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58、新しいスキル

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「へえ、あれが鍛冶工房か! なんだかワクワクしてくるな」

 時代を感じさせるその作りは、かなり昔からその工房がそこにあるんだろうと感じさせる。
 それがあの白狼丸が作られた200年前からなのかは分からないけど、かなり歴史がありそうな作りだ。

 近づくにつれて中から響いてくる金属を打つ鳴らすような音が、早朝にも関わらずもう鍛冶仕事が始まっていることを教えてくれる。
 ナナが、工房へ向かって駆けだすと振り向いてこちらに向かって声をかけた。

「ねえ! 裕樹、早く行きましょうよ! 中で何をしてるのか見てみたいわ!!」

「だな! ナナ」

 レイラも頷く。

「そうね、私も白狼族の鍛冶のことは気になるわ! いい武器があったら今の剣と買い替えようかしら」

 その言葉に、カレンさんが言う。

「ほほ、レイラにはククルを救ってもらった。もし気に入った剣があれば、好きなものを一つ進ぜよう」

「ほんとに!? ありがとう! 楽しみだわ!! ねえ、ユウキ早く早く!!」

 今度はレイラがナナを追い越して工房の近くまで駆けて行くと、俺をせかす。

「はは、まったく、現金だなレイラは」

 まあ、でもあの白狼丸を見たら期待しちゃうよな。
 どんな武器が中で作られてるのか、早く見てみたい。

「おっと、その前に」

 せっかくだ。
 鍛冶工房に入る前に、鍛冶職人になっておこう。

 白狼の里の鍛冶は、鍛冶巫女と呼ばれる人たちと一緒に行うみたいだから普通の鍛冶とは少し違うだろうけど、俺が鍛冶職人になっておいて損はないと思うからな。
 せっかく学ばせてもらうなら、こちらにも知識があった方がいいに決まってる。
 俺はナナのところまで駆けていくと言った。

「ナナ、俺工房に入る前に鍛冶職人になっておこうかなって思ってさ」

「それいいアイデアね! その方が、私たちの武器作りに役立つわ」

「だろ?」

 俺はナナと一緒に、いつものステータスパネルを表示するとそこから職業を選ぶ。

「鍛冶職人は確か最初のページにあったよな」

 剣士や狩人のように鍛冶職人にも上級職があるのかもしれないけど、基本職の鍛冶職人は前に確認した時は大工の傍にあったのを覚えている。

「あった! これだ」

 俺は鍛冶職人に転職すると、いつものようにレベルダウンを二回使う。

「職業は鍛冶職人にするとして、マスタージョブはシーカーでいいかな」

「そうね! シーカーなら剣士と狩人の上級職だし」

「だな!」

 シーカーなら剣技もナイフ技も高いから、鍛冶仕事でも何かの役に立つかもしれない。
 俺はあらためて表示されたステータスを確認する。

 名前:佐倉木裕樹
 種族:人間
 レベル:レベル9999
 職業:鍛冶職人
 マスタージョブ:シーカー
 力:12511
 体力:13578
 魔力:7831
 速さ:11576
 器用さ:9876
 集中力:12231
 幸運:8765

 魔法:なし
 物理スキル:剣技Sランク、ナイフ技SSランク、弓技SSランク、槌技Sランク
 特殊魔法:なし
 特殊スキル:探知
 生産スキル:鍛冶Sランク
 ユニークスキル:【自分のレベルを一つ下げる(使用制限80回)】
 マスタースキル:【鑑定眼】【伐採の極み】【一刀両断】【木材加工】【聖なる結界】【罠作成】【金の匙】【収納】【簡易厨房】【武具の真価】
 覚醒スキル:【一刀獣断】【滋養強壮】
 称号:召喚されし勇者

 ステータス自体は上級職のシーカーの数値だよな。
 食の求道者の時のように、シーカーよりも高い数値の項目はないみたいだ。
 でも、シーカー自体がどのステータスもかなり高いから問題はないよな。

 新しい力は、一つ目は槌技か!
 弓技の後ろに新しく追加されている。
 鍛冶職人だもんな、ハンマーの使い方が上手いのは頷ける。
 それに生産スキルの鍛冶もSランクになっていた。

「それともう一つは、鍛冶職人のマスタースキルだな。【武具の真価】かどんな力なんだろう」

 それを聞いてナナが俺に答えてくれる。

「武具の真価は、武器や防具の能力を限界まで引き出す力ね。いくらいい武器だって、使う人がその武器の事を良く知らなかったら使いこなせないでしょ?」

「確かにな」

 もちろんシーカー自体が剣士の上級職でもあるので、大抵の剣は使いこなせるとは思うけど通常の武器の知識とはまた違ったものなのだろうか。
 これは一度実際に戦ってみないと、今との違いが分からないな。

 今すぐにってわけにはいかないけど、実際の戦いで試してみる価値はありそうだ。
 冒険者になればその機会もあるはずだ。

「さて、準備は万端だな!」

「そうね、裕樹! 行きましょう」

 ナナは俺の手を取ると、レイラが待っている鍛冶工房の入口へと急ぐ。
 カレンさんも直ぐにククルの手を引いてやってきた。

「ほほ、それでは中にはいるぞえ」

 カレンさんはそう言うと、入り口の扉を大きく開いた。
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