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59、工房にて
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大きく開かれた入り口から、広い鍛冶工房の中が見渡せる。
「うわぁ! 凄いわね!!」
思わず声を上げるナナに、俺は大きく頷いた。
「これが白狼族の鍛冶工房か! 確かに凄いな」
レイラも入り口から中に入って工房の中を見て回っている。
「ほんとね! 剣や斧、それに農具まで」
その言葉通り、鍛冶工房の入り口近くには武器だけではなく農具や包丁なども並んでいる。
奥には、多くの職人や巫女姿の白狼族の人たちの姿が見えた。
鍛冶用の炉の中には赤い炎が揺らめいて、その前で槌を持ち、赤く熱した金属に振り下ろす鍛冶職人たち。
そして、その後ろでは槌が刻むリズムに合わせるように、巫女さんたちの腕に嵌めた鈴のついた金の腕輪が音を立てる。
リズミカルな音が鳴り響き活気に溢れているその光景は、楚々とした鍛冶巫女の姿もあいまって神秘的でもある。
「ほほ、皆の者朝からご苦労じゃな。約束通りユウキたちを連れて参ったぞえ」
その声に鍛冶場の人たちは一斉にこちらを見ると、仕事の手を休めてやってくる。
「これはこれはお客人!」
「ようこそ白狼の鍛冶工房へ! 話はカレン様から聞いておりますぞ」
「なんでも白狼の鍛冶を学びたいとか。ユウキ殿たちはククルを救ってくれた大切な客人。それにこれからはこの里にお住いとか。ならばもう身内も同然、喜んでお教えしましょう」
鍛冶巫女の女性たちも俺を見ると口々に言う。
「ふふふ、昨日のうな重はとても美味しゅうございましたわ」
「ほんとに美味でしたわね! ユウキ様たちなら大歓迎です」
「それにシロウ様と同じひのもとから来られたお方ですから!」
かつて勇者と呼ばれたシロウさんのお蔭で、俺の印象はとてもいいようだ。
なにしろ200年前にこの世界を救った人だもんな。
それに昨日の歓迎の宴に来ていた人も多くて、見知った顔も多い。
「ありがとうございます! 鍛冶仕事には少し心得があるので、ここで白狼族の鍛冶を勉強出来たらいいなって思ってるんです」
鍛冶職人にはなったものの、さっきの仕事の風景を見ると通常の鍛冶職人の知識の中には無いことも多い。
そもそも、鍛冶巫女の存在自体がこの鍛冶工房特有のものだろうからな。
白狼丸はもちろん、料理で使った包丁を考えてもここで学べることは多いはずだ。
自分専用の武器もそうだけど、食の求道者としては自分の包丁も作ってみたいもんな。
「はは、歓迎しますぞ! ユウキ殿!」
「鍛冶の心得があるのであれば話は早い」
鍛冶職人たちは顔を見合わせてそう言った。
そんな中、レイラが広い鍛冶工房の奥の壁の傍で声を上げる。
「ねえ! ユウキ、ナナ! 来てみなさいよ、見てこの剣を!!」
興奮気味にそう言ったレイラの目の前の壁には、大きな剣が飾られている。
ナナも思わず声を上げた。
「凄く大きな剣ね! それに綺麗……」
そこに飾られた剣は確かに美しい。
人が使うには大きすぎる気もする大剣で、その刀身は燃え上がるように赤い刃文が入っている。
その刃文は揺らめくように波打っていて、まるでその剣が炎の中にあるのかと錯覚させるほど鮮やかで美しい。
白狼丸も素晴らしい刀だったけど、この剣もそれに匹敵する存在感がある。
どちらもゲームの中に出てくるような伝説の武器みたいな感じだよな。
それにしても、一体誰の剣なんだろう。
俺ならこんな大きな剣を振り回して戦うなんて、想像もつかない。
「確かに、凄い剣だな!」
「ええ、ユウキ!」
ナナが思わずその剣に触れようとした時、工房の中に声が響いた。
「その剣に触れるんじゃないよ! それはあたしの命だ。誰だか知らないが、殺すよ! お嬢ちゃん」
その言葉が脅しではないことを証明するように、何かがこちら向かって放たれる。
突然のことに呆然と立ち尽くすナナの前に、俺は立っていた。
「ナナ!!」
