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216、討伐隊
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「ああ、そうさ。エイジ、ある魔物の討伐隊にあんたたちも加わって貰いたいんだ」
「ある魔物の討伐隊?」
ジーナさんに問い返す俺を眺めながら、エリクさんは頷く。
そして、事情を俺たちに話してくれた。
魔物の名前や、討伐する理由。
それを聞いて俺たちは納得する。
「確かに。それなら早めに討伐したほうがいいですね」
俺の言葉に、エリクさんは俺の肩に手を置くと。
「ああ、警備隊には他にもやるべきことは多いからね、手が足りないんだよ。もし君たちが参加してくれるなら、こちらとしても助かる」
ジーナさんが腰に手を当てたまま、俺にウインクする。
「お姫様やご令嬢の正体は討伐隊には伏せておく。純粋に、冒険者としてのあんたたちの腕を買って依頼するんだ。それなら文句はないだろう?」
「ジーナさん……」
エリスやリアナが望んだフェロルクでの冒険。
それを邪魔することなく、警備隊としてもエリスたちの居場所を把握したいということだろう。
警備隊の隊員で構成される討伐隊に参加すれば、俺たちの居場所なんて言わずもがなだ。
ジーナさんは俺の肩に手を置いて、美しい顔をそっと寄せると囁いた。
「もし公爵の息子に絡んだ連中がちょっかいを出してきても、まさか警備隊と行動を共にしている時に狙うなんて馬鹿な真似はしないだろうからね」
ジーナさんはそう言うと、エリスの方をチラリと眺める。
そして俺の耳元で話を続けた。
「お姫様を守るって誓ったんだろう? それならエイジ、あんたが早く強くなることさ」
煌めくブロンドの奥に見える美しい横顔。
勇み足を踏む弟を、諫める姉のような笑顔が浮かんでいる。
(馬鹿だな、俺。声を荒げたりしてさ)
ラエサルさんもそうだけど、ジーナさんのこういう笑顔を見ると安心する。
頼りになる兄貴や姉貴が出来たみたいだ。
一方でエリスやリアナが魔物の名前を聞いて、昨夜ジーナさんから受け取った新しい冒険者の手帳を開く。
エリスは驚いたように言う。
「でも、これはBランク用の手帳に書かれている魔物よ? それも今の話が本当ならその一匹のはずがないし」
リアナも頷く。
「ルイーナから上じゃなくて、いきなり下の階層に行くのね。大丈夫かしら?」
アンジェは二人を眺めながら胸を張る。
そして、『紅』を抜くと鮮やかに振って見せた。
その刀身は美しい緋色に染まっている。
「面白いじゃない! 『紅』の力も試してみたかったし丁度いいわ。それに低いレベルでより強い相手を倒した方が、レベルが上がるのは早いもの」
「確かにな」
俺はアンジェの言葉に頷いた。
女神の加護のことを考えれば、その効果は絶大だろう。
エリクさんが俺に言う。
「安心してくれ。討伐隊の主力は僕が率いる部隊だ、君たちにはそのサポートがして欲しいんだよ」
(エリクさんの部隊のサポートか、この仕事の内容を考えると前衛が少ないと万が一の時に危険だもんな)
俺は、先程エリクさんから聞いた話を思い出す。
二つのチーム協同で動くならリスクも減るだろう。
ジーナさんはエリクさんを眺めながら、肩をすくめる。
「こう見えても、エリクの腕は冒険者でいえばAランク級だ。残りの討伐隊のメンバーもまだ若いが腕はいい。Bランクの上位程度の実力はあるからね」
美しき警備隊長の言葉にエリクさんは。
「ええ、今はまだ未熟な部分はありますが、彼らは近い将来、警備隊の主力の一員になって貰うつもりですからね」
そう言うと、エリクさんは俺たちの方を見つめながら言った。
「彼らにとっても、同じ世代の君たちと組むのは刺激になるだろうし。どうだい、引き受けてくれないか?」
どうやら討伐隊の他のメンバーも、俺たちを同世代の隊員のようだ。
俺はみんなと顔を見合わせる。
「俺はいい話だと思うけど、みんなはどう思う?」
その問いにアンジェはもちろんだが、エリスもリアナも頷いた。
