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208、王都を目指して
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出発の朝。
俺たちは、オルフェレント城の練兵場にいた。
そこには一緒に旅立つ者達の姿がある。
最終目的地はエルフの都アルカディレーナだが、そこへは二手に分かれて各地の砦を視察しながら向かう。
今回の潜入作戦は極秘だからな。
王族が視察をすれば、砦の兵士たちへの激励にもなるから一石二鳥だ。
一方は、俺とパトリシアとアンジェリカ、そしてパトリシアが選んだ精鋭5名。
もう一方はロファーシルが率いる部隊で、ロファーシルとリーニャとシュレン、それにオルフェレントの精鋭部隊5名の構成になっている。
ロファーシルはリーニャと共にゲイルに騎乗し俺に言った。
「それでは勇者殿、我らはそろそろ参ります」
「ああ、ロファーシル! 頼むぜ」
「ええ、またお会いしましょう」
リーニャも俺たちを見ながら口を開いた。
「勇者様、パトリシア殿下、アンジェリカを頼みます」
「ああ、任せとけってリーニャ」
なんだかんだいっても、末の妹のことが心配なのだろう。
アンジェリカは頬を膨らませながらリーニャに答えた。
「もう! リーニャお姉様ったら子供扱いしないで。お姉様こそ気を付けて」
「分かってるわ、アンジェリカ! ふふ、いざとなったら特訓の成果をみせてあげないとね」
「そうよ、お姉様! その意気よ!」
俺は肩をすくめながら笑った。
「はは、そうならないことを祈りたいけどな」
ゲイルが翼を羽ばたかせ宙に舞い上がると、ロファーシルの部隊の兵士たちを乗せた飛竜が次々とそれに続く。
いつ見ても群れを為す飛竜の姿は壮観だ。
「グルゥウ!!」
俺の体に頬を摺り寄せるのはアッシュだ。
「アッシュ! 頼りにしてるぜ!!」
「グルウウォオオンン!!」
アッシュは俺の言葉に雄々しくそう声を上げた。
クレアはそんなアッシュを頼もしそうに眺めている。
「へへ、アッシュ。いい感じじゃないかよ」
「グルゥウウ」
どこかデレっとしながらそう唸り声を上げるアッシュ。
ナビ子がふぅとため息をついて俺に言う。
「まったく、動物は飼い主に似るって言いますけどアッシュさんもカズヤさんに似てきましたね。だらしない顔して」
「グルゥウウウオン!!」
心外だという顔をするアッシュ。
「たく、誰がだらしない顔してるんだ、誰が」
一方で、アンジェリカはエルとちょっとしたいざこざを起こしている。
「ちょっと、エル! 早くドラゴンになりなさいよドラゴンに!」
「何よ偉そうに、カズヤに頼まれなかったら貴方なんて乗せてあげないんだから!」
俺はため息をつきながら二人に言った。
「おいおい、仲良くしろって言っただろ? 喧嘩するなら二人とも置いてくぞ」
「だってカズヤぁ!」
「エルがいけないのよ!」
二人はツンとソッポを向き合いながらも、仕方ないといった感じで仲直りをした。
そして飛竜ほどのサイズの聖竜姿になったエルに、アンジェリカは騎乗する。
アッシュは俺しか乗りこなせないからな。
『S・H・Cオンライン』の乗り物として聖竜が登録されたからなのか、アッシュ並みの飛行性能を持ちながら非常に乗りやすい。
その力と乗り心地を考えれば、アンジェリカには最適なドラゴンだろう。
まあ、俺と一緒にアッシュに乗せる手もあるんだが、いざという時の為にエルに乗る訓練をさせておいて損はない。
「さて、出かけるか! 行ってくるぞ、メイ、エイリス」
俺の傍にはメイたちが見送りに来てくれている。
メイは少し恥ずかしそうに、俺に箱に入ったお弁当を差し出す。
「ママと一緒に作りました。パパに食べて欲しいです!」
「メイ、ありがとな! こりゃお昼が楽しみだ」
俺がそう答えると嬉しそうに笑うメイ。
世の父親が、娘の為に必死に働くわけだ。
メイの笑顔をみているとその気持ちがよく分かる。
エイリスが俺の手を握ると言った。
「勇者様、メイと一緒にお帰りをお待ちしています」
「ああ、エイリス!」
エイリスやメイには少しの間、連合軍の仕事で帰れないとだけ伝えてある。
心配をかけるといけないからな。
俺はアッシュの背に乗ると二人に手を振った。
「それじゃあ行ってくる!」
「パパ! いってらっしゃい!」
「いってらっしゃい! 勇者様」
俺を乗せたアッシュに続いて舞い上がる、クレアとエル、そしてアルーティアの精鋭部隊。
「さてと、それじゃあ行くとするか」
「うむ! 勇者殿!」
「ええ、カズヤ! 王都アルカディレーナを目指して!」
