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71、武器作り

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「ジュリア、それはまことか!」

 カレンさんはジュリアに問いかける。
 ジュリアは、地面に突き刺さっている炎竜剣グラファトスを引き抜くとカレンさんに答えた。

「ああ、心配かけたねカレン。久しぶりだよ、こんなに鍛冶仕事がしたくてうずうずするなんてさ」

「うむ、ほんに……ほんに良かった。それでこそジュリアじゃ」

 カレンさんはとても嬉しそうだ。
 俺に仕事を教えてくれることももちろんだけど、彼女が以前の彼女に戻ってくれたのが何よりも嬉しいのだろう。
 ジュリアは俺たちの方を見ると、大剣を肩に担ぐように持って胸を張る。

「但し覚悟しておきな、ユウキ。あたしは厳しいよ!」

 そんな、ジュリアの言葉を聞いて、ナナと俺は顔を見合わせる。

「裕樹!」

「ああ、ナナ!」

 俺たちの夢の一つだった自分専用の武器作り。
 その為の鍛冶修行。
 もし、ジュリアが教えてくれるならこんなに嬉しいことはない。

 白狼丸と炎竜剣グラファトス、どちらも途轍もなく素晴らしい剣だ。
 それを作った鍛冶職人に仕事を教わることが出来るなんて、これ以上ない話だろう。

「はい! ジュリアさん! 俺、頑張りますから」

 そう意気込む俺を見てジュリアは笑った。

「ジュリアでいいよ。今更そんな呼ばれしたらかえって肩がこっちまう」

 そう言って、俺にウインクする。
 レイラが頷いて言う。

「当然よ! 私はまだ許してないんだから」

 そんなレイラを見て、俺とナナは苦笑した。
 俺はジュリアと握手する。

「よろしく、ジュリア!」

「ああ、ユウキ。こちらこそよろしく頼むよ!」

 ククルも嬉しそうに俺たちを見上げる。

「ククルも鍛冶巫女するのです!」

「はは、頼んだぞククル!」

 ジュリアはそんなククルを眺めながら目を細めると、カレンさんに問いかける。

「それにしても、カレン。どうして今、シロウと同じひのもとからこの坊やがやってきたんだ。それに、さっきの魔王の復活の話は本当なのかい?」

「それが、わらわにも分からぬのじゃ。ラルファスト国王がユウキたちを召喚したそうじゃが、それ以上はわらわも分からぬ。アルフェンの女王が何か知らぬかと思って、今朝早く使いを出したのじゃが、謁見には数日かかるじゃろう」

 それを聞いてジュリアは訝し気な顔をした。

「ラルファスト王が? あの男、あたしは嫌いだね。最近じゃ、あの国から周囲の国々に多くの人々が出て行っているぐらいだ」

 どうやら、ジュリアもあの国王にはいい印象を持っていないようだ。

「うむ、わらわもラルファストが他の国の力も借りず異世界からの召喚を成しえたとはとても信じられぬのじゃが」

「まあ、いいさ。確かに女王なら何か知ってるかもしれない。謁見にはあたしも同行するよ」

 ジュリアの言葉にカレンさんは頷く。

「そうか、それは助かるというものじゃ。そなたが同行すれば心強い。それにユウキはこの里で暮らすことになった故、まずはじっくりとユウキに鍛冶を教えて欲しい」

「ああ、カレン。分かったよ」

 そんな中、鍛冶職人の一人がジュリアに言う。

「そういえば、ジュリア様。ユウキ殿は鍛冶仕事の経験があるとか。まずはその腕を拝見するのもよろしいかと」

「へえ、そうなのかい? あたしの鍛冶は普通の鍛冶とはだいぶ違うけど、確かにそれも面白いね」

 そして、ジュリアはこちらを見ると言った。

「ユウキ、まずは試しに一本剣を打ってみな。あたしがあんたに何を教えるかは、それから決めさせてもらうよ」

「俺が剣を?」

 突然のジュリアの申し出に俺は思わず戸惑う。
 そんな俺を勇気づけるようにナナとレイラが言った。

「裕樹やってみなさいよ! 裕樹ならきっと出来るわ」

「そうよ、ユウキの凄さをあいつに教えてあげて! 炭火焼きハンバーグだってとっても美味しかったんだから!!」

「は……はは。レイラ、ハンバーグは関係ないと思うぞ」

 食いしん坊のレイラらしいけどさ。
 でも、やってみるか。
 まだ、朝早くて時間もあるしせっかくの機会だ。

「分かったよ、みんな。俺やってみるよ!」

 ジュリアは俺の返事に頷く。
 そして俺たちは鍛冶工房の中へと入っていった。
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