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405、調査団の目的
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「そこまで知ったのであればやむを得ぬ。ラエサル、キーラ、ワシの後に一緒についてくるがよい」
ファルトラース子爵の言葉に、ラエサルとキーラは顔を見合わせた。
キーラは白髭の老人に尋ねる。
「一緒にって何処へ?」
「レディースパイダーよ、ついて来れば分かる」
ラエサルは子爵の言葉に頷くと、キーラの肩に手を置いた。
「ファルトラース子爵、同行しよう」
「……分かったわ、ラエサルがそう言うのなら」
何処に行くのかは気になったが、ラエサルの言葉にキーラも同意する。
ファルトラース子爵は二人の静かに頷くと、書斎に置かれた書棚から一冊の本を取り出した。
ルイーナの遺跡に関する書物だ。
貴重な書物ではあるのだろうが、それは何の変哲もない古びた本に見える。
彼はそれを書斎の机の上に置く。
キーラは訝し気に白髭の老人を見つめた。
自分たちに同行を求めたはずの彼が、ここから移動しようとする気配がない。
子爵はそのまま二冊目の本を書棚からとると、それも書斎のテーブルの上に置いた。
(どういうこと?)
キーラはそう思ったが、ラエサルは何も言わずに老人の行動を眺めている。
子爵は同じように合計五冊の本を書棚から取り出し、それをテーブルの上に並べていく。
テーブルの中央に一冊の本。
その左右にそれぞれ一冊ずつ、そして上下にも一冊ずつの合計五冊だ。
中央に一冊を中心に十字を描く配置である。
静かに詠唱を始める白髭の老人。
凄まじいほどの魔力がその体から沸き上がるのをキーラは感じた。
(……人がいい雰囲気に忘れていたけど、かつては都の魔法学院の校長をしていた程の人物。ただの老人ではないわね)
ファルトラース子爵の体から沸き上がった魔力。
それが彼の右手によって、中央に本に注ぎ込まれる。
すると、その本はまるで生きているかのように勝手に開いていく。
そこに記されている記述、それは全て偽りなのだろうか?
消えていくのだ。
分厚い本にインクで書かれていたものが消え去り、その代わり老人の魔力で別の文字が浮き上がっていく。
隠された真実が浮き上がって来るかのように。
同時に残りの本も魔力に反応し開いていく。
そして、中央の本同様にその内容は書き換えられていった。
キーラは愕然としながら思わず呟く。
「一体……これは何なの」
キーラの瞳には部屋を埋め尽くす魔法陣が映っている。
テーブルの上に置かれた五冊の本が光り輝き、それが放つ光が描き出した魔法陣。
ラエサルは凄まじい魔力を放つ老人を見つめながら、静かに尋ねた。
「ファルトラース子爵、この文字は今日迷宮の深層で見たものと同じだ。どういうことだ? 魔法科学の入り口にさえたどり着けぬと揶揄される調査団の持つ知識だとは思えん」
老人は、鋭く眼光を光らせる若者を見つめている。
そして答えた。
「ラエサル、人には知ってはならぬ知識がある。我らの任務はそなたが思っていることとは真逆のものなのだ。魔法科学を解明しそれを利用することではない、魔法科学を知り必要とあらばそれを封じる。それこそが我ら調査団の真の目的なのじゃ」
ファルトラース子爵の言葉に、ラエサルとキーラは顔を見合わせた。
キーラは白髭の老人に尋ねる。
「一緒にって何処へ?」
「レディースパイダーよ、ついて来れば分かる」
ラエサルは子爵の言葉に頷くと、キーラの肩に手を置いた。
「ファルトラース子爵、同行しよう」
「……分かったわ、ラエサルがそう言うのなら」
何処に行くのかは気になったが、ラエサルの言葉にキーラも同意する。
ファルトラース子爵は二人の静かに頷くと、書斎に置かれた書棚から一冊の本を取り出した。
ルイーナの遺跡に関する書物だ。
貴重な書物ではあるのだろうが、それは何の変哲もない古びた本に見える。
彼はそれを書斎の机の上に置く。
キーラは訝し気に白髭の老人を見つめた。
自分たちに同行を求めたはずの彼が、ここから移動しようとする気配がない。
子爵はそのまま二冊目の本を書棚からとると、それも書斎のテーブルの上に置いた。
(どういうこと?)
キーラはそう思ったが、ラエサルは何も言わずに老人の行動を眺めている。
子爵は同じように合計五冊の本を書棚から取り出し、それをテーブルの上に並べていく。
テーブルの中央に一冊の本。
その左右にそれぞれ一冊ずつ、そして上下にも一冊ずつの合計五冊だ。
中央に一冊を中心に十字を描く配置である。
静かに詠唱を始める白髭の老人。
凄まじいほどの魔力がその体から沸き上がるのをキーラは感じた。
(……人がいい雰囲気に忘れていたけど、かつては都の魔法学院の校長をしていた程の人物。ただの老人ではないわね)
ファルトラース子爵の体から沸き上がった魔力。
それが彼の右手によって、中央に本に注ぎ込まれる。
すると、その本はまるで生きているかのように勝手に開いていく。
そこに記されている記述、それは全て偽りなのだろうか?
消えていくのだ。
分厚い本にインクで書かれていたものが消え去り、その代わり老人の魔力で別の文字が浮き上がっていく。
隠された真実が浮き上がって来るかのように。
同時に残りの本も魔力に反応し開いていく。
そして、中央の本同様にその内容は書き換えられていった。
キーラは愕然としながら思わず呟く。
「一体……これは何なの」
キーラの瞳には部屋を埋め尽くす魔法陣が映っている。
テーブルの上に置かれた五冊の本が光り輝き、それが放つ光が描き出した魔法陣。
ラエサルは凄まじい魔力を放つ老人を見つめながら、静かに尋ねた。
「ファルトラース子爵、この文字は今日迷宮の深層で見たものと同じだ。どういうことだ? 魔法科学の入り口にさえたどり着けぬと揶揄される調査団の持つ知識だとは思えん」
老人は、鋭く眼光を光らせる若者を見つめている。
そして答えた。
「ラエサル、人には知ってはならぬ知識がある。我らの任務はそなたが思っていることとは真逆のものなのだ。魔法科学を解明しそれを利用することではない、魔法科学を知り必要とあらばそれを封じる。それこそが我ら調査団の真の目的なのじゃ」
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