76 / 82
76、ブレス
しおりを挟む
なんだ? 思わず俺は身構える。
ジュリアの角には強烈な力が宿っている。
「いくよ!!」
ジュリアは大きく息を吸い込む。
そして、彼女はその口から真紅に輝く炎のブレスを吐いた。
そのブレスの炎が、ジュリア専用の炉に鮮やかな火を灯す。
それを見て、ナナとレイラが目を丸くした。
「ちょ! なんなのよあれ」
「あ、あの女、炎を吐いたわよ!!」
ジュリアは、驚く俺たちを尻目に炉の中に長い鋼を入れるとそれを熱していく。
そして、それを眺めながら火力を調節するように再びブレスを吐いた。
みるみるうちに美しい真紅に熱されていく鋼を、ジュリアの瞳が見つめている。
それは美しく、竜人族特有のものに見えた。
「ふふ、炎竜の血を引く私にとって炎は体の一部のようなもの。その揺らめきの一つ一つさえ、手に取るように分かるのさ!」
そして、赤く熱された鋼を鍛冶用の火箸で炉から取り出すと、鋼を叩くための金床の上に載せて、大きな槌で打ち始める。
その腕前は見事なもので、鍛冶職人の一人として思わず見とれてしまう程だ。
魂を打ち込むように、精悍で凛とした表情で大胆にハンマーを打ちおろしていく。
彼女の鍛冶のスキルの高さもあり、鋼はみるみる内に鍛え上げられそして剣の形にへと変わっていった。
鍛冶職人たちは一斉に声を上げる。
「おおお! さすがジュリア様!!」
「200年経っても少しも衰えてはおられぬ。赤竜姫ジュリアの炎舞の鍛冶!!」
「なんと見事な!!」
豪胆でいてまるで舞うような華麗さを持つその鍛冶仕事と、生きているように炉の中で舞いあがる炎は、炎舞の鍛冶の名に相応しい美しさだ。
大槌で鍛え上げられていく鋼から、鮮やかな火花が飛び散る。
ジュリアは鍛冶巫女たちに言う。
「頼んだよ鍛冶巫女たち! 霊気を込めな! あたしが、それを燃えるような刃文に変えてやる!!」
「ええ、ジュリア様!」
「その剣に、我らの霊気を!!」
鍛冶巫女たちはその言葉を聞いて、頷きあうとジュリアの後ろで見事な舞を披露する。
黄金の腕輪にある鈴の音が鳴り響き、幻想的なその舞が巫女たちの霊気を高めていった。
同時にジュリアの闘気も高まっていく。
額の角が再び艶やかな紅に輝くと、鍛冶巫女たちの霊気で大槌が包まれていく。
それはジュリアの闘気とも一体となり紅蓮に輝いた。
「はぁああああああ!!」
気合もろとも、鋼を鍛え上げていくジュリア。
もう見事な剣の形をしているその鋼には、美しい紅の刀文が浮かび上がっていく。
普通の鍛冶とは大きく違う。
しかし、これがジュリアの鍛冶なのだろう。
彼女は大槌を振り上げながら俺に言った。
「どうしたんだい? ユウキ。あたしの鍛冶にビビっちまったのかい? ならもう勝負は決まったも同然だね!!」
それを聞いてナナとレイラが俺に言った。
「裕樹!!」
「どうするのユウキ。このままじゃ、あの女が言うように勝負が決まっちゃうわ!」
先ほどまでは自信満々だったレイラが慌てるほどの見事な鍛冶だ。
燃え上がるような炎の刀文が刻まれた剣。
出来上がるのは素晴らしい剣だろう。
まるで炎と一体になったようなあの剣、同じようなものを作ろうとしてもジュリアには到底及ばない。
ジュリアと同じことをしようとしても駄目だ。
だったら俺はどうしたら──
俺は自分の炉の中の炎を見つめる。
「焦るな……俺は俺の鍛冶をするだけだ!」
俺は一体どんな剣が作りたいのだろうか。
頭の中に、俺は自分が作りたい剣を思い浮かべた。
そして、既に職人たちの手によって炉の中で熱せられていた鋼を火箸で取り出すとそれを金床の上に載せた。
ジュリアの角には強烈な力が宿っている。
「いくよ!!」
ジュリアは大きく息を吸い込む。
そして、彼女はその口から真紅に輝く炎のブレスを吐いた。
