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11、裕樹の提案

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 俺はレイラと握手をした後、ナナに言う。

「ほら、ナナもさ」

「分かったわよ」

 少し不満げなナナはレイラに手を差し出す。

「はい!」

「何よ、はいって」

「握手してあげるって言ってるの!」

 そう言って、お互いツンと顔をそむける二人。
 それでもククルが心配そうに大きな瞳で二人を眺めていることに気が付いて仕方なく握手をする。

「まあ、仕方ないわね」

「ええ、握手ぐらいはしてあげるわ」

「はぁ、まったく二人とも気が強そうだからな」

 俺がボソッとそう呟くと、二人は一斉にこちらを向いた。

「なによ裕樹!」

「そうよ、気が強いって失礼じゃない」

「はは……悪かったって」

 そう言うところを言ってるんだよ。
 まったく。
 でも、握手をしている二人を見てククルもニッコリと笑顔になる。

「みんな仲良しになったです!」

 俺はククルに力こぶを作ってみせる。

「そうだな! これで万事解決だ!」

「解決なのです!」

 それを聞いてナナとレイラも顔を見合わせると笑った。
 ナナもほっとしたように言う。

「全く、一時はどうなるかと思ったわよ。でも、そういえばククルをさらった連中はどうなったの?」

 ナナの疑問に俺も頷く。

「確かにな……まさか、レイラが食べちまったとか?」

「はわわ! 怖いです!」

 俺の言葉を聞いてククルが身を震わす。
 レイラは肩をすくめると答えた。

「冗談でしょ? あんなの食べたらお腹こわすわよ。狼の姿でたっぷりと脅した後、あの茂みの少し先で全員縛り上げてるわ」

「そうか、なら安心だな」

「ええ、連中のルートはギルドに報告してあるし明日、連中を連れていくための応援が来ると思うから。手配犯を連れて国境を越えないといけないけど、その為の許可書を持って来ると思うからそれまでの辛抱ね」

 俺はそれを聞いて感心したように言う。

「へえ、レイラは国境を越えてきたんだな。それも一人で」

 どうやら彼女は俺たちがこれから行く予定の国から来たようだ。
 俺の言葉にレイラは頷く。

「そうよ。私は単独行動がモットーなの、みんな私についてこられないし」

 文字通り一匹狼ってことか。
 そりゃそうだ。
 あんな姿になって山を走ってくる彼女に、ついてこられる奴がそうそういるとは思えない。

「でも、連中が万が一逃げ出さないように今日は縛り上げた場所で、夜通し番をしないとね」

 そう言うと、レイラは俺たちの家を見つめる。
 そして上目遣いに言った。

「ねえ、あの家を使わせてくれない? 連中をあそこに閉じ込めておけば逃げる心配もないし、こっちもぐっすり寝られるわ」

 それを聞いてナナが怒りだす。

「駄目よ! あれは私と裕樹の大事な初めてのお家なんだから!」

「だよな。二人で作ったんだから」

 ナナの気持は良く分かる。
 俺たちが初めて作った家だ。
 そんな悪党たちを入れる気にはなれない。
 レイラはふぅとため息をつくと、俺たちに言う。

「分かったわ。仕方ないわね。ククルいらっしゃい。悪いけど、私が受けた依頼だものこれ以上は貴方たちにこの子は預けておけないわ。仲間が来るまでこの子は私が預からないと」

「はう! またあの森に行くですか!?」

 よっぽど怖かったのか、ククルはしっかりとナナに抱きついて離れようとしない。

「困ったわね」

 弱り顔のレイラに俺は言った。

「なあ、それなら俺にいい考えがあるんだ。悪党たちをしっかりと閉じ込めて、レイラやククルはこの家でぐっすり休めるよう出来ると思うぞ」

 俺の提案に銀狼族の少女は不思議そうに首を傾げた。

「しっかりと閉じ込めるってどこに? この家は使わせてはもらえないんでしょう?」

「ああ、でも今からそいつらを閉じ込める場所を作ればいいんだからさ」

 そう言うと、レイラは呆れたように答える。

「そんなこと簡単に出来るわけないでしょ?」

 ナナと俺は顔を見合わせる。
 そしてレイラにウインクした。

「いいから任せとけって! 直ぐに作ってやるからさ。レイラはその連中をここに連れてきてくれよ」

「それはいいけど……」

 レイラは半信半疑な顔でこちらを見つめる。
 ククルがすっかり俺やナナに気を許してるのを見て、決心したように頷いた。

「分かったわ! 貴方に任せる」

 そういうとレイラは先ほどの茂みの中に入っていく。
 俺はそれを見送ってふぅと一息ついた後、気合を入れ直す。

「さあ、始めるか! 早いところ作っちまわないとな」

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