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229、二つの人形
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「王宮の中? それもエルザベーラのすぐ傍ですって!? どういうことなのルティナ先生!」
ルティナの思いがけない言葉に、アンジェリカが思わず身を乗り出す。
教え子のその姿に、魔法学院を務める大魔導士はこの執務室の机の引き出しを開ける。
そして、ゆっくりと何かを取り出した。
再び警戒するパトリシアとロファーシルの姿。
剣を抜き万が一に備える。
俺は右手で二人を制した。
「待て、二人とも……」
ナビ子がルティナの手に握られたそれを見て、首を傾げる。
「人形ですね」
リルルも頷いた。
「そうね、二体あるわ。何だかそれ……そっくりよね」
リルルが言うように、ルティナの手には二体の人形がある。
そして、その二体はそっくり同じものに見えた。
それに……
「大魔導士ルティナ、その人形は何だ? あんたにそっくりだぞ」
似せて作ったというレベルじゃない。
まるで目の前のルティナのミニチュアっていってもいいほどの精巧な作りだ。
ルティナは俺たちを見つめると言った。
「当然です。この中には私の魂の一部が吹きこまれている、似ているのはそのためです。そして、それを複写したこの人形の一つから作り出されたのが私」
そういった後、ルティナは言い直した。
「そうではありませんわね。正確に言えば私のオリジナルの魂の一部が吹きこまれた人形、そこから作り出されたのが私です」
「オリジナルの魂?」
俺の問いにルティナは頷いた。
「魂移双身の秘術。古代魔法言語と太古の遺物であるこの人形を使った秘術です」
それを聞いてアンジェリカは驚いたように声を上げた。
「魂移双身!? もしかして、その人形を使って魂と体を複製したってこと!?」
「ええ、アンジェリカ。流石ですわね話が早い。この人形には以前からよく助けられましたわ」
「そ、そういえば。神出鬼没なルティナ先生の姿を見て、もしかして双子なんじゃないかって馬鹿馬鹿しい噂があったけど」
ルティナはそれを聞いて楽し気にクスクスと笑った。
「お蔭で、貴方の様な手のかかる生徒も何とか指導することが出来ましたからね」
「ぐっ……」
言葉につまるアンジェリカ。
あの抜け道を使って出入りするだけではなく、余程色々やらかしているようだ。
魔法の才能があるだけに、尚更手がかかったのだろう。
俺はルティナに尋ねた。
「つまり、あんたはこの都が占領された時からこの状態ってことか!?」
「ええ、そうです。一人は元老院の一員としてエルザベーラの傍に。そして、私はこの学院を拠点として町を見守っていました。このアルカディレーナの都を取り戻す機会を窺うために準備をしながら。ですが……」
ルティナはそういうと、俺の手を握っているアンジェリカを見つめる。
パトリシアやロファーシルはともかく、気配を消すことになれていないアンジェリカは潜入して以来俺の手を握ることがくせになってるからな。
触れている者の気配も一緒に消し去る、例のニンジャマスターの力を使うためだ。
「まさかアンジェリカが恋人を連れてこの地に戻ってくるとは思いませんでした。貴方が来たということは、都の奪還計画があるのですね?」
「ああ、確かに俺たちはこの都の奪還の為に……っておい!」
今、ついでに何か変なことも一緒に聞こえた気がするが気のせいか?
アンジェリカが俺の隣で真っ赤になっている。
「な、な、なに言っているのよ先生? ば、馬鹿じゃないの。ど、どうしてこいつが私の恋人なのよ!」
「あら。見ていれば分かりますわよ。そんなに手をしっかりと握って、貴方がこんなに心を許している男性なんて初めてじゃないですか? 父親か恋人でもなければ、貴方がここまで気を許すタイプだとは思えませんもの」
「は? ち、違うし! カズヤは私の下僕みたいなものなんだから!」
……おい待て。
ナイトから下僕に降格になってるぞ。
ルティナは首を傾げる。
「照れることはないではありませんか? 恋を知らなければ、あの貴方がこんなに僅かの期間に見違えるほど大人になれるとは思えません。それにしても、意外と年上のおじ様がタイプだったのですね」
「ぐっ……人の話を聞きなさいよ」
おい待て。
誰がおじ様だ。
絶対あんたの方が年上だろ。
見た目は若いが、相手はエルフの大魔導士だからな。
まあそれはともかく、俺は俺たちがここにやってきた理由を説明しついでにアンジェリカが俺の手を握っていた理由も付け加える。
真っ赤になりながらアンジェリカはルティナを睨む。
「わ、分かった先生? カズヤなんて、わ、私のタイプじゃないんだから!」
ルティナは教え子の言葉を華麗にスルーすると俺に言った。
「なるほど。クリスティーナとも連絡が取れるのですね?」
「ちょ! 聞いてるの? 先生!」
「聞いてますよ。全く子供ですね、分かりやすいというかなんというか。それよりも、光の勇者といいましたね。私も貴方たちに伝えなくてはならない大切な話があるのです」
……流石だな。
どうやらアンジェリカの扱いには慣れているようだ。
俺はルティナに尋ねる。
「俺たちに伝えたいこと? ルティナ、一体それは何だ」
「ええ、エルザベーラたちについての話です。私とオリジナルは魂を共有している。彼女が知ったことは私にも伝わりますから」
