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連載
314、物資の調達
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「忘れていました。これから別行動をするのならば、一つ決めておかないといけないことがありますね」
「決めておかないといけないこと?」
リアナは首を傾げる。
エリクはリアナに頷くと。
「ええ、別行動を取るにしても音信不通になっては困りますからね。貴方たちが迷宮の深層に進むとしたら、こちらとしても連絡の手段が欲しい」
エリクのその言葉にラエサルは答える
「だが、今の時点では確かなことは言えん。暫く迷宮の中で過ごすこともあり得るだろうからな」
「「迷宮の中で!?」」
驚いたように声を上げるエリスとリアナ。
一方でラエサルは事も無げに頷く。
「迷宮の深層には、魔物が入ってくることが出来ない場所が幾つかある。場合によっては狩りをしながら数日、そこを転々と移動することになるかもしれん」
「ふふ、楽しそうね! ラエサル」
まるで、キャンプにでも行くような感覚でそう答えたアンジェ。
その一方で、他の女性陣は少し戸惑った様子だ。
「で、でも、お料理とかは?」
「そうね、それに……」
「お風呂……とか」
それを聞いて、肩をすくめて溜め息をつくラエサル。
「こんな時に料理と風呂の心配か、こりゃあまるでどこかのお嬢様だな」
(おっと、そうか……)
お嬢様どころか、王女までいるんだったなと苦笑するラエサル。
実際、彼女たちの生きてきた環境を考えると躊躇いも分からなくもない。
オリビアも騎士とはいえその出自を思えば、迷宮で数日を過ごすなどと言う経験はないだろう。
「迷宮の中にも食べられる植物は自生してはいるが、腹の足しにはなっても料理とまではいかないだろうな」
ラエサルの話では、深層に潜る際に食料として口にする幾つかの植物はギルドに許可なく採取することが許されているそうだ。
「売って金になるようなものではないからな」
それを聞いて、またエリスたちが渋い顔をした。
「それってつまり……」
「ええ」
「美味しくないってことよね」
一方で、アンジェは楽しそうに口笛を吹くと。
「いいじゃない、楽しいわよきっと!」
(アンジェはたくましいな。はは……エリス達の気持ちもわかるけどさ)
エリスたちがこんなことを言えるのも、エイジやラエサルがいる安心感からだろう。
ラエサルは溜め息をつきながら言った。
「風呂の心配はするな。魔物が出ない場所にも、いくつか湧き水が出ている場所があるからな」
エリクはそんなやり取りを笑いながら聞いていたが、見かねた様子で一つ提案をした。
「先程も話しましたが、出来れば私たちも状況を知っておきたい。今晩、迷宮の中のどこかで落ち合いませんか? 私たちがジーナ隊長と一緒に食べ物を運んできますよ」
それを聞いて目を輝かせる女性陣。
「さすがエリクさん!」
「頼りになるわね」
「エリク先輩、お願いします!」
三人の美少女に持ち上げられて、思わず頭を掻くエリク。
「これは責任重大ですね」
そう言っておどけて見せると皆、顔を見合わせて笑った。
そんな中、エイジは真顔になるとエリクに頼んだ。
「エリクさん、父さんと母さんに伝えて欲しいんだ。暫く帰れないかもしれないけど心配しないでって」
「ええ、もちろんです。お二人の傍には、念のために腕利きの警備隊員を警護に付けましょう」
ラエサルも頷いた。
「あそこにエリスが戻らなければ、奴等も無意味に警備隊と衝突するリスクは冒すまい。その意味でも、今は帰らぬ方がいいだろう」
その言葉に気を引き締めるように、真剣な表情に変わる一同。
ラエサルはエリクに尋ねる。
「エリク、何か書くものはないか?」
ラエサルの言葉を聞いて、エリクは腰から提げた革袋から筆記具を取り出す。
そして、警備隊の印の入った手帳を取り出すとラエサルに渡した。
ラエサルは手帳に、サラサラと何事かを書くとエリクに返す。
「これをジーナに渡してくれ。ジーナならこれを見れば落ち合う時間と場所が分かるはずだ、必要なものも書いてある」
それは、万が一誰かに見られたとしても分からぬように暗号で書かれている。
手帳を奪われた時に備えた用心だろう、とエリクは思い静かに頷いた。
(確かに、ここから先は何が起きるか分からない。こちらも用心に用心を重ねた方がいいでしょうね)
ラエサルが迷宮から戻らなければ、アンリーゼが動き出す可能性は高いだろう。
その為にも、彼らの行く先を知っている者は少ないほどいい。
