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76、ブレス

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 なんだ? 思わず俺は身構える。
 ジュリアの角には強烈な力が宿っている。

「いくよ!!」

 ジュリアは大きく息を吸い込む。
 そして、彼女はその口から真紅に輝く炎のブレスを吐いた。

 そのブレスの炎が、ジュリア専用の炉に鮮やかな火を灯す。
 それを見て、ナナとレイラが目を丸くした。

「ちょ! なんなのよあれ」

「あ、あの女、炎を吐いたわよ!!」

 ジュリアは、驚く俺たちを尻目に炉の中に長い鋼を入れるとそれを熱していく。
 そして、それを眺めながら火力を調節するように再びブレスを吐いた。

 みるみるうちに美しい真紅に熱されていく鋼を、ジュリアの瞳が見つめている。
 それは美しく、竜人族特有のものに見えた。

「ふふ、炎竜の血を引く私にとって炎は体の一部のようなもの。その揺らめきの一つ一つさえ、手に取るように分かるのさ!」

 そして、赤く熱された鋼を鍛冶用の火箸で炉から取り出すと、鋼を叩くための金床の上に載せて、大きな槌で打ち始める。
 その腕前は見事なもので、鍛冶職人の一人として思わず見とれてしまう程だ。

 魂を打ち込むように、精悍で凛とした表情で大胆にハンマーを打ちおろしていく。

 彼女の鍛冶のスキルの高さもあり、鋼はみるみる内に鍛え上げられそして剣の形にへと変わっていった。
 鍛冶職人たちは一斉に声を上げる。

「おおお! さすがジュリア様!!」

「200年経っても少しも衰えてはおられぬ。赤竜姫ジュリアの炎舞の鍛冶!!」

「なんと見事な!!」

 豪胆でいてまるで舞うような華麗さを持つその鍛冶仕事と、生きているように炉の中で舞いあがる炎は、炎舞の鍛冶の名に相応しい美しさだ。
 大槌で鍛え上げられていく鋼から、鮮やかな火花が飛び散る。
 ジュリアは鍛冶巫女たちに言う。

「頼んだよ鍛冶巫女たち! 霊気を込めな! あたしが、それを燃えるような刃文に変えてやる!!」

「ええ、ジュリア様!」

「その剣に、我らの霊気を!!」

 鍛冶巫女たちはその言葉を聞いて、頷きあうとジュリアの後ろで見事な舞を披露する。
 黄金の腕輪にある鈴の音が鳴り響き、幻想的なその舞が巫女たちの霊気を高めていった。

 同時にジュリアの闘気も高まっていく。

 額の角が再び艶やかな紅に輝くと、鍛冶巫女たちの霊気で大槌が包まれていく。
 それはジュリアの闘気とも一体となり紅蓮に輝いた。

「はぁああああああ!!」

 気合もろとも、鋼を鍛え上げていくジュリア。
 もう見事な剣の形をしているその鋼には、美しい紅の刀文が浮かび上がっていく。

 普通の鍛冶とは大きく違う。
 しかし、これがジュリアの鍛冶なのだろう。
 彼女は大槌を振り上げながら俺に言った。

「どうしたんだい? ユウキ。あたしの鍛冶にビビっちまったのかい? ならもう勝負は決まったも同然だね!!」

 それを聞いてナナとレイラが俺に言った。

「裕樹!!」

「どうするのユウキ。このままじゃ、あの女が言うように勝負が決まっちゃうわ!」

 先ほどまでは自信満々だったレイラが慌てるほどの見事な鍛冶だ。
 燃え上がるような炎の刀文が刻まれた剣。

 出来上がるのは素晴らしい剣だろう。

 まるで炎と一体になったようなあの剣、同じようなものを作ろうとしてもジュリアには到底及ばない。
 ジュリアと同じことをしようとしても駄目だ。

 だったら俺はどうしたら──
 俺は自分の炉の中の炎を見つめる。

「焦るな……俺は俺の鍛冶をするだけだ!」

 俺は一体どんな剣が作りたいのだろうか。
 頭の中に、俺は自分が作りたい剣を思い浮かべた。
 そして、既に職人たちの手によって炉の中で熱せられていた鋼を火箸で取り出すとそれを金床の上に載せた。
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