そのブレスの炎が、ジュリア専用の炉に鮮やかな火を灯す。
それを見て、ナナとレイラが目を丸くした。
「ちょ! なんなのよあれ」
「あ、あの女、炎を吐いたわよ!!」
ジュリアは、驚く俺たちを尻目に炉の中に長い鋼を入れるとそれを熱していく。
そして、それを眺めながら火力を調節するように再びブレスを吐いた。
みるみるうちに美しい真紅に熱されていく鋼を、ジュリアの瞳が見つめている。
それは美しく、竜人族特有のものに見えた。
「ふふ、炎竜の血を引く私にとって炎は体の一部のようなもの。その揺らめきの一つ一つさえ、手に取るように分かるのさ!」
そして、赤く熱された鋼を鍛冶用の火箸で炉から取り出すと、鋼を叩くための金床の上に載せて、大きな槌で打ち始める。
その腕前は見事なもので、鍛冶職人の一人として思わず見とれてしまう程だ。
魂を打ち込むように、精悍で凛とした表情で大胆にハンマーを打ちおろしていく。
彼女の鍛冶のスキルの高さもあり、鋼はみるみる内に鍛え上げられそして剣の形にへと変わっていった。
鍛冶職人たちは一斉に声を上げる。
「おおお! さすがジュリア様!!」
「200年経っても少しも衰えてはおられぬ。赤竜姫ジュリアの炎舞の鍛冶!!」
「なんと見事な!!」
豪胆でいてまるで舞うような華麗さを持つその鍛冶仕事と、生きているように炉の中で舞いあがる炎は、炎舞の鍛冶の名に相応しい美しさだ。
大槌で鍛え上げられていく鋼から、鮮やかな火花が飛び散る。
ジュリアは鍛冶巫女たちに言う。
「頼んだよ鍛冶巫女たち! 霊気を込めな! あたしが、それを燃えるような刃文に変えてやる!!」
「ええ、ジュリア様!」
「その剣に、我らの霊気を!!」
鍛冶巫女たちはその言葉を聞いて、頷きあうとジュリアの後ろで見事な舞を披露する。
黄金の腕輪にある鈴の音が鳴り響き、幻想的なその舞が巫女たちの霊気を高めていった。
同時にジュリアの闘気も高まっていく。
額の角が再び艶やかな紅に輝くと、鍛冶巫女たちの霊気で大槌が包まれていく。
それはジュリアの闘気とも一体となり紅蓮に輝いた。
「はぁああああああ!!」
気合もろとも、鋼を鍛え上げていくジュリア。
もう見事な剣の形をしているその鋼には、美しい紅の刀文が浮かび上がっていく。
普通の鍛冶とは大きく違う。
しかし、これがジュリアの鍛冶なのだろう。
彼女は大槌を振り上げながら俺に言った。
「どうしたんだい? ユウキ。あたしの鍛冶にビビっちまったのかい? ならもう勝負は決まったも同然だね!!」
それを聞いてナナとレイラが俺に言った。
「裕樹!!」
「どうするのユウキ。このままじゃ、あの女が言うように勝負が決まっちゃうわ!」
先ほどまでは自信満々だったレイラが慌てるほどの見事な鍛冶だ。
燃え上がるような炎の刀文が刻まれた剣。
出来上がるのは素晴らしい剣だろう。
まるで炎と一体になったようなあの剣、同じようなものを作ろうとしてもジュリアには到底及ばない。
ジュリアと同じことをしようとしても駄目だ。
だったら俺はどうしたら──
俺は自分の炉の中の炎を見つめる。
「焦るな……俺は俺の鍛冶をするだけだ!」
俺は一体どんな剣が作りたいのだろうか。
頭の中に、俺は自分が作りたい剣を思い浮かべた。
そして、既に職人たちの手によって炉の中で熱せられていた鋼を火箸で取り出すとそれを金床の上に載せた。
11
お気に入りに追加
3,152
あなたにおすすめの小説
えっ、能力なしでパーティ追放された俺が全属性魔法使い!? ~最強のオールラウンダー目指して謙虚に頑張ります~
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
コミカライズ10/19(水)開始!