二人の言葉に俺は大きく頷いた。
「ああ、パトリシア、アンジェリカ! 作戦開始だ!!」
俺たちは、オルフェレント城の練兵場にいた。
そこには一緒に旅立つ者達の姿がある。
最終目的地はエルフの都アルカディレーナだが、そこへは二手に分かれて各地の砦を視察しながら向かう。
今回の潜入作戦は極秘だからな。
王族が視察をすれば、砦の兵士たちへの激励にもなるから一石二鳥だ。
一方は、俺とパトリシアとアンジェリカ、そしてパトリシアが選んだ精鋭5名。
もう一方はロファーシルが率いる部隊で、ロファーシルとリーニャとシュレン、それにオルフェレントの精鋭部隊5名の構成になっている。
ロファーシルはリーニャと共にゲイルに騎乗し俺に言った。
「それでは勇者殿、我らはそろそろ参ります」
「ああ、ロファーシル! 頼むぜ」
「ええ、またお会いしましょう」
リーニャも俺たちを見ながら口を開いた。
「勇者様、パトリシア殿下、アンジェリカを頼みます」
「ああ、任せとけってリーニャ」
なんだかんだいっても、末の妹のことが心配なのだろう。
アンジェリカは頬を膨らませながらリーニャに答えた。
「もう! リーニャお姉様ったら子供扱いしないで。お姉様こそ気を付けて」
「分かってるわ、アンジェリカ! ふふ、いざとなったら特訓の成果をみせてあげないとね」
「そうよ、お姉様! その意気よ!」
俺は肩をすくめながら笑った。
「はは、そうならないことを祈りたいけどな」
ゲイルが翼を羽ばたかせ宙に舞い上がると、ロファーシルの部隊の兵士たちを乗せた飛竜が次々とそれに続く。
いつ見ても群れを為す飛竜の姿は壮観だ。
「グルゥウ!!」
俺の体に頬を摺り寄せるのはアッシュだ。
「アッシュ! 頼りにしてるぜ!!」
「グルウウォオオンン!!」
アッシュは俺の言葉に雄々しくそう声を上げた。
クレアはそんなアッシュを頼もしそうに眺めている。
「へへ、アッシュ。いい感じじゃないかよ」
「グルゥウウ」
どこかデレっとしながらそう唸り声を上げるアッシュ。
ナビ子がふぅとため息をついて俺に言う。
「まったく、動物は飼い主に似るって言いますけどアッシュさんもカズヤさんに似てきましたね。だらしない顔して」
「グルゥウウウオン!!」
心外だという顔をするアッシュ。
「たく、誰がだらしない顔してるんだ、誰が」
一方で、アンジェリカはエルとちょっとしたいざこざを起こしている。
「ちょっと、エル! 早くドラゴンになりなさいよドラゴンに!」
「何よ偉そうに、カズヤに頼まれなかったら貴方なんて乗せてあげないんだから!」
俺はため息をつきながら二人に言った。
「おいおい、仲良くしろって言っただろ? 喧嘩するなら二人とも置いてくぞ」
「だってカズヤぁ!」
「エルがいけないのよ!」
二人はツンとソッポを向き合いながらも、仕方ないといった感じで仲直りをした。
そして飛竜ほどのサイズの聖竜姿になったエルに、アンジェリカは騎乗する。
アッシュは俺しか乗りこなせないからな。
『S・H・Cオンライン』の乗り物として聖竜が登録されたからなのか、アッシュ並みの飛行性能を持ちながら非常に乗りやすい。
その力と乗り心地を考えれば、アンジェリカには最適なドラゴンだろう。
まあ、俺と一緒にアッシュに乗せる手もあるんだが、いざという時の為にエルに乗る訓練をさせておいて損はない。
「さて、出かけるか! 行ってくるぞ、メイ、エイリス」
俺の傍にはメイたちが見送りに来てくれている。
メイは少し恥ずかしそうに、俺に箱に入ったお弁当を差し出す。
「ママと一緒に作りました。パパに食べて欲しいです!」
「メイ、ありがとな! こりゃお昼が楽しみだ」
俺がそう答えると嬉しそうに笑うメイ。
世の父親が、娘の為に必死に働くわけだ。
メイの笑顔をみているとその気持ちがよく分かる。
エイリスが俺の手を握ると言った。
「勇者様、メイと一緒にお帰りをお待ちしています」
「ああ、エイリス!」
エイリスやメイには少しの間、連合軍の仕事で帰れないとだけ伝えてある。
心配をかけるといけないからな。
俺はアッシュの背に乗ると二人に手を振った。
「それじゃあ行ってくる!」
「パパ! いってらっしゃい!」
「いってらっしゃい! 勇者様」
俺を乗せたアッシュに続いて舞い上がる、クレアとエル、そしてアルーティアの精鋭部隊。
「さてと、それじゃあ行くとするか」
「うむ! 勇者殿!」
「ええ、カズヤ! 王都アルカディレーナを目指して!」
二人の言葉に俺は大きく頷いた。
「ああ、パトリシア、アンジェリカ! 作戦開始だ!!」
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