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7、山小屋のテラスにて

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 木を切り倒してからの作業は順調だった。
 ある程度の数の木を伐採した後、俺は大工に職業を変えてマスターレベルにするとそのステータスはこんな感じになった。

 名前:佐倉木裕樹
 種族:人間
 レベル:レベル9999
 職業:大工
 マスタージョブ:剣士
 力:7352
 体力:7754
 魔力:5251
 速さ:8215
 器用さ:8524
 集中力:8527
 幸運:5732

 魔法:なし
 物理スキル:剣技Sランク
 特殊魔法:なし
 特殊スキル:設計図
 生産スキル:大工仕事Sランク
 ユニークスキル:【自分のレベルを一つ下げる(使用制限92回)】
 マスタースキル:【鑑定眼】【伐採の極み】【一刀両断】【木材加工】
 称号:召喚されし勇者

 メインの職業は大工、そしてもし何かに襲われたときのことも考えてマスタージョブは剣士にした。
 そのせいで生産スキルの伐採は表示から消えたけど、マスタースキルの【伐採の極み】は残ってる。
 ナナが言うにはマスタースキルはどんな職業になっても使えるそうだ。
 言ってみれば、その職業を極めた証だもんな。
 今、俺たちの傍には、家を作るための沢山の材木や板が積み上げられている。

 伐採した木を思い通りに加工できる【木材加工】は剣士と組み合わせると凄い効力を発揮した。
 剣技と大工仕事Sランクっていうのもあるんだろうけど、まるで豆腐か何かを切るかのように伐採した木を加工できた。
 豪快に大木から材木や大きな板を切り出して、細かい部分も剣で加工していく。
 そして最後に手をかざすと加工した板は自然に乾燥していって、家を作るのに適した木材になる。

「それにしても。大工のマスタースキルの【木材加工】は便利だよな。俺は丸太小屋みたいのでもいいかなって思ったのにさ」

「駄目よ。せっかく二人の初めての家を作るんだから」

 すっかり現場監督のような気分になっているナナは、俺が地面に書いた設計図を眺めていた。

「特殊スキルの設計図も役に立ったわよね」

「ああ、絵心にはあんまり自信がなかったけどスラスラと書けたもんな」

 大工の特殊スキルの設計図は本当に便利だった。
 ナナと一緒にこんな家にしたいと話し合いながら俺が書いたんだけど、中々いい感じだ。
 今夜過ごすだけになりそうだから、そんなに大きくはないけどおしゃれな山小屋みたいな感じで。
 外で食事をするために机や椅子を置いたテラスなんかもあったりする。
 まあ、殆どはナナの希望だったんだけどさ。

「設計図さえできてしまえば、どんなサイズの材木が必要かは直ぐに頭の中に思い浮かんだからさ」

「当然よ。裕樹は今この世界でも指折りの大工なんだから」

「そっか! そう言われるとそうだよな」

 よく考えてみたら、マスターレベルの大工なんだよな俺って。
 道理で作業がはかどるわけだ。

「さて、必要な板や材木は出来たしあとは組み上げないとな。やるぞ!」

「お~!」

 ナナも威勢よく掛け声を上げた。
 家の組み上げも順調で、釘がなくても木を必要に応じて加工すること噛み合わせ、きっちりと組み合わせて頑丈にする。
 時には杭も使ったりなんかして。

 作業に熱中していると、すっかり日傾いて、ついには日が沈み大きな月が辺りを照らしだしていた。
 そんな中、テラスに二つ目の椅子を置いた俺は腕を空に突き上げた。

「やったぞ! 完成だ!!」

「やったわね、凄いわ! 裕樹!!」

 ナナも大喜びだ。
 早速テラスの椅子に俺は座ってみる。
 そして空を見上げた。

「うぉおお! 綺麗だな!」

 満天の空と達成感に俺は思わず叫んでた。
 こんな体験は生まれて初めてだ。
 もの凄い充実感がある。

 空から目を下ろして前を見る。
 その時──
 俺は思わず固まった。

「は!?」

 つい驚いて変な声が出てしまう。
 ナナの希望で作ったテラスのテーブルと椅子、その向かい側の椅子に女の子が座っている。
 赤い髪の、もの凄く綺麗な子だ。
 彼女は思わず声を上げた俺を見つめると首を傾げる。

「どうしたのよ、裕樹? 変な声出して」

「え、どうしたのってお前……ナナだよな?」

「何言ってるのよ。当たり前でしょ?」

 当然のように答えるその少女。
 そこに座っているのはナナだ。
 妖精のようなサイズから大きさは変わっているけど、外見は変わってないから間違いはない。
 それは分かるんだけど。

「だ、だってお前。さっきまであんなに小さかっただろ?」

「だってあの方が便利じゃない。羽だって生えてるから自由に飛び回れるし」

 ナナが言うように今の姿だと妖精の羽のようなものはない。
 どこからどう見ても人間の女の子だ。

「せっかく裕樹が私の希望通りテラスも作ってくれたし、椅子だって二つあるんだもの」

 当たり前でしょっていう顔で、こっちを覗き込むナナの姿。
 学園で一番美人だっていうのが自慢のあの結衣でさえ全く敵わない程の美少女が、こちらをじっと見つめているのを見て俺は一瞬赤面した。
 そうか、だから椅子のサイズが大きかったんだ。
 俺はナナ用の小さな椅子を作るって言ったのに、いいから同じものを作ってって言ってたから少し変だと思ったんだ。
 つまりどちらの姿にもなれるってことか。
 気を取り直して咳払いをする。
 そしてナナを少し睨んだ。

「何だよ。だったら人間の姿になって手伝ってくれたらよかっただろ?」

 ナナはツンとした顔で答える。

「嫌よ。だって私、裕樹みたいに力持ちじゃないんだから。それにしっかり現場監督してあげたでしょ?」

 ナナらしい答えに俺は笑った。
 そうだよな、この世界にやってきて最初は散々な目にあって一人ぼっちになった気分だったけど、ナナがいてくれたから頑張れたんだ。
 ナナがどんな姿でも関係ない。
 俺は少し口を尖らせているナナに言った。

「ありがとう、ナナ。ナナがいてくれたお蔭で頑張れたんだ。これからもよろしくな」

 俺はそう言って彼女に手を差し出した。

「な! 何よ……分かればいいのよ分かれば」

 俺が言ったお礼に、照れたのかナナは少し赤くなってこっちを見つめている。
 そして、俺が差し出した手を握った。

 その時──
 俺たちの家の傍の草むらの奥から何か物音がした。
 ナナが慌てたようにそちらに視線をやる。

「裕樹!」

「ああ、何かがこっちに来るみたいだ」

 俺は立ち上がると剣を握って、その草むらの奥からやってくる何かに警戒をして身構えた。
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