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304、互いの決断
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「なるほどな、結局それしか方法がないだろう」
アンジェも、リアナと同じように不思議そうに首を傾げるとラエサルに尋ねた。
「どうして? ラエサル。何故、迷宮の奥に進むことがエリスを守ることになるの?」
その問いにラエサルはエイジを眺める。
そして答えた。
「エリスを守るための要、それが誰なのかということだ。迷宮の奥に進むことで、その男が今以上に強くなるとしたら?」
アンジェは、ラエサルの言葉にエイジを見つめる。
(確かに、そのアンリーゼっていう女がラエサルよりも強いとしたら。その女から、エリスを守れる可能性がある人間は……)
エリクはアンジェに頷いた。
「そうです。この先エリスを守るためのカギとなるのはエイジです。そうであるなら今、彼がルイーナに戻るのは愚策でしかない」
ラエサルはエリクの言葉に同意すると、肩をすくめる。
「確かにな、ならば進んだ方がいい」
「ラエサルさん……」
精悍な顔をしたSランク最強の男は、エイジの肩にポンと手を置くと続ける。
「お前がどこまで強くなれるのかは賭けだが、エリスもお前の傍を離れたくはなさそうだからな」
「ラエサルさん!」
エリスが頬を染めてラエサルを睨んだ。
ラエサルは肩をすくめると──
「第一、今のお前の力では、まだ到底アンリーゼには及ばない。再び戦えば俺にも勝てぬだろう、今はあの切り札もないからな」
時魔術のことを言っているのだろう、とエイジは思う。
上級クラスに上がったとは言え、時魔術を使わずにラエサルと戦えばどうなるかは明らかだろう。
(確かに、この状態で『殺せずの聖女』に出くわしたとしたら……)
エイジはそう思うと、ゾッとした。
背中に冷たい汗が流れる。
ラエサルでも勝てない相手。
「アンリーゼ・リア・エルゼスト……いったい何者なんだ?」
ラエサルは、エイジの言葉に首を横に振った。
「俺にも分からん、あんな女がいるとはな。俺を倒した時でさえ、まだ余力を残しているように見えた」
聖堂の中でアンリーゼの頭上を取った時、静かに上を見上げて笑みを浮かべたあの顔。
あの時感じた凄まじい魔力の胎動。
それはもはや人を超えた何かのようにさえ思える。
(馬鹿馬鹿しい、それではいったい何だというのだ? それに……)
とラエサルは思う。
「リカルドのことも気になる。アンリーゼが何故、奴を消そうとしているのかもな」
役に立つ男なら、自分にしたように下僕と化して操ればいい。
ラエサルは、学者然としてる男の顔を思い出す。
つかみどころのない、あの男。
(あの女でさえ、それが出来ぬほどの相手だとでもいうのか?)
オリビアは思わず剣を握りしめた。
「アンリーゼ……兄を殺すように命じた女! その女だけは許さない!!」
「オリビア、落ち着きなさい。焦れば貴方が死ぬだけですよ。それは亡くなられた兄君も、決して望んではいないはずです」
エリクの言葉に、一層強く剣を握りしめるオリビア。
その姿を見てエリクは思った。
(オリビア、貴方はエイジたちと一緒に行きたいのですね?)
強くなりたいと心から願う彼女の気持ちが、握りしめたその手から伝わってくる。
ライアンたちもそれを強く感じたのだろう、エリクに進言する。
「なあ、エリク先輩。俺たちここまで強くなったんだ。精霊の住処まで戻ればオリビアがいなくてもそこからは帰れるぜ。ジーナ隊長と行動するのだって俺がたちがいれば十分だろ?」
「ふにゃ、そうだにゃ。オリビアはエイジたちと行きたいはずにゃ、王女を守る特殊任務にゃ!」
だが、オリビアは首を横に振る。
「ありがとう、みんな。でも駄目よ、私が行っても足手まといになるだけだもの。せめてクラスチェンジが出来れば、役に立ってみせるのに」
そう言って肩を落とすオリビア。
本心はやはり、エイジたちと共に行きたいのだろう。
暫くはよくても更なる深層に進めば、クラスチェンジが出来ていないエリス達も徐々に足手まといになるだろう。
そこに自分が加わっては、余計な重荷を増やすだけだ。
(エイジと一緒に行きたい……でも、彼らの負担にはなりたくないわ)
すっかりと肩を落とすオリビアの傍を、ミイムが心配そうに飛び回っている。
そしてシュンとしたようにエイジの肩の上に座った。
『オリビア元気ないです、どうしたんですか?』
『ああ、実はな……』
ミイムとリイムにエイジは事情を話した。
(二人も立派な仲間だ、これからのことを相談しておかないとな)
そうエイジは思う。
信頼の気持ちが伝わるのだろう、リイムは誇らしそうに、落ち込んでいたはずのミイムは嬉しそうに飛び跳ねながら聞いている。
全ての話を聞き終えると、リイムは少し考えこんでエイジを見つめた。
