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386、蜘蛛の知らせ
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「この子が女王ララリシアの娘……エイリスっていうのね」
「ああ、エリスに似たいい名前だな」
エイジのその言葉に、エリスは静かにその子の顔を見つめていた。
リアナは赤ん坊の映像を見つめながら呟く。
「エイリス……きっとこの子がエリスの遠いご先祖様なのね」
「ああ、リアナ」
そう同意するエイジに、ラエサルとキーラもモニターを見つめながら頷く
「女王ララリシアの娘。精霊王の血を受け継ぐ、トラスフィナ王家に繋がる赤子……か」
「そういえば、この父親。レオンリート陛下にどこか似ているわね」
「確かにな」
キーラの言葉に、リアナは何かを思い出したようにクスクスと笑う。
「この子もどこかエリスに似ているわ。小さい頃のエリスってほんと可愛かったのよ!」
「あら、リアナ! それじゃあ今の私が可愛くないみたいじゃない!」
エリスがそういって頬を膨らますと、エイジも笑った。
「確かに、今は怒らせると怖いからな」
「あら、それは昔からよ?」
「はは、そうなんだリアナ」
エイジとリアナの会話に、エリスはますます頬を膨らませた。
「もう! エイジもリアナも知らない!!」
プイっとそっぽを向くエリス。
重苦しかった雰囲気が和んでいく。
ララリシアはふぅと溜め息をつくと言った。
「でも、この情報は戦いに役立ちそうにないわね。まさかこんなこと出来るわけないもの」
その技術がないことは勿論だが、あそこに書かれた言葉を見ればかつて地上を守り抜いた女王たちも、決してそれを望んでいないことが分かる。
エイジはララリシアの言葉に頷きながらも思う。
(限界を超えた力……か。彼らと同じような状況になったら俺はどうするんだろう?)
エリスがエイジの顔を心配そうにのぞき込む。
「どうしたのエイジ。そんな顔して?」
「ん? ああ、何でもないさ」
考えてもしょうがない。
そもそも今のエイジには不可能な技だ。
(完全に一体になると言うよりは、混ざり合って別の存在になるということだからな)
エイジはそう思って首を横に振った。
ラエサルとキーラは、モニターを見つめながら言った。
「今までの話を総合して考えると、エリスだけじゃない。この地上に生きている人間たちは、多かれ少なかれ精霊の血を引いている可能性があるということだな」
「ええ、そして一部の人間がかつて施された呪縛から解放されかけている。リカルドやアンリーゼは、その代表格と考えた方が良さそうね」
キーラの言葉にエイジは思わず呟いた。
「アンリーゼ・リア・エルゼスト……『殺せずの聖女』」
「私も白王の薔薇の一件で公爵の周辺の連中は一通り調べたわ。もちろんアンリーゼのこともね、ダブルユニークと呼ばれる天才だとは知っていた。でもいくら王国の魔法学園を首席で卒業した女だからといっても、実戦経験で遥かに勝るラエサルと戦って勝てるなんて普通じゃない」
キーラの言葉にアンジェも同意する。
「ええ、そんな女がラエサルより強いなんて今でも信じられないわ」
ラエサルは静かに首を横に振った。
「あの女の強さは別次元だった。瞳に魔法陣が浮かび上がった瞬間、まるで別の存在に変わったようにさえ俺には思えた。俺には分かる、あの女はまだ本気を出してはいない。純粋な力だけを言えば、リカルドよりも上かもしれん」
「リカルドよりも?」
キーラは思う。
(そうだとしたら、『殺せずの聖女』危険過ぎる相手ね)
同時にキーラの美しい横顔がピクンと震える。
「前のアジトにジーナが来たみたいね。ラエサル、私の蜘蛛でここまで案内させてもいいかしら?」
エイジたちが一斉に明るい顔になる。
「ジーナさんが!?」
「良かったわ、無事合流できそうね」
「他の皆も一緒かしら?」
ラエサルはキーラの言葉に頷く。
「ああ、キーラ! 頼んだぞ、ジーナたちをここまで誘導してくれ」
「ああ、エリスに似たいい名前だな」
エイジのその言葉に、エリスは静かにその子の顔を見つめていた。
リアナは赤ん坊の映像を見つめながら呟く。
「エイリス……きっとこの子がエリスの遠いご先祖様なのね」
「ああ、リアナ」
そう同意するエイジに、ラエサルとキーラもモニターを見つめながら頷く
「女王ララリシアの娘。精霊王の血を受け継ぐ、トラスフィナ王家に繋がる赤子……か」
「そういえば、この父親。レオンリート陛下にどこか似ているわね」
「確かにな」
キーラの言葉に、リアナは何かを思い出したようにクスクスと笑う。
「この子もどこかエリスに似ているわ。小さい頃のエリスってほんと可愛かったのよ!」
「あら、リアナ! それじゃあ今の私が可愛くないみたいじゃない!」
エリスがそういって頬を膨らますと、エイジも笑った。
「確かに、今は怒らせると怖いからな」
「あら、それは昔からよ?」
「はは、そうなんだリアナ」
エイジとリアナの会話に、エリスはますます頬を膨らませた。
「もう! エイジもリアナも知らない!!」
プイっとそっぽを向くエリス。
重苦しかった雰囲気が和んでいく。
ララリシアはふぅと溜め息をつくと言った。
「でも、この情報は戦いに役立ちそうにないわね。まさかこんなこと出来るわけないもの」
その技術がないことは勿論だが、あそこに書かれた言葉を見ればかつて地上を守り抜いた女王たちも、決してそれを望んでいないことが分かる。
エイジはララリシアの言葉に頷きながらも思う。
(限界を超えた力……か。彼らと同じような状況になったら俺はどうするんだろう?)
エリスがエイジの顔を心配そうにのぞき込む。
「どうしたのエイジ。そんな顔して?」
「ん? ああ、何でもないさ」
考えてもしょうがない。
そもそも今のエイジには不可能な技だ。
(完全に一体になると言うよりは、混ざり合って別の存在になるということだからな)
エイジはそう思って首を横に振った。
ラエサルとキーラは、モニターを見つめながら言った。
「今までの話を総合して考えると、エリスだけじゃない。この地上に生きている人間たちは、多かれ少なかれ精霊の血を引いている可能性があるということだな」
「ええ、そして一部の人間がかつて施された呪縛から解放されかけている。リカルドやアンリーゼは、その代表格と考えた方が良さそうね」
キーラの言葉にエイジは思わず呟いた。
「アンリーゼ・リア・エルゼスト……『殺せずの聖女』」
「私も白王の薔薇の一件で公爵の周辺の連中は一通り調べたわ。もちろんアンリーゼのこともね、ダブルユニークと呼ばれる天才だとは知っていた。でもいくら王国の魔法学園を首席で卒業した女だからといっても、実戦経験で遥かに勝るラエサルと戦って勝てるなんて普通じゃない」
キーラの言葉にアンジェも同意する。
「ええ、そんな女がラエサルより強いなんて今でも信じられないわ」
ラエサルは静かに首を横に振った。
「あの女の強さは別次元だった。瞳に魔法陣が浮かび上がった瞬間、まるで別の存在に変わったようにさえ俺には思えた。俺には分かる、あの女はまだ本気を出してはいない。純粋な力だけを言えば、リカルドよりも上かもしれん」
「リカルドよりも?」
キーラは思う。
(そうだとしたら、『殺せずの聖女』危険過ぎる相手ね)
同時にキーラの美しい横顔がピクンと震える。
「前のアジトにジーナが来たみたいね。ラエサル、私の蜘蛛でここまで案内させてもいいかしら?」
エイジたちが一斉に明るい顔になる。
「ジーナさんが!?」
「良かったわ、無事合流できそうね」
「他の皆も一緒かしら?」
ラエサルはキーラの言葉に頷く。
「ああ、キーラ! 頼んだぞ、ジーナたちをここまで誘導してくれ」
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