既に腰から剣を抜いている。
そして、ナナの体をかすめそうになった何かを俺は斬り捨てていた。
「うわぁ! 凄いわね!!」
思わず声を上げるナナに、俺は大きく頷いた。
「これが白狼族の鍛冶工房か! 確かに凄いな」
レイラも入り口から中に入って工房の中を見て回っている。
「ほんとね! 剣や斧、それに農具まで」
その言葉通り、鍛冶工房の入り口近くには武器だけではなく農具や包丁なども並んでいる。
奥には、多くの職人や巫女姿の白狼族の人たちの姿が見えた。
鍛冶用の炉の中には赤い炎が揺らめいて、その前で槌を持ち、赤く熱した金属に振り下ろす鍛冶職人たち。
そして、その後ろでは槌が刻むリズムに合わせるように、巫女さんたちの腕に嵌めた鈴のついた金の腕輪が音を立てる。
リズミカルな音が鳴り響き活気に溢れているその光景は、楚々とした鍛冶巫女の姿もあいまって神秘的でもある。
「ほほ、皆の者朝からご苦労じゃな。約束通りユウキたちを連れて参ったぞえ」
その声に鍛冶場の人たちは一斉にこちらを見ると、仕事の手を休めてやってくる。
「これはこれはお客人!」
「ようこそ白狼の鍛冶工房へ! 話はカレン様から聞いておりますぞ」
「なんでも白狼の鍛冶を学びたいとか。ユウキ殿たちはククルを救ってくれた大切な客人。それにこれからはこの里にお住いとか。ならばもう身内も同然、喜んでお教えしましょう」
鍛冶巫女の女性たちも俺を見ると口々に言う。
「ふふふ、昨日のうな重はとても美味しゅうございましたわ」
「ほんとに美味でしたわね! ユウキ様たちなら大歓迎です」
「それにシロウ様と同じひのもとから来られたお方ですから!」
かつて勇者と呼ばれたシロウさんのお蔭で、俺の印象はとてもいいようだ。
なにしろ200年前にこの世界を救った人だもんな。
それに昨日の歓迎の宴に来ていた人も多くて、見知った顔も多い。
「ありがとうございます! 鍛冶仕事には少し心得があるので、ここで白狼族の鍛冶を勉強出来たらいいなって思ってるんです」
鍛冶職人にはなったものの、さっきの仕事の風景を見ると通常の鍛冶職人の知識の中には無いことも多い。
そもそも、鍛冶巫女の存在自体がこの鍛冶工房特有のものだろうからな。
白狼丸はもちろん、料理で使った包丁を考えてもここで学べることは多いはずだ。
自分専用の武器もそうだけど、食の求道者としては自分の包丁も作ってみたいもんな。
「はは、歓迎しますぞ! ユウキ殿!」
「鍛冶の心得があるのであれば話は早い」
鍛冶職人たちは顔を見合わせてそう言った。
そんな中、レイラが広い鍛冶工房の奥の壁の傍で声を上げる。
「ねえ! ユウキ、ナナ! 来てみなさいよ、見てこの剣を!!」
興奮気味にそう言ったレイラの目の前の壁には、大きな剣が飾られている。
ナナも思わず声を上げた。
「凄く大きな剣ね! それに綺麗……」
そこに飾られた剣は確かに美しい。
人が使うには大きすぎる気もする大剣で、その刀身は燃え上がるように赤い刃文が入っている。
その刃文は揺らめくように波打っていて、まるでその剣が炎の中にあるのかと錯覚させるほど鮮やかで美しい。
白狼丸も素晴らしい刀だったけど、この剣もそれに匹敵する存在感がある。
どちらもゲームの中に出てくるような伝説の武器みたいな感じだよな。
それにしても、一体誰の剣なんだろう。
俺ならこんな大きな剣を振り回して戦うなんて、想像もつかない。
「確かに、凄い剣だな!」
「ええ、ユウキ!」
ナナが思わずその剣に触れようとした時、工房の中に声が響いた。
「その剣に触れるんじゃないよ! それはあたしの命だ。誰だか知らないが、殺すよ! お嬢ちゃん」
その言葉が脅しではないことを証明するように、何かがこちら向かって放たれる。
突然のことに呆然と立ち尽くすナナの前に、俺は立っていた。
「ナナ!!」
既に腰から剣を抜いている。
そして、ナナの体をかすめそうになった何かを俺は斬り捨てていた。
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