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50、朝日の中で

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「綺麗ね!」

「ああ、ほんとにな!」

 朝日に照らし出される聖域の光景を見て、感動するナナに俺は同意した。
 こんな光景見たこともない。
 こうしていると、異世界に来たんだなってあらためて思う。
 俺は思わず大きく深呼吸する。

「ぐ~」

 そんな清々しい朝の空気の中、誰かがお腹の音で俺たちに賛同の意を表する。
 もちろんレイラだ。
 ナナは呆れた顔をしてレイラに言う。

「もう! せっかくのいい光景が台無しじゃない」

「仕方ないでしょ。気持ちいい朝だって思ったら、お腹も減ったんだから!」

「はは、レイラらしいな」

 そういえば、昨日は宴が遅めの昼食になったし、今日に備えて早く寝たから晩飯は軽いもので済ませたんだよな。
 レイラはしっかりおかわりしてた気がするけど、どうやら朝になってすっかりいつもの腹ペコ狼になったようだ。
 カレンさんが俺たちに言う。

「ほほ、まずは滝に行って身を清めた後、社に戻って朝食にするかの。まだ日が昇ったばかりじゃ、鍛冶場へはそれからでも構うまい?」

 俺はその言葉に頷いた。

「そうですね! 今日は鍛冶場を少し見学したいだけだから、それから都に発っても間に合うと思うし」

「そうね! そうしましょ」

 ナナも同意する。
 でも、ちょっと待てよ。
 滝に行ってまた戻ってくるのは手間だよな。
 お社までは長い階段を上らないといけないし。
 俺はカレンさんに尋ねる。

「カレンさん、鍛冶場はどこにあるんですか?」

「ふむ、昨日皆の家を建てると決めた場所の近くじゃな、里の中にあるぞえ? それがどうかしたのかの、ユウキ」

 やっぱりそうか。

「だったら、みんなで外で朝食を食べませんか? 滝の傍だったら気持ちいいと思うし!」

 食の求道者の簡易厨房もあるし、料理ならどこでだって出来る。
 これから冒険者をやるなら外で食べる機会も多くなると思うし、試してみるのも悪くない。

 第一、こんな絶景の中で食べるご飯は美味しいに決まってる。

 キャンプで食べるカレーなんかも最高だもんな。
 飯ごうでご飯を炊いたりするだけで、ワクワクしてくる。
 俺の提案に、カレンさんは首を傾げた後、楽し気に笑った。

「ユウキはほんに面白いことを考えるのう。ほほ、構わぬぞえ! 楽しそうじゃ」

 そう言って優雅に三本の尾を揺らす。
 ククルも嬉しそうに言った。

「はう~お外でご飯なのです!」

 ナナとレイラも頷いた。

「悪くないわね!」

「はぁ、そう聞いたらもっとお腹減っちゃった!」

 カレンさんは俺に言った。

「食材ならば、厨房へ行けばもう準備してあろう。そなたは里にとって特別な客人じゃ。必要なものを希望すれば、持たせてくれるぞえ」

「ありがとうございます! それじゃあ俺、厨房に行ってきますね。みんなは先に滝の方へ行っててください」

 そんな俺に、ナナが心配そうに言う。

「ユウキ、一人で大丈夫? 私も手伝うわよ」

「はは、大丈夫だって。例のシーカーのマスタースキルがあるだろ収納ってやつ。あの力も試してみたいんだ!」

 アイテムとかを色々収納できる便利な収納BOXみたいなものだって言ってたもんな。
 まだ使ってなかったし丁度いい。

「それに、今日は忙しいし急いだほうがいいもんな。その方が鍛冶場もゆっくり見学できるし。先に滝で水浴びしててくれよ。俺は一緒には入れないからさ。その方が助かるし」

 昨日ちょっとした行き違いで、ナナとレイラの裸を見てとっちめられたもんな。
 それを思い出したのかナナは顔を赤くして咳ばらいをすると言った。

「わ、分かったわ! 裕樹がそう言うなら」

 レイラも手伝いたそうだったけど、俺の言葉に納得して頷く。
 そして、ほぅを溜め息を吐いて言った。

「朝からユウキのご飯が食べられるなんて幸せ! ねえ、ユウキ、何を食べさせてくれるの?」

「それは厨房で食材を見て見ないとな。でもさ、一つこれがいいんじゃないかとは考えてるんだ」

「ねえ、なんなのそれは!」

 ぐっと身を乗り出すレイラに俺は苦笑する。

「それは、作ってからのお楽しみさ!」

「もう! ユウキの意地悪」

 カレンさんも尻尾を揺らしながら言う。

「ほんに楽しみじゃ! ユウキ、期待しておるぞえ」

「はい! カレンさん。それじゃあみんな、俺行ってくるよ」

 俺は滝へと向かうみんなに手を振りながら、お社の厨房へと向かった。


 ──────

 ご覧頂きましたありがとうございます!
 気が付くとこの作品もいつの間にか今日で50話目になっていました。
 いつも応援して下さる皆様に感謝です!

 また、同時連載中の『ダブル魔眼の最強術師』も沢山の方にお読み頂きまして本当にありがとうございます。

 これからもユウキたち共々よろしくお願いします!
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