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42、密談

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 光一の問いに国王は答える。

「これは心強いお言葉ですな勇者殿。二つ目の神具は、我がラルファストの隣国であるアルフェン王国にございますぞ。まずは、それを手に入れましょう」

「この国の隣か、なら話が早い。玲児、結衣、それでいいな?」

 光一の言葉に玲児と結衣は頷いた。

「構わないわ。ふふ、どうせ二つとも私たちのものになるんだもの」

「ああ、なら近い方から頂こうぜ!」

 それを聞いて国王は笑みを浮かべる。

「期待しておりますぞ。少々準備もございます故、アルフェンに向かうのは数日後。それまでは、どうかお三方ともごゆるりとこの城でお過ごしくださいませ。異世界からわざわざ来て頂いたのです、お疲れもあることでしょう」

 光一はその言葉に頷く。

「確かにな。新しい力を得たせいか、今日は少し疲れた。そうさせてもらうぞ」

 玲児と結衣も同意する。

「あの姿になるには、あんたが言うように膨大な力が必要らしいな。俺も疲れたぜ」

「そうね。でも凄い力だったわ! ふふ、今度あいつに会った時にどんな顔をするのか楽しみね。あの美しい姿で、私がこの手で殺してあげる」

 国王は頷くと同行している側近の一人に、三人の世話をするように命じた。

「畏まりました、陛下。それでは皆様こちらへ、美しい女官や衣装それに宝石もご用意させて頂いております故。楽しんで頂ければ幸いで御座います」

「気が利くじゃねえか! 行こうぜ光一、結衣!!」

「ああ、そうだな玲児」

「ふふ、衣装に宝石ね。この私に相応しい物があるかしら?」

 三人を連れて側近の一人が聖堂から去った後、国王は残った側近たちと言葉を交わす。

「陛下、上手くいきましたな」

「うむ、愚かな勇者どもめ。自分たちが利用されているとも知らずいい気になりおって」

 そんな中、祭壇の床にゆっくりと黒い影が広がっていく。
 それを見て、国王と側近たちは跪いた。

「魔王様。これでよろしかったでしょうか?」

 国王の言葉に、黒い影は笑みを浮かべるように床に大きく口を広げる。
 低い声が聖堂の中に響いた。

「上出来だ、ラルファスト王よ。数日も経てば、あの愚かな勇者どもは完全に我がしもべとなる。我が血を受けた眷属として生まれ変わるのだ。やつら自身もそうと気が付かぬうちにな」

 国王は床に浮かんだ陰に、深々と頭を下げながら言う。

「かつて貴方様を封じた三つの神具の封印が解かれれば、魔王様、貴方様は復活する。そして、神具とそれを使う者もこちらの手の中に」

「そういうことだ。そうなればあの忌々しい三人の勇者と共に戦ったかつての英雄の生き残りも、その血族たちもどうにもできぬ。200年前に受けた屈辱を晴らさせてもらうとしよう。その為に異界の扉を開く力を貸してやったのだからな。この不自由な身では苦労したぞ」

 床の黒い影は愉快そうにそう笑った。
 国王は影に問いかける。

「その暁には、必ずわたくしめとの約束を……この世界の半分をわが手に下さるというあのお約束、違えることなきよう願いますぞ」

「ふふ、強欲なことだ。分かっておるラルファスト王よ。そなたと交わした契約は守る。魔王の名において保証をしてやろう。お前の右腕に記された契約書がその証だ」

 国王は笑みを浮かべると、自らの右手の裾を上げる。
 そこには魔王と契約を交わした証が記されていた。
 200年の時を経て、僅かに緩んだ封印の隙間から流れ出た血でしるされたものである。
 国王はそれを眺めて笑みを浮かべた。

「血の盟約。魔族にとっては絶対の契約ですからな。それを聞いて安心致しました」

 そして、その顔が邪悪に歪む。

「くく、くくく。そうなれば、このワシを愚王などと嘲笑った者どもを皆、目の前に引きずり出して始末してくれる。誰が世界を支配するのかも知らぬ、愚か者どもにな!!」

 側近の一人が国王に尋ねる。

「陛下、あの者はいかがしましょうか? 勇者たちと共に異界からやって来た、あの小僧は」

「くく、あんな小僧に何が出来る。神具の一つを手にし、勇者どもも魔王様の手に堕ちた今、あんなゴミクズにはもう何もできん。見つけ次第、勇者どもに教えてやれ。喜んで始末に向かうだろう」

 床に揺らめく黒い影と共に、国王の狂気を帯びた笑い声はいつまでもその聖堂に響いていた。
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