2024/2/21小説本編完結!
旧題:えっ能力なしでパーティー追放された俺が全属性能力者!? 最強のオールラウンダーに成り上がりますが、本人は至って謙虚です
※ 書籍化に伴い、一部範囲のみの公開に切り替えられています。
※ 書籍化に伴う変更点については、近況ボードを確認ください。
生まれつき、一人一人に魔法属性が付与され、一定の年齢になると使うことができるようになる世界。
伝説の冒険者の息子、タイラー・ソリス(17歳)は、なぜか無属性。
勤勉で真面目な彼はなぜか報われておらず、魔法を使用することができなかった。
代わりに、父親から教わった戦術や、体術を駆使して、パーティーの中でも重要な役割を担っていたが…………。
リーダーからは無能だと疎まれ、パーティーを追放されてしまう。
ダンジョンの中、モンスターを前にして見捨てられたタイラー。ピンチに陥る中で、その血に流れる伝説の冒険者の能力がついに覚醒する。
タイラーは、全属性の魔法をつかいこなせる最強のオールラウンダーだったのだ! その能力のあまりの高さから、あらわれるのが、人より少し遅いだけだった。
タイラーは、その圧倒的な力で、危機を回避。
そこから敵を次々になぎ倒し、最強の冒険者への道を、駆け足で登り出す。
なにせ、初の強モンスターを倒した時点では、まだレベル1だったのだ。
レベルが上がれば最強無双することは約束されていた。
いつか彼は血をも超えていくーー。
さらには、天下一の美女たちに、これでもかと愛されまくることになり、モフモフにゃんにゃんの桃色デイズ。
一方、タイラーを追放したパーティーメンバーはというと。
彼を失ったことにより、チームは瓦解。元々大した力もないのに、タイラーのおかげで過大評価されていたパーティーリーダーは、どんどんと落ちぶれていく。
コメントやお気に入りなど、大変励みになっています。お気軽にお寄せくださいませ!
・12/27〜29 HOTランキング 2位 記録、維持
・12/28 ハイファンランキング 3位
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
外れスキル『収納』がSSS級スキル『亜空間』に成長しました~剣撃も魔法もモンスターも収納できます~
春小麦
ファンタジー
——『収納』という、ただバッグに物をたくさん入れられるだけの外れスキル。
冒険者になることを夢見ていたカイル・ファルグレッドは落胆し、冒険者になることを諦めた。
しかし、ある日ゴブリンに襲われたカイルは、無意識に自身の『収納』スキルを覚醒させる。
パンチや蹴りの衝撃、剣撃や魔法、はたまたドラゴンなど、この世のありとあらゆるものを【アイテムボックス】へ『収納』することができるようになる。
そこから郵便屋を辞めて冒険者へと転向し、もはや外れスキルどころかブッ壊れスキルとなった『収納(亜空間)』を駆使して、仲間と共に最強冒険者を目指していく。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
異世界召喚されたと思ったら何故か神界にいて神になりました
璃音
ファンタジー
主人公の音無 優はごく普通の高校生だった。ある日を境に優の人生が大きく変わることになる。なんと、優たちのクラスが異世界召喚されたのだ。だが、何故か優だけか違う場所にいた。その場所はなんと神界だった。優は神界で少しの間修行をすることに決めその後にクラスのみんなと合流することにした。
果たして優は地球ではない世界でどのように生きていくのか!?