「分かりました。ジーナ隊長には必ず渡します」
「ああ、頼むぞエリク」
ラエサルの言葉に、エリクは力強く頷いた。
「決めておかないといけないこと?」
リアナは首を傾げる。
エリクはリアナに頷くと。
「ええ、別行動を取るにしても音信不通になっては困りますからね。貴方たちが迷宮の深層に進むとしたら、こちらとしても連絡の手段が欲しい」
エリクのその言葉にラエサルは答える
「だが、今の時点では確かなことは言えん。暫く迷宮の中で過ごすこともあり得るだろうからな」
「「迷宮の中で!?」」
驚いたように声を上げるエリスとリアナ。
一方でラエサルは事も無げに頷く。
「迷宮の深層には、魔物が入ってくることが出来ない場所が幾つかある。場合によっては狩りをしながら数日、そこを転々と移動することになるかもしれん」
「ふふ、楽しそうね! ラエサル」
まるで、キャンプにでも行くような感覚でそう答えたアンジェ。
その一方で、他の女性陣は少し戸惑った様子だ。
「で、でも、お料理とかは?」
「そうね、それに……」
「お風呂……とか」
それを聞いて、肩をすくめて溜め息をつくラエサル。
「こんな時に料理と風呂の心配か、こりゃあまるでどこかのお嬢様だな」
(おっと、そうか……)
お嬢様どころか、王女までいるんだったなと苦笑するラエサル。
実際、彼女たちの生きてきた環境を考えると躊躇いも分からなくもない。
オリビアも騎士とはいえその出自を思えば、迷宮で数日を過ごすなどと言う経験はないだろう。
「迷宮の中にも食べられる植物は自生してはいるが、腹の足しにはなっても料理とまではいかないだろうな」
ラエサルの話では、深層に潜る際に食料として口にする幾つかの植物はギルドに許可なく採取することが許されているそうだ。
「売って金になるようなものではないからな」
それを聞いて、またエリスたちが渋い顔をした。
「それってつまり……」
「ええ」
「美味しくないってことよね」
一方で、アンジェは楽しそうに口笛を吹くと。
「いいじゃない、楽しいわよきっと!」
(アンジェはたくましいな。はは……エリス達の気持ちもわかるけどさ)
エリスたちがこんなことを言えるのも、エイジやラエサルがいる安心感からだろう。
ラエサルは溜め息をつきながら言った。
「風呂の心配はするな。魔物が出ない場所にも、いくつか湧き水が出ている場所があるからな」
エリクはそんなやり取りを笑いながら聞いていたが、見かねた様子で一つ提案をした。
「先程も話しましたが、出来れば私たちも状況を知っておきたい。今晩、迷宮の中のどこかで落ち合いませんか? 私たちがジーナ隊長と一緒に食べ物を運んできますよ」
それを聞いて目を輝かせる女性陣。
「さすがエリクさん!」
「頼りになるわね」
「エリク先輩、お願いします!」
三人の美少女に持ち上げられて、思わず頭を掻くエリク。
「これは責任重大ですね」
そう言っておどけて見せると皆、顔を見合わせて笑った。
そんな中、エイジは真顔になるとエリクに頼んだ。
「エリクさん、父さんと母さんに伝えて欲しいんだ。暫く帰れないかもしれないけど心配しないでって」
「ええ、もちろんです。お二人の傍には、念のために腕利きの警備隊員を警護に付けましょう」
ラエサルも頷いた。
「あそこにエリスが戻らなければ、奴等も無意味に警備隊と衝突するリスクは冒すまい。その意味でも、今は帰らぬ方がいいだろう」
その言葉に気を引き締めるように、真剣な表情に変わる一同。
ラエサルはエリクに尋ねる。
「エリク、何か書くものはないか?」
ラエサルの言葉を聞いて、エリクは腰から提げた革袋から筆記具を取り出す。
そして、警備隊の印の入った手帳を取り出すとラエサルに渡した。
ラエサルは手帳に、サラサラと何事かを書くとエリクに返す。
「これをジーナに渡してくれ。ジーナならこれを見れば落ち合う時間と場所が分かるはずだ、必要なものも書いてある」
それは、万が一誰かに見られたとしても分からぬように暗号で書かれている。
手帳を奪われた時に備えた用心だろう、とエリクは思い静かに頷いた。
(確かに、ここから先は何が起きるか分からない。こちらも用心に用心を重ねた方がいいでしょうね)
ラエサルが迷宮から戻らなければ、アンリーゼが動き出す可能性は高いだろう。
その為にも、彼らの行く先を知っている者は少ないほどいい。
「分かりました。ジーナ隊長には必ず渡します」
「ああ、頼むぞエリク」
ラエサルの言葉に、エリクは力強く頷いた。
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