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214、魔法剣

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「あそこがリカルドの鍛冶屋だよ」

 ジーナさんの視線の先にある家は、一見する限り武器屋にも鍛冶屋にも見えない。
 無機質な雰囲気で、まるで何かの研究施設のようにさえ見える。
 俺とエリスは顔を見合わせると。

「ここが?」

「鍛冶職人の家には見えないわ」

 リアナも頷く。

「そうね、ロイさんが認めるぐらいの鍛冶職人だって聞いたから、立派なお店があるのかなって思ったのに」

 リアナの言葉にジーナさんは肩をすくめた。

「あいつは興味がない客の為には仕事はしないからね、大抵はオーダーメイドさ。大体、何で鍛冶職人をやってるのかもよく分からない男だからね。ミーナじゃないけど、謎が多い男だよ」

 俺たちは、大きな耳をピコピコさせながらそう言ったミーナを思い出して思わず笑顔になる。
 建物に近づくと、ジーナさんは玄関の扉の側につけられた金属製のベルを鳴らす。
 だが、しばらく待っても何の返答もない。

「リカルド! いないのかい?」

 ジーナさんはこちらを振り返って肩をすくめる。

「この時間なら居ると思ったんだけど、どうやら留守のようだね。大方、遺跡にでも出かけたんだろうさ」

 どうやら出かけているらしい。
 フローラさんも、よく遺跡で見かけるって言ってたからな。

「そうですか、残念ですけど仕方ないですね。迷宮でレベル上げした後にでも、改めてまた訪ねてみますよ」

 その言葉に美しい女剣士は頷いた。

「そうだね。せっかく来たんだ、アンジェに『紅』を使わせることぐらいは伝えておきたかったけどね」

 ジーナさんの言葉に、俺はアンジェが腰から提げた『紅』を見る。

(魔法剣か……父さん以外に、こんなに見事な剣を作れる人がいるなんて)

 ジーナさんの『風神』、そしてアンジェの『紅』
 これほどの剣を作る鍛冶職人だ、純粋に興味がある。
 俺はジーナさんに尋ねる。

「そう言えばジーナさん。魔法剣ってどうやって作るんですか?」

 その疑問に、美貌の剣士は自分が腰から提げている『風神』を眺める。

「さあどうだろう、私は職人じゃないからね。そもそも、リカルドの魔法剣は他の職人が作る物とは全く違う。切れ味もその力も桁違いさ。魔法剣って言っても、普通のそれとは別物かもしれないね」

 確かに、『紅』も『風神』も凄い力を秘めている。
 ジーナさんの言葉を聞きながら、リアナがハッとしたような顔で口を開く。

「ねえ、もしかしたら魔法科学を剣作りに応用してるんじゃないかしら? リカルドさんは、遺跡の研究もしてるって言うし」

「魔法科学の技術が使われた剣か。確かに、もしそうなら凄い剣が出来るのも分かるよな」

 俺はリアナに同意する。
 リアナはうんうんと頷きながら。

「きっとそうよ、リカルドさんに会えたら聞いてみましょ!」

「ああ、楽しみだな。リアナ」

 高度な古代文明の力が使われた剣だとしたら、そう思うと厨二心を刺激される。
 リカルドさんに会うのが楽しみになってきた。
 自分のひらめきに胸を張るリアナを眺めながら、ジーナさんは首を横に振った。

「残念だけど、それはないよ。リアナ」

「え~、どうしてですか! ジーナさん」

 あっさりと否定されて頬を膨らますリアナに、美貌の剣士は答える。

「調査団だって、元々ある遺跡や遺物を動かすことぐらいしか出来ないからね。魔法科学を応用した何かを作り出すなんて、まだとても出来やしないのさ」

(……ああ、そういうことか)

 例えば車が運転出来るのと、その車自体の仕組みを全て理解して作り出すことが出来るのは、全く次元が違う話だからな。
 そもそもそれが出来るのであれば、地上の街にだってルイーナの技術が応用された設備があるはずだ。
 がっかりするリアナを眺めながら、俺はふと思った。
 でも、もしリカルドさんの方が調査団よりも魔法科学に詳しかったとしたら……

 いや、それは無いか。
 調査団の団長であるファルトラース子爵は、魔法科学の第一人者だと聞いた。
 いくらなんでも、そんな人よりも魔法科学に精通した鍛冶職人なんてさ。
 俺は、ここまで付き合ってくれたジーナさんとエリクさんにお礼を言う。

「ジーナさん、エリクさん、ありがとうございました。リカルドさんに会えなかったのは残念ですけど、俺たちそろそろ迷宮の奥にレベル上げに向かおうと思います!」
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