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49、目が覚めると

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 そして、次の日。
 俺は、お社の一室の布団中で目が覚めた。
 白くてふかふかの布団の寝心地はいい。

 俺がゆっくと目を開けると、何かがこしょこしょと俺の鼻先をくすぐっている。
 大きな白い尻尾が俺の視界を塞いでいるのが見える。

「う……ん? そっか、またククルの尻尾か」

 森の家で銀狼姿のレイラにもふもふの布団代わりになってもらった時も、朝起きたらククルの尻尾が目の前にあったもんな。
 それを思い出す。
 昨日はお社の大きな客間でみんなで一緒に寝たんだよな。

 ククルが、お兄ちゃんやお姉ちゃんたちと一緒に寝るって言って枕を持ってきてさ。
 ナナとレイラにはきっちり布団の場所は少し離されたけど、ククルは楽しそうにはしゃいでいた。

「はは、ナナと一緒に寝てると思ったら寝相が悪いなククルは」

 寝てる間に俺の布団の方に来たんだろう。
 俺がククルの尻尾を少し横によけると、俺にしっかりと身を寄せて幸せそうな顔で眠っているククルの姿が見える。

「楽しいです……みんな一緒なのです」

 昨日のことを思い出しているのか、そんな寝言を言っている様子は可愛いものだ。
 だが、問題が二つある。

 一つ目はククルを抱っこするように、ナナが俺の目の前にいることだ
 可憐なその唇が俺の鼻先にあるのが見えて思わずドキッとしてしまう。
 そして、後ろからはレイラが俺のことをしっかりと抱きしめていた。

「ん~、ユウキ……ご飯頂戴」

 おい、レイラ、俺はお前のご飯じゃないぞ。
 逃がさないといった様子でギュッと抱きしめられているんだが、その相手がとびぬけた美少女だけに冷静ではいられないのもしかたない。
 どんな夢を見ているのかは知らないけど、大きな胸を俺に押し付けるようにしてしっかりと抱きついていた。

 前に妖精のようにナナ、そして後ろからは獣人の美少女のレイラに抱きしめられて俺は布団の中で真っ赤になっていくのを感じる。
 お前たち寝相が悪すぎるぞ。
 自分たちできっちり布団を離したくせに、これじゃ意味ないだろ?

 そんな中、部屋の入り口が開いて誰かが入ってくる。

「皆、ゆっくり寝られたかえ? 今日は出かける前に鍛冶場も見たいと言っていたゆえ、まだ早いがそろそろ起きねばな」

 部屋に入ってきたのはカレンさんだ。
 どうやら俺たちを起こしに来てくれたようだ。
 俺はククルと二人に挟まれたまま、布団の中からバツが悪そうに朝の挨拶をする。

「は……はは、カレンさん。おはようございます。えっと、その……これは違うんです」

 カレンさんはジト目で俺たちを眺めた後、少しツンとした顔で言う。

「ほんに仲の良いこと。ユウキも悪いおのこじゃ。わらわだけのけものかえ?」

「あ、あの、そうじゃなくてこの二人が寝相が悪くて!」

 思わず俺が上擦った声を上げると、カレンさんは愉快そうに笑った。

「ほほほ、分かっておる。ほんに、可愛いこと」

 はぁ……
 二人の寝相のせいで、朝からすっかりカレンさんにからかわれた。
 そんな中、ナナとレイラがそんな俺たちの会話に目が覚めたのかゆっくりと目を開ける。
 そして、唇が触れそうなぐらいの距離にあるナナと俺の目があった。

「お、おはよう、ナナ」

「──!!!」

 無言でみるみるうちに真っ赤になっていくナナ。
 そして、レイラも声を上げた。

「ちょっと! どうしてユウキが私の布団の中にいるの!?」

 おい、ちょっと待て。
 ここは俺の布団の中だぞ。
 そして二人は同時に飛び起きた。

「裕樹!!!」

「ユウキの馬鹿!!」

 ビシッと音がして俺は左右から二人にビンタされていた。
 そんな騒ぎの中、ククルが眠そうな目をこすって目を覚ます。

「ふぁ~どうしたのです?」

 起き上がろうとして尻もちをついて、ちょこんと座りこむククルは可愛らしい。
 そんなククルを抱き上げながらカレンさんは笑った。

「ほほほ、ほんに可愛い三人じゃこと。のう、ククル」

「ほんに可愛いのです!」

 ククルは、寝ぼけながらカレンさんの真似をする。
 その後、カレンさんの説明でなんとか濡れ衣を晴らした俺に謝るナナとレイラ。

「ご、ごめんなさい」

「でも、ちゃんと説明してくれたら私たちだって。ねえナナ!」

「そ、そうよ……」

 俺は二人をジト目で見つめる。
 一体いつ説明する暇があったんだ。
 今日も朝から色々ありそうな一日だと、俺は肩をすくめた。
 とにかく気を取り直していこう。

「さあ、今日も一日頑張るぞ!」

「ええ、裕樹!」

「そうね、今日はやりたいことが一杯あるわ!」

 ククルがそんな俺たちにいつもの掛け声をかける。

「お~! なのです!!」

「「「お~!!!」」」

 俺たちもククルの掛け声に応えて顔を見合わせて笑う。
 そして、皆で外に出て朝日が昇りかけている美しい白狼の滝の光景を眺めていた。
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