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285、泉の水の効果

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「凄え……見えたかよ今の」

 ライアンは思わずオリビアに尋ねた。
 少し悔しそうにオリビアは答えた。

「ギリギリね。前よりも強くなっている、一体どういう事?」

 エリクも大きく頷く。

「強さの質が少し変わりましたね。まるで闘気を自在にあやつりその肉体の力さえ高めているようです」

 オリビアとアンジェは唇を噛むと前を見つめた。

「負けていられないわね、アンジェ」

「貴方に言われるまでもないわ、オリビア」

 同じ魔法剣士同士、ここまで戦ってくる中で奇妙な友情のようなものが二人には生まれていた。
 こつんと互いの拳をぶつけてエリクに申し出る。

「次は私たちが前に出るわ、エイジとエリク先輩はサポートに回って」

「エイジにばかり、いい格好させられないもの」

 二人の意気込みに、エリクは頭を掻きながらエイジに声をかける。

「だそうですよ。念のためにエイジは二人のすぐ後ろにいてください。私とライアンで後衛を守ります」

「分かりましたエリクさん。アンジェ、オリビア頼んだぞ!」

 エイジの言葉に頷く二人の魔法剣士。
 前に出て、すぐにアンジェはオリビアに警戒を呼び掛けた。

「来るわよ! オリビア」

「ええ、行くわよアンジェ!」

 二人は華麗に前に躍り出る。
 それぞれ、天井と床を這う二頭の三つ首の大蛇。

「「はぁあああ!!」」

 ほぼ同時に声を上げてアンジェは地上を駆け、オリビアはその翼を広げて宙を舞う。
 二人は違和感を感じた。

(これは……)

 オリビアは手にした剣が生み出す翼が、いつもよりも力強く羽ばたくのを感じる。

(いつもよりも力が!)

 アンジェは自分が握る『紅』がいつもよりも鮮やかに染まっていくのを感じた。
 通路の中を交差する魔物の鎌首と二人の剣。

「お見事!」

 エリクは声を上げた。
 エイジと比べれば時間はかかったが、敵の攻撃を数度かわした後、二人は魔物の鎌首を全て切り落としていた。
 アンジェは、自分の傍に舞い降りるオリビアに思わず尋ねた。

「オリビア……今の感覚」

「ええ、そうね。エイジだけじゃないみたいだわ」

 そう言って二人は赤い髪の少年を眺める。
 彼ほどではないにしても、自分たちの力も泉に向かった時よりも強くなっている。
 確かにそう感じた。
 二人の様子を見てエイジは頷く。

「やっぱり、あの泉に入ったことが原因だな」

「そうみたいね」

「間違いないわ」

(多分エリスたちもきっと……)

 そうエイジは思った。
 リイムが得意げにエイジの肩に舞い降りる。

『ね、言ったでしょ? あの泉の水は魔力や気を高めてくれるって、エイジの場合はちょっと特別みたいだけど』

『ああ、そうみたいだ。ファルティーシアさんとメグには感謝しないとな』

 あの泉に導いてくれた高位精霊、自分たちの世界に招いてくれたメグ。
 エイジはそう思いながら前方を見る。
 先程の泉に向かうものとは違う階段が見えてくる。

「さあ、行こうか。出来たら中級クラスのレベル50までレベルを上げて、上級クラスになりたいからな」
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