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218、開かれた瞳
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「違うの聖女様! この人は私たちを助けに来てくれた勇者様なの!」
「勇者? そんな話は信じられません。リナ、貴方は魔族に騙されているのです」
白いローブの女はそう答える。
警戒するのも当然だろうな、こんな極限状況で魔族の手を逃れていただけでも奇跡に近い。
しかも相手から見たら、自分が保護している子供たちを人質に取られているようなものだ。
だが俺達も、こんな状況で子供たちだけを行かせるわけにもいない。
俺は隠形結界を解いた。
景色に溶け込んでいた自分たちの体が、現れてくるのが自分でも見える。
ナビ子が俺に言う。
「姿を見せちゃっていいんですか? カズヤさん」
「いいも悪いも、どうやら結界の意味はなさそうだ」
そもそも、リナが声を上げた時点でこちらの位置はバレバレだろう。
俺はアンジェリカに尋ねる。
「アンジェリカ、あの聖女とやらに見覚えがあるか?」
「この距離では分からないわ。でもこんなに強い魔力の持ち主が、こんなところにいるなんて」
確かに、闇夜の中でこの距離だ。
まだ数十メートル程離れている。
俺のように【竜騎士の瞳】が使えないアンジェリカには相手の顔もハッキリとは見えないだろうからな。
俺は彼女に願い出る。
「あんたが、隠れ家とやらを作った聖女か? 子供たちからあんたのことは聞いた。俺たちは敵じゃない、出来ればそこに案内してもらいたいんだが……」
相手は無言だ。
「どうやら友好的とは言い難いな」
「ですね、カズヤさん」
(久しぶりだが、あれを使うか。このまま睨み合ってても仕方ないからな)
敵か味方かまで分かるかどうかは疑問だが、今の内にやっておいた方がいいだろう。
俺の現状のステータス
名前:カズヤ・サクラガワ
種族:人間
職業:無職レベル999
力:32000
体力:38700
魔力:22000
速さ:35200
幸運:17300
魔法:無し
物理スキル:無し
特殊魔法:【ナビ召喚】
特殊スキル:【鑑定眼】【全言語理解】【人竜一体】【アバターオン】
ユニークスキル:【趣味】【竜騎士の瞳】【竜騎士の剣】
称号:【遊び人】【邪竜殺し】【バーチャル竜騎士を極めた男】
特殊スキルの【鑑定眼】
俺は白いローブの女のステータスを鑑定眼で確認する。
「これは……」
その意外な内容に俺は一瞬、絶句した。
と同時に、その隙をつくように視線の先に居る白いローブの女の姿が消える。
パトリシアが叫ぶ。
「勇者殿!」
その時にはもう、ローブの女は俺の目の前にいた。
鋭い手刀が俺の頬を掠める。
その動きは聖女というよりも、訓練を受けた戦士のそれだ。
それも超が付くほど一流の。
ロファーシルやパトリシア以外に、これ程の速さで俺の間合いに入ってくる戦士は連合軍にも皆無だ。
俺が手刀を交わしたのと同時に、凄まじい速さの回し蹴りが放たれる。
コマのように回転する聖女の体と、美しい白い脚。
そこには白銀の闘気が込められている。
だが、その顔は驚いたように固まっている。
俺が彼女の蹴りを右手で掴んでいるからだ。
「どうした、もう終わりか?」
俺の言葉に、白いローブの女性は驚きを隠せない表情で言った。
「そんな……魔力を込めた私の蹴りを軽々と受け止めるとは、貴方は本当に人間ですか?」
目の前で起きた突然の戦闘に殺気立つパトリシアやアンジェリカたちを、俺は右手で制した。
「どうやら、敵意は消えたようだな」
「貴方は、私と戦いながらも子供たちを守ることを優先して立ちまわっていた。どうやら詫びなければならないのは私のようです」
その言葉に俺は肩をすくめる。
「それはお互い様だ、あんたの攻撃はどれも急所を狙ってない。子供たちを取り返そうと、俺を弾き飛ばすための蹴りだったからな」
殺気が込められた攻撃ではない。
俺が彼女の脚から手を離すと、子供たちが彼女の体にしっかりと抱きついた。
「聖女さま!」
「ぐす、ごめんなさい聖女さま……」
「リナ、マール!」
子供たちを抱き締めるその姿は、母性に溢れている。
アンジェリカは、彼女を睨みながら言った。
「貴方、一体何者なの? それほどの魔力の持ち主で高位のシスターなら、王女の私が知らないなんておかしいわ」
「王女? そうですか、貴方はアンジェリカ王女ですね」
不審そうに相手を見るアンジェリカ。
「何よ、都に居たのに私の顔も見たことがないっていうの?」
「ええ、私はずっと教会の中で育ってきましたから。滅多に外に出ることなく、教会の中であるお方に秘密裏に育てられたのです。シスターの肩書もそのお方が下さいました」
「教会の中でですって? どうしてそんな」
彼女は立ち上がると白いローブのフードをとる。
そして、閉じられていたその瞳を開いた。
「まさか……」
それを見てアンジェリカは身構える。
俺も何度か見たことがあるその特徴的な瞳。
エルフの王女の右手に雷が宿る。
「その目は! 魔族!!」
それも高位魔族のものだ。
