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252、魔道士と精霊使い

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『ここを訪れる者は、私たち精霊を信仰する精霊使いが多いですから。神のように崇められることはあっても、こんな風に賑やかなことはありませんからね。いいでしょうエイジ、特別に願いをもう一つ聞き届けましょう。その代わり貴方たちにやって欲しいことがあります』

 ファルティーシアのその言葉に、リイムはタイタンにべぇっと舌を出すと。

『ふふ~ん! ほら、お母様はそう仰ってるわ』

『仰ってるです!』

 ミイムもリイムを真似て、エイジの首につかまりながらべぇっと舌を出す。

『ぐぬぬうううう』

 タイタンはハンマーの柄を地面に叩きつけると、足を踏みならす。
 その拍子に地面が揺れて、エイジの肩の上にいるミイムは震えあがった。

『タイタン、怒ったです!』

 びっくりしたミイムがエイジの肩から転げ落ちたのを、エイジは器用にキャッチする。
 エイジの手のひらの中で丸まっているミイムは可愛い。

『危ないぞ、ミイム』

『みゅ~、ありがとです』

 タイタンはエイジの前に立つと、再びハンマーの柄で床を突く。

『ファルティーシア様に感謝せよ! これ以上の無礼があれば、この槌でペシャンコにしてくれるわ!』

 タイタン派の精霊たちが上空で一気に囃し立てる。

『そうだ、そうだ! ペシャンコだ!!』

『へへ、平らにしてやるぜ!』

『やっちまえ~』

 騒がしい精霊たちをファルティーシアがひと睨みすると、シンと静まり返る。
 やはり、彼女は彼らにとっては絶対的な存在のようだ。
 エイジはファルティーシアに尋ねる。

『ありがとうございます。ファルティーシアさん、それで俺に頼みたいことって言うのは何ですか?』

『それはですね、エイジ……』

 エイジは彼女の頼みを頷きながら聞いていた。
 ライアンは手持無沙汰なようで、シェリルに話しかける。

「なあ、そもそも精霊使いと魔道士って何が違うんだ。同じ魔法使いなんだろ?」

「そんなの決まってるにゃ。精霊を召喚できるのが精霊使いにゃ」

「何だよそれ、そのままじゃねえかよ」

 オリビアは溜め息をつくと──

「確かにシェリルの言うとおりだけど、その為には精霊と契約をしないとね。精霊使いが彼らの言葉を学ぶのは、その為の第一歩だもの」

 エリクは頷いた。

「オリビアが言う通りですね。言葉を、そして心を通じ合わせた相手に、精霊は契約の証としてエレメントクリスタルと呼ばれる宝玉を渡します。それを触媒にして、精霊使いはこの世界に精霊を喚び出すんです」

「へえ、エレメントクリスタルね。でも、そんなもんなくても、あいつら呑気な顔で空を飛んでるだろ?」

 ライアンは、タイアスの上を飛んでいる精霊たちを眺めながらそう言った。
 シェリルはライアンに答える。

「ここは特別だにゃ、こういう場所以外に精霊を呼び出すときに必要だってことだにゃ」

 エリクは頷くと。

「そもそも精霊使いは職業ではありませんからね。精霊と契約を交わした人間の総称です。魔道士の中にもいますし、物理職の中にもいる。己の魔力を使うわけではありませんからね。そう言う意味では魔道士とは一線を画す存在な訳ですよ」

「まじかよ、エリク先輩! じゃあ俺も精霊を操る槍使いとかになれるってことか? そりゃあ、凄えな!」

 シェリルは、先程リイムに蹴り飛ばされていたライアンを思い出して、呆れたように彼を眺めると。

「ふにゃ~、ライアン、お前ってほんとポジティブだにゃ。感心するにゃ」

「へへ、そう褒めるなよシェリル」

「ふみゃ~、褒めてないにゃ」

 そうこうしている内に、ファルティーシアとエイジの話が終わったようである。
 エイジは一同にファルティーシアから聞いた話を伝えた。
 ライアンは大槍を肩に担ぐと。

「へえ、いいんじゃねえか? なあエリク先輩」

「ええ、それぐらいなら構わないでしょう」

 エイジは他のメンバーにも同意を取ると、ファルティーシアに伝える。
 彼女はそれを聞くと頷いて言った。

『分かりました、それでは貴方たちをこの先に通してあげましょう。貴方の願いについては、私との約束が済み次第という言ことでいいですね?』
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