89 / 114
連載
204、リーニャの特訓
しおりを挟む
「よし! そうと決まったら早速準備を始めるぞ」
俺の言葉に皆大きく頷く。
作戦の決行は今日から三日後の夜。
移動も含めると、明後日の朝にはオルフェレントを出ることになるだろう。
俺とパトリシアとアンジェリカ、そしてロファーシルとリーニャとシュレン。
それぞれ、アルーティアとオルフェレントの精鋭部隊を連れて移動する。
別々に動くのはこれが極秘作戦だからである。
俺たちが都に行くことを知る者はごく僅かで、軍には一帯の砦の視察といった名目が伝えられることになるだろう。
そして現地で合流する予定だ。
その辺りの手配はクリスティーナが上手くやってくれるはずだ。
「侵入経路の詳細は作成し次第、潜入部隊の端末に送りますわ」
「ああ、頼む。クリスティーナ」
こんな時、端末があるのは助かる。
いつでも細かい情報の共有が可能だからな。
後は万が一の時、リーニャがどの程度戦えるのかだな。
リーニャも相当な魔力の持ち主だが、気が強い分アンジェリカの方が戦闘向きな気はする。
それに俺と一緒に『S・H・Cオンライン』をやっているだけあって、アンジェリカの力は把握してるからな。
元々魔法の素質がある上に、ゲーム内で覚えた魔法も多岐にわたる。
大技のトールハンマーも使えるからな。
「今回の任務は潜入調査だ。戦闘は避けたいが、場合によってはそうもいってられないだろうからな」
俺は自分の部屋に潜入に携わるメンバーを揃えた。
俺とパトリシア、アンジェリカとロファーシル、そしてリーニャとシュレンだ。
「とりあえずリーニャとシュレンの力を知っておきたい。それによって作戦行動も変わってくるだろうからな」
「左様でございますな」
「分かりましたわ、勇者様」
頷くシュレンと、俺を見つめるリーニャ。
アンジェカが俺に言う。
「『S・H・Cオンライン』を使うのね」
「ああ、アンジェリカ。さっきも言ったがそれが一番効率がいいからな。特訓をするにしてもリーニャの力を知っておかないとな」
リーニャは覚悟を決めたように頷く。
「分かりましたわ、私、頑張ります!」
アンジェリカが俺を見つめている。
「ねえ、カズヤ。時間が無いのでしょう? だったら私にいい考えがあるの」
「何だよアンジェリカ?」
耳を傾ける俺にアンジェリカは囁いた。
俺はそれを聞いてアンジェリカに答える。
「アンジェリカ……お前、それマジでいってるの?」
「ええ、本気よ! お姉様には悪いとは思うけど、あれが一番効果的だもの。経験者が言うんだから間違いないわ!」
◇ ◇ ◇
「リーニャお姉様! 油断しないで、油断したら一気に襲い掛かってくるわよ」
「ちょ、ちょっと、アンジェリカ!」
リーニャの声が震えている。
白い衣装から覗く美しい白い腕に、鳥肌が立っているのが分かった。
あの後、俺たちは直ぐに『S・H・Cオンライン』にログインした。
そして、今いるのは例の海岸の拠点の前だ。
リーニャのその姿に、俺はアンジェリカに問いかける。
「おい、アンジェリカ。いくらなんでもやり過ぎじゃないのか?」
「あれでいいのよ。リーニャお姉様は、私以上にああいうのが苦手なタイプだもの。追い詰められた方が力が出るはずよ!」
リーニャを取り囲んでいるのは、巨大なイカとタコの群れだ。
ゴールデンキングクラーケンではないが、リーニャにとっては手強い相手だろう。
「こないで、もういやぁ!」
見たことも無いモンスター相手にリーニャは悲鳴を上げる。
リーニャとは『S・H・Cオンライン』はしたことがなかったからな。
彼女はシュレンと共にいた。
シュレンが目の前の敵を斬り捨てる。
