上 下
133 / 254
連載

288、地下六十階層へ

しおりを挟む
「さあ、じゃあメンバーを入れ替えるわよ! シェリルもお願い」

「ふにゃ! エリス、了解にゃ!!」

 二人の魔道士の合図で、一斉にパーティメンバーのシャッフルが行われる。

「何だか変な感じね。エイジがパーティにいないなんて」

 少し不安げなエリスの言葉にエイジは笑った。

「やることは同じさ。傍にいることは変わらないんだから」

「そうよね……ええ、そうね!」

 同じように暫く狩りを続けると、早速メンバー入れ替えの効果が発揮される。
 今まで明らかに足枷になっていたライアンたちの動きが、みるみる良くなっていく。
 オリビアに至っては、エリクを超えそうな勢いだ。

「参りましたねこれは。流石はロードファエル家の血筋だけはあります」

 そう言いながら、エリクはパーティの先頭で戦う少年を眺めていた。

「しかし、それもエイジがいての話ですね。この階層で、これ程安全に戦えるのは前衛に彼がいてこそでしょう」

 地下55階層の魔物を一刀両断する冒険者。
 その力は完全にSランクの冒険者だ。
 もはや、その領域に足を踏み入れたというような次元ではない。

(ジーナ隊長やラエサルさんはSランクの中でも特別な存在でしょうが、それ以外のSランクであれば彼以上の強さの者がどれだけいるか)

 しかも、まだこれで中級クラスである。
 これが上級クラスともなれば一体どうなるのか?

「彼だけは、その力がはかり知れませんね」

 そうこうしているうちに、火炎に耐性のある魔物が現れる。
 エイジの髪が青く変わっていく。
 リイムがエイジの闘気に溶け込むと、ミイムがエイジの肩の上に現れた。

『ミイム助かったぜ、しばらく休んでてくれ』

『はいです! エイジ』

 役に立ったのが嬉しいのかニコニコのミイム。
 新たな魔物と戦うエイジ。
 そうこうしているうちに一行は、地下59階層に到達した。

(もうすぐレベル50になる。無事に上級クラスになれればいいんだけどな)

 とエイジは思う。
 先程レベルが上がって、今は中級剣士のレベル49である。
 全員がレベル50になるには、もう少しかかるだろう。
 ライアンは大槍を構えて鼻息を荒くする。

「おい! 信じられるか? 地下60階層だぞ! Aランクの限界だ、ここから先はSランクしか立ち入れない場所だぜ」

「ふにゃ~あり得ないにゃ!」

 エイジがいなければ、ここまで楽にはたどり着けなかっただろう。
 だが、アンジェとオリビアもその剣の力を含めれば、もはやSランクの領域に入っている。
 エリスの魔法の威力も同様だ。
 他のメンバーもAランクではトップクラスの力を持っていると言ってもいいだろう。
 それを考えれば、ここまでくる力は十分すぎるぐらいにあるといえる。

(地下六十階層、白王の薔薇が咲くのはここから先のどこかだって聞いた)

 数日前に、冒険者ギルドで聞いた話を思い出すエイジ。
 その前にぽっかりと開く地下六十階層への階段。
 もしかしたらこの先に……
 エイジはまるで何かに魅入られるかのように、その階段に歩み寄っていった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

黙秘 両親を殺害した息子

ミステリー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

本当にあなたが運命なんですか?

BL / 完結 24h.ポイント:191pt お気に入り:578

人工知能でif歴史〜もしもの歴史シミュレーション〜

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:284pt お気に入り:0

付き合ってもいないのに振られた男

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:46

こんな寒い夜には側にいて欲しい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

スピリット・マイグレーション

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:28pt お気に入り:1,274

ウサ耳おっさん剣士は狼王子の求婚から逃げられない!

BL / 連載中 24h.ポイント:610pt お気に入り:2,765

いい加減、諦めてくれませんか?

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:14pt お気に入り:284

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。