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249、触れ合う場所

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「どうやら、中に入れてもらえそうですね。エイジ」

「ええ、リイムとミイムのお蔭ですよ」

 エイジたちは二人の後を追って通路の先に進んでいく。
 リイムは真っすぐに前に、ミイムは時々エイジの方を振り返って嬉しそうに笑うとリイムに続く。

『ミイム、そんなにはしゃがないの。みっともない』

『ふみぃ~、リイムが怒ったです』

 ミイムはエイジの肩の上にやってきて、座り込むとしょんぼりした顔になる。
 その姿が可愛らしくて、エリスとリアナが歩きながら覗き込む。
 それに驚いたのかミイムは、小さな手でエイジの首にしがみついた。
 自分に興味があることは分かっても、言葉が通じないから怖いのだろう。

『こっちを見てるです』

『はは、心配するなって。エリスもリアナも俺の仲間だからさ』

 しっかり者のリイムに比べて、ミイムは少し引っ込み思案のようだ。
 最初、リイムとエイジの様子を見守るだけで、下りてこようとはしなかったのがその証拠だろう。
 エイジの言葉にミイムは、恐る恐るエリス達を眺める。

『友達になるですか? ミイムとお友達になるんですか?』

 可愛らしい顔をした精霊の姿に、エリスとリアナはすっかり夢中だ。

「ねえエイジ。この子何か言っているわ?」

「何て言ってるの?」

 エイジは笑いながら。

「二人と友達になりたいみたいだぞ」

 リアナの目が輝くと、エイジがしていたみたいにミイムの前に人差し指を出す。
 エリスも咳ばらいをすると、そっとリアナを真似た。
 ミイムの顔がぱぁっと明るくなると、二人の指を順番に小さな手で触る。
 すっかり機嫌が直ったのか、エイジの肩の上ではしゃぐミイムを眺めてリイムはため息をついた。

『エイジ、ちょっとまってて。今、入り口を開けるわ』

 入り口らしき場所にはユラユラと揺らめく光のカーテンのようなものがある。

『ああ、頼むよリイム』

 リイムは頷くとその光の中に消えていく。
 一行が暫く待っていると、ゆっくりとその光が消滅し中の光景が露になる。

「これは……」

 エイジは思わず絶句した。
 エリスとリアナ、そしてアンジェも呆然と目の前の光景を眺めている。

「凄い……」

「ええ」

「ねえ見て! あれ!!」

 ドーム状になった広い空間、美しいスロープが中央に続きそこには巨大な結晶体が鎮座している。
 透き通った白い結晶体が中央に周囲を照らしていた。
 そしてその周りを衛星のように4色の結晶体がゆっくりと回転してる。
 それは中央の結晶体よりは小さいが、それでも驚くほどの大きさだ。

「綺麗ね……」

 エリクはオリビアのその言葉に頷くと。

「ええ、聖なる白と四大元素を模して彼らが作り上げたクリスタル。あれが、この地と精霊の世界を繋いでいます」

 エリクの言葉通り、白く大きなクリスタルの周りには色とりどりの精霊たちが飛び回っている。
 そこから出入りしているかのように見える。
 その数は数十にも及ぶだろうか。
 ライアンは、大きな口をあけてぽかんと目の前の光景を眺めていた。

「凄えな、これが聖地ってやつか?」

「そうみたいだにゃ。聞いたことあるにゃ、精霊の世界とこの世界が触れ合っているような場所があるってにゃ。ここも多分そのひとつだろうにゃ」

 オリビアはシェリルの言葉に頷くと。

「迷宮の中にこんな場所があるなんて」

 エリクはオリビアの問いに。

「中に入れる人間は限られてますからね。私は無理だと踏んでいたのですが……」

(困りましたね。本当ならここを通れないことを口実に、一度ルイーナに戻るつもりだったのですが)

 とエリクは思った。
 45階層までくれば、エイジたちはレベルも上がり、ライアンたちにも十分良い訓練になるはずである。
 そもそも、ここには精霊使いなど特殊な人間しか中には招かれない。
 そう踏んでいたのだが、策士策に溺れるという形になったことにエリクは苦笑した。

「まあ、ここまでくれば毒を喰らわば皿までですね」

 エリクの自嘲的なつぶやきに皆は首を傾げた。
 そんな中、ミイムはエイジの肩の上で前方を指さす。

『お母様です!』

 それは他の精霊とは大きさが違う。
 人間と同じ大きさの女性型の精霊だ。
 その体は白く輝いてた。

「あれが……」

 エイジはそう呟くと、中央の巨大なクリスタルの近くからこちらに歩いてくる人影を見つめていた。
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