『ねえエイジ。オリビアの事だけど何とかなるかもしれないわよ?』
アンジェも、リアナと同じように不思議そうに首を傾げるとラエサルに尋ねた。
「どうして? ラエサル。何故、迷宮の奥に進むことがエリスを守ることになるの?」
その問いにラエサルはエイジを眺める。
そして答えた。
「エリスを守るための要、それが誰なのかということだ。迷宮の奥に進むことで、その男が今以上に強くなるとしたら?」
アンジェは、ラエサルの言葉にエイジを見つめる。
(確かに、そのアンリーゼっていう女がラエサルよりも強いとしたら。その女から、エリスを守れる可能性がある人間は……)
エリクはアンジェに頷いた。
「そうです。この先エリスを守るためのカギとなるのはエイジです。そうであるなら今、彼がルイーナに戻るのは愚策でしかない」
ラエサルはエリクの言葉に同意すると、肩をすくめる。
「確かにな、ならば進んだ方がいい」
「ラエサルさん……」
精悍な顔をしたSランク最強の男は、エイジの肩にポンと手を置くと続ける。
「お前がどこまで強くなれるのかは賭けだが、エリスもお前の傍を離れたくはなさそうだからな」
「ラエサルさん!」
エリスが頬を染めてラエサルを睨んだ。
ラエサルは肩をすくめると──
「第一、今のお前の力では、まだ到底アンリーゼには及ばない。再び戦えば俺にも勝てぬだろう、今はあの切り札もないからな」
時魔術のことを言っているのだろう、とエイジは思う。
上級クラスに上がったとは言え、時魔術を使わずにラエサルと戦えばどうなるかは明らかだろう。
(確かに、この状態で『殺せずの聖女』に出くわしたとしたら……)
エイジはそう思うと、ゾッとした。
背中に冷たい汗が流れる。
ラエサルでも勝てない相手。
「アンリーゼ・リア・エルゼスト……いったい何者なんだ?」
ラエサルは、エイジの言葉に首を横に振った。
「俺にも分からん、あんな女がいるとはな。俺を倒した時でさえ、まだ余力を残しているように見えた」
聖堂の中でアンリーゼの頭上を取った時、静かに上を見上げて笑みを浮かべたあの顔。
あの時感じた凄まじい魔力の胎動。
それはもはや人を超えた何かのようにさえ思える。
(馬鹿馬鹿しい、それではいったい何だというのだ? それに……)
とラエサルは思う。
「リカルドのことも気になる。アンリーゼが何故、奴を消そうとしているのかもな」
役に立つ男なら、自分にしたように下僕と化して操ればいい。
ラエサルは、学者然としてる男の顔を思い出す。
つかみどころのない、あの男。
(あの女でさえ、それが出来ぬほどの相手だとでもいうのか?)
オリビアは思わず剣を握りしめた。
「アンリーゼ……兄を殺すように命じた女! その女だけは許さない!!」
「オリビア、落ち着きなさい。焦れば貴方が死ぬだけですよ。それは亡くなられた兄君も、決して望んではいないはずです」
エリクの言葉に、一層強く剣を握りしめるオリビア。
その姿を見てエリクは思った。
(オリビア、貴方はエイジたちと一緒に行きたいのですね?)
強くなりたいと心から願う彼女の気持ちが、握りしめたその手から伝わってくる。
ライアンたちもそれを強く感じたのだろう、エリクに進言する。
「なあ、エリク先輩。俺たちここまで強くなったんだ。精霊の住処まで戻ればオリビアがいなくてもそこからは帰れるぜ。ジーナ隊長と行動するのだって俺がたちがいれば十分だろ?」
「ふにゃ、そうだにゃ。オリビアはエイジたちと行きたいはずにゃ、王女を守る特殊任務にゃ!」
だが、オリビアは首を横に振る。
「ありがとう、みんな。でも駄目よ、私が行っても足手まといになるだけだもの。せめてクラスチェンジが出来れば、役に立ってみせるのに」
そう言って肩を落とすオリビア。
本心はやはり、エイジたちと共に行きたいのだろう。
暫くはよくても更なる深層に進めば、クラスチェンジが出来ていないエリス達も徐々に足手まといになるだろう。
そこに自分が加わっては、余計な重荷を増やすだけだ。
(エイジと一緒に行きたい……でも、彼らの負担にはなりたくないわ)
すっかりと肩を落とすオリビアの傍を、ミイムが心配そうに飛び回っている。
そしてシュンとしたようにエイジの肩の上に座った。
『オリビア元気ないです、どうしたんですか?』
『ああ、実はな……』
ミイムとリイムにエイジは事情を話した。
(二人も立派な仲間だ、これからのことを相談しておかないとな)
そうエイジは思う。
信頼の気持ちが伝わるのだろう、リイムは誇らしそうに、落ち込んでいたはずのミイムは嬉しそうに飛び跳ねながら聞いている。
全ての話を聞き終えると、リイムは少し考えこんでエイジを見つめた。
『ねえエイジ。オリビアの事だけど何とかなるかもしれないわよ?』
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