外見はエルフそのものだが、瞳だけが違う。
「やめろ、アンジェリカ。彼女は魔族じゃない、エルフと魔族のハーフだ」
「勇者? そんな話は信じられません。リナ、貴方は魔族に騙されているのです」
白いローブの女はそう答える。
警戒するのも当然だろうな、こんな極限状況で魔族の手を逃れていただけでも奇跡に近い。
しかも相手から見たら、自分が保護している子供たちを人質に取られているようなものだ。
だが俺達も、こんな状況で子供たちだけを行かせるわけにもいない。
俺は隠形結界を解いた。
景色に溶け込んでいた自分たちの体が、現れてくるのが自分でも見える。
ナビ子が俺に言う。
「姿を見せちゃっていいんですか? カズヤさん」
「いいも悪いも、どうやら結界の意味はなさそうだ」
そもそも、リナが声を上げた時点でこちらの位置はバレバレだろう。
俺はアンジェリカに尋ねる。
「アンジェリカ、あの聖女とやらに見覚えがあるか?」
「この距離では分からないわ。でもこんなに強い魔力の持ち主が、こんなところにいるなんて」
確かに、闇夜の中でこの距離だ。
まだ数十メートル程離れている。
俺のように【竜騎士の瞳】が使えないアンジェリカには相手の顔もハッキリとは見えないだろうからな。
俺は彼女に願い出る。
「あんたが、隠れ家とやらを作った聖女か? 子供たちからあんたのことは聞いた。俺たちは敵じゃない、出来ればそこに案内してもらいたいんだが……」
相手は無言だ。
「どうやら友好的とは言い難いな」
「ですね、カズヤさん」
(久しぶりだが、あれを使うか。このまま睨み合ってても仕方ないからな)
敵か味方かまで分かるかどうかは疑問だが、今の内にやっておいた方がいいだろう。
俺の現状のステータス
名前:カズヤ・サクラガワ
種族:人間
職業:無職レベル999
力:32000
体力:38700
魔力:22000
速さ:35200
幸運:17300
魔法:無し
物理スキル:無し
特殊魔法:【ナビ召喚】
特殊スキル:【鑑定眼】【全言語理解】【人竜一体】【アバターオン】
ユニークスキル:【趣味】【竜騎士の瞳】【竜騎士の剣】
称号:【遊び人】【邪竜殺し】【バーチャル竜騎士を極めた男】
特殊スキルの【鑑定眼】
俺は白いローブの女のステータスを鑑定眼で確認する。
「これは……」
その意外な内容に俺は一瞬、絶句した。
と同時に、その隙をつくように視線の先に居る白いローブの女の姿が消える。
パトリシアが叫ぶ。
「勇者殿!」
その時にはもう、ローブの女は俺の目の前にいた。
鋭い手刀が俺の頬を掠める。
その動きは聖女というよりも、訓練を受けた戦士のそれだ。
それも超が付くほど一流の。
ロファーシルやパトリシア以外に、これ程の速さで俺の間合いに入ってくる戦士は連合軍にも皆無だ。
俺が手刀を交わしたのと同時に、凄まじい速さの回し蹴りが放たれる。
コマのように回転する聖女の体と、美しい白い脚。
そこには白銀の闘気が込められている。
だが、その顔は驚いたように固まっている。
俺が彼女の蹴りを右手で掴んでいるからだ。
「どうした、もう終わりか?」
俺の言葉に、白いローブの女性は驚きを隠せない表情で言った。
「そんな……魔力を込めた私の蹴りを軽々と受け止めるとは、貴方は本当に人間ですか?」
目の前で起きた突然の戦闘に殺気立つパトリシアやアンジェリカたちを、俺は右手で制した。
「どうやら、敵意は消えたようだな」
「貴方は、私と戦いながらも子供たちを守ることを優先して立ちまわっていた。どうやら詫びなければならないのは私のようです」
その言葉に俺は肩をすくめる。
「それはお互い様だ、あんたの攻撃はどれも急所を狙ってない。子供たちを取り返そうと、俺を弾き飛ばすための蹴りだったからな」
殺気が込められた攻撃ではない。
俺が彼女の脚から手を離すと、子供たちが彼女の体にしっかりと抱きついた。
「聖女さま!」
「ぐす、ごめんなさい聖女さま……」
「リナ、マール!」
子供たちを抱き締めるその姿は、母性に溢れている。
アンジェリカは、彼女を睨みながら言った。
「貴方、一体何者なの? それほどの魔力の持ち主で高位のシスターなら、王女の私が知らないなんておかしいわ」
「王女? そうですか、貴方はアンジェリカ王女ですね」
不審そうに相手を見るアンジェリカ。
「何よ、都に居たのに私の顔も見たことがないっていうの?」
「ええ、私はずっと教会の中で育ってきましたから。滅多に外に出ることなく、教会の中であるお方に秘密裏に育てられたのです。シスターの肩書もそのお方が下さいました」
「教会の中でですって? どうしてそんな」
彼女は立ち上がると白いローブのフードをとる。
そして、閉じられていたその瞳を開いた。
「まさか……」
それを見てアンジェリカは身構える。
俺も何度か見たことがあるその特徴的な瞳。
エルフの王女の右手に雷が宿る。
「その目は! 魔族!!」
それも高位魔族のものだ。
外見はエルフそのものだが、瞳だけが違う。
「やめろ、アンジェリカ。彼女は魔族じゃない、エルフと魔族のハーフだ」
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