伊吹さんも俺のことが嫌いになる。
お風呂の代わりの罰はなんだろう。
「戻ったよ。タオルで拭こう。替えの下着も持ってきたから服脱いで」
「っはい。ごめん、なさ……っ」
謝りながら濡れそぼったズボンを脱ぐ。パンツはピッタリと張り付いていて脱ぎにくいし気持ち悪い。惨状を見てまた泣きそうになる。既に泣いてるけど、止められなくなった。
「拭いていい?俺の肩に手置いててね」
「ん、んぅ……」
恥ずかしい、こんなこと本当は自分でやるべきだなんてわかってるけど、逆らいたくないし、頭を撫でられたから甘えても許される気がして抵抗するのをやめてしまう。
太ももに暖かい布が触れた。そのままゆっくりと濡れているところを拭われていく。気持ちいい。
「終わった。じゃあパンツ履こうね」
「ぱんつ、はく……」
「っふふ、いい子」
「ぅ、いいこじゃない。失敗、したもん」
おねしょしたのに、伊吹さんに手伝わせたのにいい子だなんて変だ。褒められるのは嬉しいけど、慣れない感覚でむず痒い。そんな俺の気も知らず、また伊吹さんは俺を撫でる。
「朔也くんのおねしょは癖みたいなものだろうし、そんなに落ち込まなくていいよ」
なんで怒ってないんだろう。布団汚しちゃったのに。もらった服も、びちゃびちゃになった。
「じゃあ……おしおき、しないの?」
「しない。朔也くんはしたくておねしょしちゃったんじゃないでしょ」
「でも、でも、おもらししたから、失敗すんの、二回目……」
「ん?……あー、車の中での話か。あれは別に二度目はないぞってことじゃなくて、なるべく気ををつけてほしいってだけだよ」
「じゃあ、追い出さない?おれのこと」
「うん、当たり前。お仕置きも絶対しない」
俺があまりに泣き止まないからか、ついに伊吹さんに抱きしめられた。頭から背中まで、宥めるように触れられていく。伊吹さんはどこまでも優しい。俺、たぶん甘やかされてる。心地いい。
「さて、布団片付けようか。俺はベランダに干しておくから、シーツを洗濯機に入れてきて」
そっと離れていった伊吹さんは敷布団からシーツを剥がした。濡れたシーツを受け取って洗濯機に向かう。
伊吹さんになら、トイレが苦手なこととかいつもおねしょしちゃうことを打ち明けても大丈夫だと思えた。
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