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262、分かれ道
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「そうね、あれで終わりじゃない! 前から数体来るわよ!!」
通路の奥からやってくる二体の大蛇。
エイジとエリク、そしてオリビアが向かっていく。
通路の中を鞭のようにしなりながら、音を立てて降り注ぐ巨大な鎌首の群れ。
『行くわよ、エイジ!』
エイジの中でリイムの声が響く。
『ああ、行くぜ! リイム!!』
二人の心がシンクロしていることを表すかのように、エイジの髪のブルーがより鮮やかになっていく。
その瞬間、エイジに襲い掛かった三本の鎌首が綺麗に切り落とされた。
青く輝く大剣が霞むように動いたのを、ライアンの瞳は辛うじて捉えていた。
思わず唸る。
「凄え……あの太刀捌き、もうSランクの領域に足を踏み入れかけてるんじゃねえか?」
「ふにゃ~、ドンドン強くなるにゃ。オリビアが惚れるのも分かるにゃ」
シェリルの一言が聞こえたのが、一瞬オリビアの剣捌きに乱れが生じる。
その隙を逃さずに襲い掛かる大蛇の牙。
美しい翼を広げて後ろに飛ぶオリビアを、更に追撃するようにしなる鎌首。
特有の無機質な目が、オリビアの美しい首筋を狙っている。
「くっ!!」
(駄目! 追いつかれる!)
その瞬間、目の前に青い髪の少年の姿が現れる。
凄まじい速さの斬り上げが、オリビアの前の鎌首を刎ねた。
それは目の前で凍り付いてゴトリと地面に落ちて、もはや動くことも無い。
エリクも残りの鎌首を切り落として、二体の大蛇は絶命している。
エイジはそれを眺めながらオリビアに言う。
「らしくないな、オリビア」
青い髪の少年は、目の前の少女ならあの程度の攻撃はかわせたはずだと首を傾げた。
オリビアはツンと顔を背けると。
「余計なことしないで、私一人でも何とかなったわ!」
そう言った後、ハッとした顔で俯いた。
(馬鹿みたい。私、まだ子供みたいに意地を張って)
オリビアは、軽く咳ばらいをするとエイジに手を差し出す。
そして少し照れたように言った。
「……ありがとう、エイジ。助かったわ」
素直にそう言うと、何だか気持ちが晴れた気がするオリビア。
エイジは肩をすくめると。
「気にするなって……」
続きを言いかけたエイジに、オリビアはクスクスと笑いながら。
「仲間だろ? でしょ、エイジ」
先に言われて頭を掻くエイジ。
こんなとき、頬を膨らますリアナの気持ちが少し分かる。
笑いながらオリビアの手を握ると答えた。
「だな、オリビア!」
しっかりと握手をしながらオリビアは思った。
(やっぱり仲間って言うのも、悪くないわね。お兄様)
屈託のない笑顔で笑う、オリビア。
兄の前でしか見せたことがない笑顔だ。
「へえ、オリビアもそんな顔するんだな」
「失礼ね、どういう意味よ?」
美しい翼を広げているので、まるで天使が微笑んでいるかのようである。
エイジは思わず言った。
「いや、何だかそうやって微笑んでると、本物の天使みたいだなって」
「なっ!!」
エイジの手を握ってたオリビアは、サッとその手を離す。
そしてプイっとそっぽを向くと言う。
「下らないことを言っている暇はないわ。まだ魔物はいそうだもの」
いつの間にか隣で様子を窺っているシェリルに、エイジは尋ねた。
「何怒ってるんだ? 変な奴だな。シェリルも思っただろ、天使みたいだって」
ジト目でエイジを見つめるシェリル。
「おみゃあ本気で言ってるのか? そうなら本当に恐ろしい奴だにゃ……ある意味、剣の腕よりそっちが恐ろしいにゃ!」
「恐ろしいって何がだよ? シェリル」
「ふみゃ~」
その時、ライアンが鼻をヒクつかせる。
「おっと、次のお客さんらしいぜ。オリビア、次は俺が前に行くぜ。あの手の相手なら、リーチの長い俺の槍の方が有利だからな」
「間合いの内側に入り込まれなければね。気を付けなさいよ、ライアン」
いつもよりも柔和な顔で、そうアドバイスするオリビア。
その表情に、へえっという顔をしながらも頷くライアン。
一行は、そのまま数体の三つ首の大蛇を倒しながら前に進む。
階段を見つけると47階層、そして48階層へと降りる。
気が付くとエイジのレベルは、中級クラスのレベル40に達していた。
通路の先が二股に分かれている。
それを見てリイムがエイジに語り掛ける。
『エイジ、あの分かれ道よ。右に曲がれば、お母様が言っていた目的地に着けるわ』
─────
※同時連載中の作品『転生チートは魔王級!!』もご覧の皆様へのお知らせ。
いつもご覧頂きましてありがとうございます、雪華慧太です。
皆様の応援のお蔭で、この度『転生チートは魔王級!!』が徳間書店様より書籍化されることになりました。
ありがとうございます!
発売予定日は5月29日、地域によっては店頭に並ぶのに数日かかることもあると思いますのでご容赦ください。
大変心苦しいのですが、他社様からの出版となりますのでアルファポリス様での『転生チートは魔王級!!』の掲載につきましては来週中には削除させて頂く予定です。
今までお読み頂きました読者の皆様、そして掲載の場を与えてくださいましたアルファポリス様には心から感謝しています。
これからも小説家になろう様ではそのまま連載を続けますので、よろしければぜひご覧くださいませ。
なお『成長チートになったので、生産職も極めます!』は引き続きアルファポリス様で連載を続けてまいりますので、これからもエイジたち共々よろしくお願いします!
通路の奥からやってくる二体の大蛇。
エイジとエリク、そしてオリビアが向かっていく。
通路の中を鞭のようにしなりながら、音を立てて降り注ぐ巨大な鎌首の群れ。
『行くわよ、エイジ!』
エイジの中でリイムの声が響く。
『ああ、行くぜ! リイム!!』
二人の心がシンクロしていることを表すかのように、エイジの髪のブルーがより鮮やかになっていく。
その瞬間、エイジに襲い掛かった三本の鎌首が綺麗に切り落とされた。
青く輝く大剣が霞むように動いたのを、ライアンの瞳は辛うじて捉えていた。
思わず唸る。
「凄え……あの太刀捌き、もうSランクの領域に足を踏み入れかけてるんじゃねえか?」
「ふにゃ~、ドンドン強くなるにゃ。オリビアが惚れるのも分かるにゃ」
シェリルの一言が聞こえたのが、一瞬オリビアの剣捌きに乱れが生じる。
その隙を逃さずに襲い掛かる大蛇の牙。
美しい翼を広げて後ろに飛ぶオリビアを、更に追撃するようにしなる鎌首。
特有の無機質な目が、オリビアの美しい首筋を狙っている。
「くっ!!」
(駄目! 追いつかれる!)
その瞬間、目の前に青い髪の少年の姿が現れる。
凄まじい速さの斬り上げが、オリビアの前の鎌首を刎ねた。
それは目の前で凍り付いてゴトリと地面に落ちて、もはや動くことも無い。
エリクも残りの鎌首を切り落として、二体の大蛇は絶命している。
エイジはそれを眺めながらオリビアに言う。
「らしくないな、オリビア」
青い髪の少年は、目の前の少女ならあの程度の攻撃はかわせたはずだと首を傾げた。
オリビアはツンと顔を背けると。
「余計なことしないで、私一人でも何とかなったわ!」
そう言った後、ハッとした顔で俯いた。
(馬鹿みたい。私、まだ子供みたいに意地を張って)
オリビアは、軽く咳ばらいをするとエイジに手を差し出す。
そして少し照れたように言った。
「……ありがとう、エイジ。助かったわ」
素直にそう言うと、何だか気持ちが晴れた気がするオリビア。
エイジは肩をすくめると。
「気にするなって……」
続きを言いかけたエイジに、オリビアはクスクスと笑いながら。
「仲間だろ? でしょ、エイジ」
先に言われて頭を掻くエイジ。
こんなとき、頬を膨らますリアナの気持ちが少し分かる。
笑いながらオリビアの手を握ると答えた。
「だな、オリビア!」
しっかりと握手をしながらオリビアは思った。
(やっぱり仲間って言うのも、悪くないわね。お兄様)
屈託のない笑顔で笑う、オリビア。
兄の前でしか見せたことがない笑顔だ。
「へえ、オリビアもそんな顔するんだな」
「失礼ね、どういう意味よ?」
美しい翼を広げているので、まるで天使が微笑んでいるかのようである。
エイジは思わず言った。
「いや、何だかそうやって微笑んでると、本物の天使みたいだなって」
「なっ!!」
エイジの手を握ってたオリビアは、サッとその手を離す。
そしてプイっとそっぽを向くと言う。
「下らないことを言っている暇はないわ。まだ魔物はいそうだもの」
いつの間にか隣で様子を窺っているシェリルに、エイジは尋ねた。
「何怒ってるんだ? 変な奴だな。シェリルも思っただろ、天使みたいだって」
ジト目でエイジを見つめるシェリル。
「おみゃあ本気で言ってるのか? そうなら本当に恐ろしい奴だにゃ……ある意味、剣の腕よりそっちが恐ろしいにゃ!」
「恐ろしいって何がだよ? シェリル」
「ふみゃ~」
その時、ライアンが鼻をヒクつかせる。
「おっと、次のお客さんらしいぜ。オリビア、次は俺が前に行くぜ。あの手の相手なら、リーチの長い俺の槍の方が有利だからな」
「間合いの内側に入り込まれなければね。気を付けなさいよ、ライアン」
いつもよりも柔和な顔で、そうアドバイスするオリビア。
その表情に、へえっという顔をしながらも頷くライアン。
一行は、そのまま数体の三つ首の大蛇を倒しながら前に進む。
階段を見つけると47階層、そして48階層へと降りる。
気が付くとエイジのレベルは、中級クラスのレベル40に達していた。
通路の先が二股に分かれている。
それを見てリイムがエイジに語り掛ける。
『エイジ、あの分かれ道よ。右に曲がれば、お母様が言っていた目的地に着けるわ』
─────
※同時連載中の作品『転生チートは魔王級!!』もご覧の皆様へのお知らせ。
いつもご覧頂きましてありがとうございます、雪華慧太です。
皆様の応援のお蔭で、この度『転生チートは魔王級!!』が徳間書店様より書籍化されることになりました。
ありがとうございます!
発売予定日は5月29日、地域によっては店頭に並ぶのに数日かかることもあると思いますのでご容赦ください。
大変心苦しいのですが、他社様からの出版となりますのでアルファポリス様での『転生チートは魔王級!!』の掲載につきましては来週中には削除させて頂く予定です。
今までお読み頂きました読者の皆様、そして掲載の場を与えてくださいましたアルファポリス様には心から感謝しています。
これからも小説家になろう様ではそのまま連載を続けますので、よろしければぜひご覧くださいませ。
なお『成長チートになったので、生産職も極めます!』は引き続きアルファポリス様で連載を続けてまいりますので、これからもエイジたち共々よろしくお願いします!
応援ありがとうございます!
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