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225、魔法学院へ

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「ええ、カズヤ。アルカディレーナが誇る王立の魔法学院よ」

 アンジェリカの言葉に、俺たちはあらためて端末の中に映し出された地図を見つめる。
 この作戦の為にクリスティーナが中心になって作成してくれたものだ。

「間違いないな。リルルがもしここでルティナを見かけたとしたら、その先にあるのはアルカディレーナの魔法学院だ」

 パトリシアとエルも頷く。

「うむ! 間違いない。だとしたら勇者殿、大魔導士ルティナはそこにいるんじゃないだろうか?」

「そうね、可能性はあるわね」

「ああ、十分にあり得るな。リルル、ルティナを見かけたのはいつの話だ?」

 左肩に座ってこちらを見上げているリルルに、俺はそう尋ねる。

「二日前の夜よ、間違いないわ」

「そうか、二日前か」

 俺は少し考え込む。
 アンジェリカの話では、ルティナは王立魔法学院の校長だからな。
 地図から見ても、恐らく行き先は魔法学院で間違いないだろう。

「問題はその目的と、今でもここにいるかだな」

 俺は地図上の魔法学院を眺めながらそう呟いた。
 リルルが俺に言う。

「そんなの行ってみれば分かるじゃない!」

「はは、気楽に言ってくれるな」

 俺の言葉にナビ子が大きく頷いた。

「お気楽な貴方には分からないでしょうけど、私たちにも色々と作戦があるんです!」

「何よ偉そうに!」

「なんですって!」

 たく、俺の顔を挟んで左右の肩で睨み合うのはやめろ。
 しかし、確かにリルルの言うことも一理ある。

「ここまで来て行ってみない手はないか。今のところ、ルティナに関する一番有力な情報だからな」

「でしょ!」

 ナビ子と睨み合いながらリルルが胸を張る。
 虎穴に入らずんば虎子を得ずってやつだな。

「エルフの魔法学院か……よし、行ってみるか!」

 アンジェリカが大きく頷いた。

「ええ、カズヤ! 学院の中のことなら私に任せて、普通の学生が入ることを禁じられている場所も含めて、隅から隅まで知ってるわ。内緒で学園に忍び込む抜け道もね」

「へえ、そいつは頼もしいな!」

「ふふん、よくそこから抜け出したもの」

 ……抜け出すってお前。
 王女様が何やってるんだか。
 まあしかし、アンジェリカはルティナの愛弟子のようだからな。
 学園の構造はここにいる誰よりも熟知しているだろう。
 ミレリアが俺に言う。

「勇者様。私も一緒に行きます」

「ミレリア、お前がか?」

「はい、この中で今のアルカディレーナの街の様子を一番知っているのは私です。食料の備蓄もそろそろ底をつき始めていて、時々外に補充に行くんです。商店の倉庫には備蓄品が残っているところもありますから」

 なるほどな。
 ここにいる皆の為に、危険を冒して調べたのだろう。

「危険だぞ? ミレリア」

 ミレリアは大きな瞳でこちらを見つめる。

「大丈夫です。私はアデル様からエルフの聖教会に伝わる格闘術を習いました。私の出生を考えて護身用だと仰られて。勇者様たちの足手まといにはならないようにしますから」

 俺はミレリアを見つめた。
 確かにな、俺とやり合った時のミレリアの腕前は相当なものだった。
 聖教会に伝わる格闘術か、あの立ち回りを見る限り素手で戦う武術のようだ。
 ゲームによく出てくるモンクみたいなものかもしれないな。
 ミレリアは少し恥ずかしそうに笑う。

「そ、それに私、勇者様のお役に立ちたいんです。この瞳を開いていてもいいんだって、勇者様のお蔭で思えるようになったのが嬉しくて!」

 リルルがスイっと俺の肩の上から飛び立つと、ミレリアの肩の上に着地する。
 そしてミレリアを見上げた。

「カズヤに惚れたの? ミレリア」

「ば、馬鹿なこと言わないでリルル! 勇者様のお手伝いがしたいだけよ、それにアデル様を助けるためなんだから!」

「ふ~ん」

 俺はそんな二人を見て笑う。

「はは、分かってるさミレリア」

 リルルを少し睨むと、軽く咳払いをしてミレリアは清楚な顔をこちらに向ける。

「い、一緒に行っても構いませんか? きっとお役に立ちます!」

 俺はミレリアの申し出に同意する。

「断る理由はないな。ミレリアが一緒に来てくれるなら助かる。頼めるか?」

「本当ですか! もちろんです!」

 嬉しそうに微笑むミレリア。
 さっきも確認したように、ミレリアのステータスはこうだ。

 名前:ミレリア・エシュレイル
 種族:魔族とエルフのハーフ
 職業:シスターレベル627
 力:12700
 体力:18700
 魔力:27000
 速さ:17200
 幸運:8200

 魔法:【治癒魔法Sランク】【光属性魔法Sランク】【闇属性魔法Sランク】
 物理スキル:【格闘術Sランク】
 特殊魔法:【守りの祈り歌】
 特殊スキル:【聖気活性術】
 ユニークスキル:【光魔一体】
 称号:【赤い瞳の聖女】

 これを見ても、ステースや武術の腕もそうだが魔法も相当レベルが高い。
 足手まといどころか立派な戦力だからな。
 同行してくれるなら頼もしい限りだ。
 俺はロファーシルに連絡を取る。

「ロファーシル、聞こえるか」

「はい、勇者殿。先程話した通り、今そちらに向かっています」

「そうか。これから俺が迎えに行く」

 通信を終え、俺は一端隠れ家を出るとロファーシルたちをこの隠れ家に誘導した。
 聖堂の中を見て、驚くリーニャやロファーシル。

「まさか、都にこんな場所があるなんて……」

「確かに、驚きましたな。それに魔族どもの手を逃れ、避難している人々がいるとは」

「ええ、ロファーシル。彼らを救い出さなくては」

 やっぱり王女だな。
 リーニャの目に強い決意が感じられる。
 彼女は俺に尋ねた。

「勇者様、これからどうなさるおつもりですか?」

「ああ、リーニャ。一度クリスティーナに連絡をした後、俺たちは王立の魔法学院に潜入する」

 クリスティーナには直ぐにでも報告をしておくべきだろう。
 ここに避難をしている人々のことを考えれば、追加の救出チームを作って派遣してもらう必要もあるかもしれない。
 俺たちだけで全てをやるには手が足りなすぎる。

 子供たちもいるからな。
 オルフェレントへ避難させるにしても、万全の準備をしてから動き始めなければ危険だ。
 それなら、今の内に動き始めてもらった方がいい。

 もちろん、俺たちも二手に分かれて念のためにここを守る必要もある。
 実際に魔法学院に向かう前に、状況をクリスティーナと共有しておく必要があるだろう。
 俺の言葉にリーニャは大きく頷く。

「分かりました勇者様。お姉様とも相談して、早速作戦にとりかかりましょう!」


 ──────

 いつもご覧頂きましてありがとうございます。

 新連載の『転生したら魔力が無いと言われたので、独学でスーパーチートになりました! ~最強無双の大賢者~』もよろしくお願いします。
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