さすがオルフェレントでも指折りの戦士だけあって、見事な太刀捌きだ。
その黒装束姿と技はまるで忍者のようである。
「へえ、やるもんだなシュレンは。辺境伯に信頼されるだけはあるぜ」
俺の言葉にロファーシルは頷く。
「オルフェレント哨戒特殊部隊の隊長ですからな」
「シュレンの腕は十分に確認できたが、後はリーニャか」
リーニャの後ろに湧いて出たモンスターの触手が一本、その肌に触れる。
「ひっ! いやぁあああん!!」
アンジェリカが悲鳴を上げたリーニャに声をかける。
「お姉様! 覚悟を決めて、自分で守らないと、そいつらにもみくちゃにされるわよ!」
「もう! アンジェリカの馬鹿ぁ!!」
叫び声を上げるリーニャに、無数の触手が巻き付いた。
シュレンは、目の前の敵を切り伏せるだけで精いっぱいである。
「姫!!」
「ちょっと! いやぁあああああ、どこ触ってるのよ!!」
リーニャの体からバチバチと雷が沸き上がる。
右手には雷、そして左手には炎が生じるのが見えた。
自分に絡みつく触手を睨みながらリーニャは叫ぶ。
「はぁああああ! ライトニングフレア!!」
リーニャの周りに炎を纏った落雷が降り注ぐ。
焼き尽くされた触手モンスターを眺めながら、シュレンはリーニャを振り返った。
「リーニャ様! お見事で御座います、これ程の魔法をお使いになれるとは」
「え? あ、あはは……そ、そうね、あんないやらしい魔物、許さないんだから! なんだか自信がついてきたわ」
アンジェリカは満足げに頷いた。
「範囲魔法のライトニングフレアね、いい調子だわ。もう少し頑張ればトールハンマーもいけそうね。早くゴールデンキングクラーケンが湧かないかしら」
「……鬼だなお前」
「ですね、カズヤさん」
ナビ子もドン引きしている。
結局この後、暫くリーニャの特訓は続くことになったのである。
俺の言葉に皆大きく頷く。
作戦の決行は今日から三日後の夜。
移動も含めると、明後日の朝にはオルフェレントを出ることになるだろう。
俺とパトリシアとアンジェリカ、そしてロファーシルとリーニャとシュレン。
それぞれ、アルーティアとオルフェレントの精鋭部隊を連れて移動する。
別々に動くのはこれが極秘作戦だからである。
俺たちが都に行くことを知る者はごく僅かで、軍には一帯の砦の視察といった名目が伝えられることになるだろう。
そして現地で合流する予定だ。
その辺りの手配はクリスティーナが上手くやってくれるはずだ。
「侵入経路の詳細は作成し次第、潜入部隊の端末に送りますわ」
「ああ、頼む。クリスティーナ」
こんな時、端末があるのは助かる。
いつでも細かい情報の共有が可能だからな。
後は万が一の時、リーニャがどの程度戦えるのかだな。
リーニャも相当な魔力の持ち主だが、気が強い分アンジェリカの方が戦闘向きな気はする。
それに俺と一緒に『S・H・Cオンライン』をやっているだけあって、アンジェリカの力は把握してるからな。
元々魔法の素質がある上に、ゲーム内で覚えた魔法も多岐にわたる。
大技のトールハンマーも使えるからな。
「今回の任務は潜入調査だ。戦闘は避けたいが、場合によってはそうもいってられないだろうからな」
俺は自分の部屋に潜入に携わるメンバーを揃えた。
俺とパトリシア、アンジェリカとロファーシル、そしてリーニャとシュレンだ。
「とりあえずリーニャとシュレンの力を知っておきたい。それによって作戦行動も変わってくるだろうからな」
「左様でございますな」
「分かりましたわ、勇者様」
頷くシュレンと、俺を見つめるリーニャ。
アンジェカが俺に言う。
「『S・H・Cオンライン』を使うのね」
「ああ、アンジェリカ。さっきも言ったがそれが一番効率がいいからな。特訓をするにしてもリーニャの力を知っておかないとな」