これは、主人公の優が人間を辞め召喚された世界で出会う人達と問題を解決しつつ自由気ままに生活して行くお話。
夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
異世界転生した俺は平和に暮らしたいと願ったのだが
倉田 フラト
ファンタジー
「異世界に転生か再び地球に転生、
どちらが良い?……ですか。」
「異世界転生で。」
即答。
転生の際に何か能力を上げると提案された彼。強大な力を手に入れ英雄になるのも可能、勇者や英雄、ハーレムなんだって可能だったが、彼は「平和に暮らしたい」と言った。何の力も欲しない彼に神様は『コール』と言った念話の様な能力を授け、彼の願いの通り平和に生活が出来る様に転生をしたのだが……そんな彼の願いとは裏腹に家庭の事情で知らぬ間に最強になり……そんなファンタジー大好きな少年が異世界で平和に暮らして――行けたらいいな。ブラコンの姉をもったり、神様に気に入られたりして今日も一日頑張って生きていく物語です。基本的に主人公は強いです、それよりも姉の方が強いです。難しい話は書けないので書きません。軽い気持ちで呼んでくれたら幸いです。
なろうにも数話遅れてますが投稿しております。
誤字脱字など多いと思うので指摘してくれれば即直します。
自分でも見直しますが、ご協力お願いします。
感想の返信はあまりできませんが、しっかりと目を通してます。
平凡すぎる、と追放された俺。実は大量スキル獲得可のチート能力『無限変化』の使い手でした。俺が抜けてパーティが瓦解したから今更戻れ?お断りです
たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
ファンタジー
★ファンタジーカップ参加作品です。
応援していただけたら執筆の励みになります。
《俺、貸します!》
これはパーティーを追放された男が、その実力で上り詰め、唯一無二の『レンタル冒険者』として無双を極める話である。(新形式のざまぁもあるよ)
ここから、直接ざまぁに入ります。スカッとしたい方は是非!
「君みたいな平均的な冒険者は不要だ」
この一言で、パーティーリーダーに追放を言い渡されたヨシュア。
しかしその実、彼は平均を装っていただけだった。
レベル35と見せかけているが、本当は350。
水属性魔法しか使えないと見せかけ、全属性魔法使い。
あまりに圧倒的な実力があったため、パーティーの中での力量バランスを考え、あえて影からのサポートに徹していたのだ。
それどころか攻撃力・防御力、メンバー関係の調整まで全て、彼が一手に担っていた。
リーダーのあまりに不足している実力を、ヨシュアのサポートにより埋めてきたのである。
その事実を伝えるも、リーダーには取り合ってもらえず。
あえなく、追放されてしまう。
しかし、それにより制限の消えたヨシュア。
一人で無双をしていたところ、その実力を美少女魔導士に見抜かれ、『レンタル冒険者』としてスカウトされる。
その内容は、パーティーや個人などに借りられていき、場面に応じた役割を果たすというものだった。
まさに、ヨシュアにとっての天職であった。
自分を正当に認めてくれ、力を発揮できる環境だ。
生まれつき与えられていたギフト【無限変化】による全武器、全スキルへの適性を活かして、様々な場所や状況に完璧な適応を見せるヨシュア。
目立ちたくないという思いとは裏腹に、引っ張りだこ。
元パーティーメンバーも彼のもとに帰ってきたいと言うなど、美少女たちに溺愛される。
そうしつつ、かつて前例のない、『レンタル』無双を開始するのであった。
一方、ヨシュアを追放したパーティーリーダーはと言えば、クエストの失敗、メンバーの離脱など、どんどん破滅へと追い込まれていく。
ヨシュアのスーパーサポートに頼りきっていたこと、その真の強さに気づき、戻ってこいと声をかけるが……。
そのときには、もう遅いのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる