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317、魂を切り裂くもの
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「ラエサル。貴方が言った『鍵』と呼ばれる遺物、これはそのレプリカといってもいいでしょう。今まで私が作った中でも最高の逸品の一つですよ」
まさに異様な光景だ。
ただそこに、学者然と立っているその男。
その足元には高位精霊が倒れている。
一体何が起こっているのか、それを理解しているのは白く輝くロングソードを手にした男だけであろう。
オリビアが叫んだ。
「『鍵』と呼ばれる遺物、そのレプリカですって! リカルド、やっぱり貴方も兄を殺した奴らの仲間なのね!!」
「もしそうだと言ったら? 私を殺しますか、オリビア」
その答えに、美しい女騎士の体は霞むように動いていた。
「許さない、お兄様の仇!!」
怒りのあまり、リカルドに向かって突き進むオリビア。
聖気纏刃で美しく輝くソード・オブ・エンジェル。
剣の力が白く大きな翼を羽ばたかせ、それが少女の動きを加速させた。
だがその時──
それ以上の速さで、リカルドの右手が動く。
(いかん!!)
ラエサルはそう思った。
ギィイイイイイン!!
リカルドの剣を受け止めたのは、ラエサルの短剣だ。
エイジもオリビアの前に立ち塞がっている。
赤と青の精霊剣。
二刀の剣が何かとぶつかり合い、それぞれ赤と青に輝く波紋のような衝撃波を発生させていた。
『よくもお母様を!』
『許さないです!!』
エイジの闘気と融合し、怒りに燃えるリイムとミイム。
「ふふ、今のを止めますか、やはり興味深い。無論、ラエサルがこの剣の動きを途中で止めていなければ、受けきれはしなかったでしょうがね」
剣を握るエイジの両手に力が入る。
そして、同時にオリビアが膝を付いた。
美しい顔が苦痛に歪んでいる。
「うぅ……あああああ!」
オリビアの白い翼に、浅い切り傷が刻まれている。
まるで魂を切り刻まれたかのように、オリビアは絶叫した。
「いやぁああああああ!!」
そして、ガクガクと体を痙攣させる。
それを成したのが、男の剣が放った霊的な刃だということに気が付いたのはラエサルとエイジだけだろう。
心眼で剣から放たれるそれを見切ったラエサル。
エレメンタルフュージョンによって、精霊と融合することでそれを視覚したエイジ。
二人がリカルドの一撃を防がなければ、オリビアの翼は無残にも切り落とされていたに違いない。
オリビアは必死に、歯を食いしばって呻いた。
「く……ううぅ」
整った鼻梁が震え、額を汗が流れる。
彼女の聖気が剣に伝わり、翼の傷は徐々に修復されていった。
だがラエサルとエイジがいなければ、それは付け根から切り落とされていたことはオリビアも分かっている。
(もし、そうなっていたら。私、正気を保てなかったわ)
オリビアの唇からは、苦し気な吐息が漏れる。
リカルドはその姿を眺めながら言った。
「貴方の白い翼は、高められた魔力と気がその剣によって霊力の次元に昇華されることで作り出されたもの。実体というよりは霊体に近い。通常の攻撃など効きませんが、この剣ならばその限りではありません。肉体を切り刻まれるよりも、遥かに苦痛を感じるでしょうね」
そして、エイジを見る。
「ですが不思議ですね。その剣技、そして精霊と融合するその力。確かに強い、ですがそれではラエサルに勝てるとは思えない。あの魔剣を破壊したのは貴方ではないのですか?」
まるで今の攻撃が小手試しだったかのように、首を傾げる男。
エイジは目の前の男を睨んだ。
リカルドはエイジに宣告する。
「それが貴方の力の全てであれば。死ぬことになりますよ」
そういうと、リカルドは手にしたロングソードをゆっくりと構えた。
まさに異様な光景だ。
ただそこに、学者然と立っているその男。
その足元には高位精霊が倒れている。
一体何が起こっているのか、それを理解しているのは白く輝くロングソードを手にした男だけであろう。
オリビアが叫んだ。
「『鍵』と呼ばれる遺物、そのレプリカですって! リカルド、やっぱり貴方も兄を殺した奴らの仲間なのね!!」
「もしそうだと言ったら? 私を殺しますか、オリビア」
その答えに、美しい女騎士の体は霞むように動いていた。
「許さない、お兄様の仇!!」
怒りのあまり、リカルドに向かって突き進むオリビア。
聖気纏刃で美しく輝くソード・オブ・エンジェル。
剣の力が白く大きな翼を羽ばたかせ、それが少女の動きを加速させた。
だがその時──
それ以上の速さで、リカルドの右手が動く。
(いかん!!)
ラエサルはそう思った。
ギィイイイイイン!!
リカルドの剣を受け止めたのは、ラエサルの短剣だ。
エイジもオリビアの前に立ち塞がっている。
赤と青の精霊剣。
二刀の剣が何かとぶつかり合い、それぞれ赤と青に輝く波紋のような衝撃波を発生させていた。
『よくもお母様を!』
『許さないです!!』
エイジの闘気と融合し、怒りに燃えるリイムとミイム。
「ふふ、今のを止めますか、やはり興味深い。無論、ラエサルがこの剣の動きを途中で止めていなければ、受けきれはしなかったでしょうがね」
剣を握るエイジの両手に力が入る。
そして、同時にオリビアが膝を付いた。
美しい顔が苦痛に歪んでいる。
「うぅ……あああああ!」
オリビアの白い翼に、浅い切り傷が刻まれている。
まるで魂を切り刻まれたかのように、オリビアは絶叫した。
「いやぁああああああ!!」
そして、ガクガクと体を痙攣させる。
それを成したのが、男の剣が放った霊的な刃だということに気が付いたのはラエサルとエイジだけだろう。
心眼で剣から放たれるそれを見切ったラエサル。
エレメンタルフュージョンによって、精霊と融合することでそれを視覚したエイジ。
二人がリカルドの一撃を防がなければ、オリビアの翼は無残にも切り落とされていたに違いない。
オリビアは必死に、歯を食いしばって呻いた。
「く……ううぅ」
整った鼻梁が震え、額を汗が流れる。
彼女の聖気が剣に伝わり、翼の傷は徐々に修復されていった。
だがラエサルとエイジがいなければ、それは付け根から切り落とされていたことはオリビアも分かっている。
(もし、そうなっていたら。私、正気を保てなかったわ)
オリビアの唇からは、苦し気な吐息が漏れる。
リカルドはその姿を眺めながら言った。
「貴方の白い翼は、高められた魔力と気がその剣によって霊力の次元に昇華されることで作り出されたもの。実体というよりは霊体に近い。通常の攻撃など効きませんが、この剣ならばその限りではありません。肉体を切り刻まれるよりも、遥かに苦痛を感じるでしょうね」
そして、エイジを見る。
「ですが不思議ですね。その剣技、そして精霊と融合するその力。確かに強い、ですがそれではラエサルに勝てるとは思えない。あの魔剣を破壊したのは貴方ではないのですか?」
まるで今の攻撃が小手試しだったかのように、首を傾げる男。
エイジは目の前の男を睨んだ。
リカルドはエイジに宣告する。
「それが貴方の力の全てであれば。死ぬことになりますよ」
そういうと、リカルドは手にしたロングソードをゆっくりと構えた。
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