リーニャは覚悟を決めたように頷く。
「分かりましたわ、私、頑張ります!」
アンジェリカが俺を見つめている。
「ねえ、カズヤ。時間が無いのでしょう? だったら私にいい考えがあるの」
「何だよアンジェリカ?」
耳を傾ける俺にアンジェリカは囁いた。
俺はそれを聞いてアンジェリカに答える。
「アンジェリカ……お前、それマジでいってるの?」
「ええ、本気よ! お姉様には悪いとは思うけど、あれが一番効果的だもの。経験者が言うんだから間違いないわ!」
◇ ◇ ◇
「リーニャお姉様! 油断しないで、油断したら一気に襲い掛かってくるわよ」
「ちょ、ちょっと、アンジェリカ!」
リーニャの声が震えている。
白い衣装から覗く美しい白い腕に、鳥肌が立っているのが分かった。
あの後、俺たちは直ぐに『S・H・Cオンライン』にログインした。
そして、今いるのは例の海岸の拠点の前だ。
リーニャのその姿に、俺はアンジェリカに問いかける。
「おい、アンジェリカ。いくらなんでもやり過ぎじゃないのか?」
「あれでいいのよ。リーニャお姉様は、私以上にああいうのが苦手なタイプだもの。追い詰められた方が力が出るはずよ!」
リーニャを取り囲んでいるのは、巨大なイカとタコの群れだ。
ゴールデンキングクラーケンではないが、リーニャにとっては手強い相手だろう。
「こないで、もういやぁ!」
見たことも無いモンスター相手にリーニャは悲鳴を上げる。
リーニャとは『S・H・Cオンライン』はしたことがなかったからな。
彼女はシュレンと共にいた。
シュレンが目の前の敵を斬り捨てる。
さすがオルフェレントでも指折りの戦士だけあって、見事な太刀捌きだ。
その黒装束姿と技はまるで忍者のようである。
「へえ、やるもんだなシュレンは。辺境伯に信頼されるだけはあるぜ」
俺の言葉にロファーシルは頷く。
「オルフェレント哨戒特殊部隊の隊長ですからな」
「シュレンの腕は十分に確認できたが、後はリーニャか」
リーニャの後ろに湧いて出たモンスターの触手が一本、その肌に触れる。
「ひっ! いやぁあああん!!」
アンジェリカが悲鳴を上げたリーニャに声をかける。
「お姉様! 覚悟を決めて、自分で守らないと、そいつらにもみくちゃにされるわよ!」
「もう! アンジェリカの馬鹿ぁ!!」
叫び声を上げるリーニャに、無数の触手が巻き付いた。
シュレンは、目の前の敵を切り伏せるだけで精いっぱいである。
「姫!!」
「ちょっと! いやぁあああああ、どこ触ってるのよ!!」
リーニャの体からバチバチと雷が沸き上がる。
右手には雷、そして左手には炎が生じるのが見えた。
自分に絡みつく触手を睨みながらリーニャは叫ぶ。
「はぁああああ! ライトニングフレア!!」
リーニャの周りに炎を纏った落雷が降り注ぐ。
焼き尽くされた触手モンスターを眺めながら、シュレンはリーニャを振り返った。
「リーニャ様! お見事で御座います、これ程の魔法をお使いになれるとは」
「え? あ、あはは……そ、そうね、あんないやらしい魔物、許さないんだから! なんだか自信がついてきたわ」
アンジェリカは満足げに頷いた。
「範囲魔法のライトニングフレアね、いい調子だわ。もう少し頑張ればトールハンマーもいけそうね。早くゴールデンキングクラーケンが湧かないかしら」
「……鬼だなお前」
「ですね、カズヤさん」
ナビ子もドン引きしている。
結局この後、暫くリーニャの特訓は続くことになったのである。
0
お気に入りに追加
5,645
あなたにおすすめの小説
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。