それを見て、俺はエリクさんの前に進み出る。
「分かりました。その仕事、俺たちにやらせて下さい、エリクさん!」
「ある魔物の討伐隊?」
ジーナさんに問い返す俺を眺めながら、エリクさんは頷く。
そして、事情を俺たちに話してくれた。
魔物の名前や、討伐する理由。
それを聞いて俺たちは納得する。
「確かに。それなら早めに討伐したほうがいいですね」
俺の言葉に、エリクさんは俺の肩に手を置くと。
「ああ、警備隊には他にもやるべきことは多いからね、手が足りないんだよ。もし君たちが参加してくれるなら、こちらとしても助かる」
ジーナさんが腰に手を当てたまま、俺にウインクする。
「お姫様やご令嬢の正体は討伐隊には伏せておく。純粋に、冒険者としてのあんたたちの腕を買って依頼するんだ。それなら文句はないだろう?」
「ジーナさん……」
エリスやリアナが望んだフェロルクでの冒険。
それを邪魔することなく、警備隊としてもエリスたちの居場所を把握したいということだろう。
警備隊の隊員で構成される討伐隊に参加すれば、俺たちの居場所なんて言わずもがなだ。
ジーナさんは俺の肩に手を置いて、美しい顔をそっと寄せると囁いた。
「もし公爵の息子に絡んだ連中がちょっかいを出してきても、まさか警備隊と行動を共にしている時に狙うなんて馬鹿な真似はしないだろうからね」
ジーナさんはそう言うと、エリスの方をチラリと眺める。
そして俺の耳元で話を続けた。
「お姫様を守るって誓ったんだろう? それならエイジ、あんたが早く強くなることさ」
煌めくブロンドの奥に見える美しい横顔。
勇み足を踏む弟を、諫める姉のような笑顔が浮かんでいる。
(馬鹿だな、俺。声を荒げたりしてさ)
ラエサルさんもそうだけど、ジーナさんのこういう笑顔を見ると安心する。
頼りになる兄貴や姉貴が出来たみたいだ。
一方でエリスやリアナが魔物の名前を聞いて、昨夜ジーナさんから受け取った新しい冒険者の手帳を開く。
エリスは驚いたように言う。
「でも、これはBランク用の手帳に書かれている魔物よ? それも今の話が本当ならその一匹のはずがないし」
リアナも頷く。
「ルイーナから上じゃなくて、いきなり下の階層に行くのね。大丈夫かしら?」
アンジェは二人を眺めながら胸を張る。
そして、『紅』を抜くと鮮やかに振って見せた。
その刀身は美しい緋色に染まっている。
「面白いじゃない! 『紅』の力も試してみたかったし丁度いいわ。それに低いレベルでより強い相手を倒した方が、レベルが上がるのは早いもの」
「確かにな」
俺はアンジェの言葉に頷いた。
女神の加護のことを考えれば、その効果は絶大だろう。
エリクさんが俺に言う。
「安心してくれ。討伐隊の主力は僕が率いる部隊だ、君たちにはそのサポートがして欲しいんだよ」
(エリクさんの部隊のサポートか、この仕事の内容を考えると前衛が少ないと万が一の時に危険だもんな)
俺は、先程エリクさんから聞いた話を思い出す。
二つのチーム協同で動くならリスクも減るだろう。
ジーナさんはエリクさんを眺めながら、肩をすくめる。
「こう見えても、エリクの腕は冒険者でいえばAランク級だ。残りの討伐隊のメンバーもまだ若いが腕はいい。Bランクの上位程度の実力はあるからね」
美しき警備隊長の言葉にエリクさんは。
「ええ、今はまだ未熟な部分はありますが、彼らは近い将来、警備隊の主力の一員になって貰うつもりですからね」
そう言うと、エリクさんは俺たちの方を見つめながら言った。
「彼らにとっても、同じ世代の君たちと組むのは刺激になるだろうし。どうだい、引き受けてくれないか?」
どうやら討伐隊の他のメンバーも、俺たちを同世代の隊員のようだ。
俺はみんなと顔を見合わせる。
「俺はいい話だと思うけど、みんなはどう思う?」
その問いにアンジェはもちろんだが、エリスもリアナも頷いた。
それを見て、俺はエリクさんの前に進み出る。
「分かりました。その仕事、俺たちにやらせて下さい、エリクさん!」
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