ルティナはそういうと、彼女が知っていることを話し始めた。
ルティナの思いがけない言葉に、アンジェリカが思わず身を乗り出す。
教え子のその姿に、魔法学院を務める大魔導士はこの執務室の机の引き出しを開ける。
そして、ゆっくりと何かを取り出した。
再び警戒するパトリシアとロファーシルの姿。
剣を抜き万が一に備える。
俺は右手で二人を制した。
「待て、二人とも……」
ナビ子がルティナの手に握られたそれを見て、首を傾げる。
「人形ですね」
リルルも頷いた。
「そうね、二体あるわ。何だかそれ……そっくりよね」
リルルが言うように、ルティナの手には二体の人形がある。
そして、その二体はそっくり同じものに見えた。
それに……
「大魔導士ルティナ、その人形は何だ? あんたにそっくりだぞ」
似せて作ったというレベルじゃない。
まるで目の前のルティナのミニチュアっていってもいいほどの精巧な作りだ。
ルティナは俺たちを見つめると言った。
「当然です。この中には私の魂の一部が吹きこまれている、似ているのはそのためです。そして、それを複写したこの人形の一つから作り出されたのが私」
そういった後、ルティナは言い直した。
「そうではありませんわね。正確に言えば私のオリジナルの魂の一部が吹きこまれた人形、そこから作り出されたのが私です」
「オリジナルの魂?」
俺の問いにルティナは頷いた。
「魂移双身の秘術。古代魔法言語と太古の遺物であるこの人形を使った秘術です」
それを聞いてアンジェリカは驚いたように声を上げた。
「魂移双身!? もしかして、その人形を使って魂と体を複製したってこと!?」
「ええ、アンジェリカ。流石ですわね話が早い。この人形には以前からよく助けられましたわ」
「そ、そういえば。神出鬼没なルティナ先生の姿を見て、もしかして双子なんじゃないかって馬鹿馬鹿しい噂があったけど」
ルティナはそれを聞いて楽し気にクスクスと笑った。
「お蔭で、貴方の様な手のかかる生徒も何とか指導することが出来ましたからね」
「ぐっ……」
言葉につまるアンジェリカ。
あの抜け道を使って出入りするだけではなく、余程色々やらかしているようだ。
魔法の才能があるだけに、尚更手がかかったのだろう。
俺はルティナに尋ねた。
「つまり、あんたはこの都が占領された時からこの状態ってことか!?」
「ええ、そうです。一人は元老院の一員としてエルザベーラの傍に。そして、私はこの学院を拠点として町を見守っていました。このアルカディレーナの都を取り戻す機会を窺うために準備をしながら。ですが……」
ルティナはそういうと、俺の手を握っているアンジェリカを見つめる。
パトリシアやロファーシルはともかく、気配を消すことになれていないアンジェリカは潜入して以来俺の手を握ることがくせになってるからな。
触れている者の気配も一緒に消し去る、例のニンジャマスターの力を使うためだ。
「まさかアンジェリカが恋人を連れてこの地に戻ってくるとは思いませんでした。貴方が来たということは、都の奪還計画があるのですね?」
「ああ、確かに俺たちはこの都の奪還の為に……っておい!」
今、ついでに何か変なことも一緒に聞こえた気がするが気のせいか?
アンジェリカが俺の隣で真っ赤になっている。
「な、な、なに言っているのよ先生? ば、馬鹿じゃないの。ど、どうしてこいつが私の恋人なのよ!」
「あら。見ていれば分かりますわよ。そんなに手をしっかりと握って、貴方がこんなに心を許している男性なんて初めてじゃないですか? 父親か恋人でもなければ、貴方がここまで気を許すタイプだとは思えませんもの」
「は? ち、違うし! カズヤは私の下僕みたいなものなんだから!」
……おい待て。
ナイトから下僕に降格になってるぞ。
ルティナは首を傾げる。
「照れることはないではありませんか? 恋を知らなければ、あの貴方がこんなに僅かの期間に見違えるほど大人になれるとは思えません。それにしても、意外と年上のおじ様がタイプだったのですね」
「ぐっ……人の話を聞きなさいよ」
おい待て。
誰がおじ様だ。
絶対あんたの方が年上だろ。
見た目は若いが、相手はエルフの大魔導士だからな。
まあそれはともかく、俺は俺たちがここにやってきた理由を説明しついでにアンジェリカが俺の手を握っていた理由も付け加える。
真っ赤になりながらアンジェリカはルティナを睨む。
「わ、分かった先生? カズヤなんて、わ、私のタイプじゃないんだから!」
ルティナは教え子の言葉を華麗にスルーすると俺に言った。
「なるほど。クリスティーナとも連絡が取れるのですね?」
「ちょ! 聞いてるの? 先生!」
「聞いてますよ。全く子供ですね、分かりやすいというかなんというか。それよりも、光の勇者といいましたね。私も貴方たちに伝えなくてはならない大切な話があるのです」
……流石だな。
どうやらアンジェリカの扱いには慣れているようだ。
俺はルティナに尋ねる。
「俺たちに伝えたいこと? ルティナ、一体それは何だ」
「ええ、エルザベーラたちについての話です。私とオリジナルは魂を共有している。彼女が知ったことは私にも伝わりますから」
ルティナはそういうと、彼女が知っていることを話し始めた。
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