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247、青と赤の光
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「ええ、そうみたいですね」
通路の先から現れる者達を眺めながら、エイジはエリクの言葉に頷いた。
オリビアは『ソード・オブ・エンジェル』を鞘にしまいながら──。
「アンジェ、ライアン、武器はしまって頂戴。エリク先輩にそう言われたはずよ」
ライアンもアンジェも、渋々ながらその言葉に従う。
「ちっ、まだ相手が好意的かもわからねえのに、大丈夫かよ?」
「ほんとよ、ライアンもたまにはいいこと言うじゃない」
「おい、たまにはねえだろアンジェ」
小さい声で言い合いをする二人を、オリビアが諫める。
「いい加減にしなさい。面倒なことになるのは御免よ」
まだ不満そうなライアン。
そしてツンとした顔をしながらもオリビアに従うアンジェ。
そんな二人にエリクが言った。
「彼らはある程度こちらの思考や心が読めるんですよ。ですから敵意を抱いて向き合うのは得策ではありません」
なるほど、とうなずくライアンとアンジェ。
一方で、エリスとリアナは前からやってくる者達に興味津々の様子だ。
「へえ、綺麗な光ね」
「ええ、本当に。透き通って見えるわ、どうなってるのかしら?」
こちらにやってくる者達を眺めながらそう話す二人。
前方からやってきたのは、二筋の光だ。
一方は赤、一方は青。
まるで風にたなびく長い布のような動きでひらひらとやってくる二つの発光体。
通路は広く天井も高い。
距離を取り上空をクルクルと回りながらこちらを観察しているように見える。
リアナが言うように半透明で実体というよりは霊体に近い存在に見える。
「これが精霊族……」
リアナは上を見上げながらそう呟いた。
エリクは頷いた。
「ええ、その姿は色々ですけどね。中には凄まじい力を持った者もいますから」
その言葉にエイジは思い出す。
(精霊かぁ、炎の精霊とか水の精霊とか俺がやってたMMOでも出てきたけどさ、現実にこうやって見てみると凄く綺麗だな)
エイジがそんなことを考えていると、クルクルと上空を回る二筋の光から笑い声のようなものが聞こえてくる。
エリクはそれを聞いてほぉと感心した様に。
「珍しいですね。とても喜んでいる様子です、リカルドさんと来た時もよく似た反応をしていますから」
「へえ、そうなんですね。通してくれるように頼めればいいですけど」
エイジのその言葉に、エリクは肩をすくめると答えた。
「残念ながら、私たち人間には彼らの言葉が分かりませんからね。気に入らなければ追い返されるか、番人をけしかけられるでしょう。もし気に入られれば彼らの住処を通してくれるはずです」
オリビアが頷きながら言った。
「中には精霊使いって呼ばれる特殊な人間もいなくはないわ。精霊の言語を理解して彼らとともに戦う。言ってみれば、通常の魔道士とは全く違う体系の魔法使いね」
「へえ、精霊使いか」
ゲームでも普通の魔道士じゃなくて、精霊を召喚して戦うような職業もあるからな。
あんな感じだろうか。
エイジはオリビアに尋ねる。
「でもさ、精霊が作った魔具や装飾品を買いに来る人間もいるって言ってただろ?」
「ええ、ほんの少しだけど彼らの中にも人の言葉が話せる者がいるのよ。代金はお金じゃないけどね。貴重な金属や宝石、後は特別な装備品とかも好まれるらしいわ」
「へえ、そうなんだな」
エイジが感心した様にそう話していると、青い光がエイジの体にまとわりつくようにと飛び始める。
淡い青そして濃い青、それが微妙なグラデーションをつけながら揺れ動くような光景。
それは幻想的でエイジは思わず見とれてしまう。
(うわ……近くで見ると本当に綺麗だな)
まさにファンタジーという感じだ。
魔法もない世界から来たエイジにとっては驚きの光景である。
その光はすっとエイジの顔を覗き込む。
光の先が小さな妖精ぐらいのサイズの人の形を作り出す。
可愛らしい少女の姿。
笑い声を上げながら、エイジの顔の傍をクルクルと回っている。
『ねえ、凄く綺麗ですって。こいつ、人間にしては素直じゃない?』
どうやら、エリクが言うようにこちらの考えていることが分かるようだ。
エイジは悪戯っぽく笑うその少女が、自分の肩にとまるのを見た。
警戒をしているのか、まだ近づいてこない赤い精霊に話しかけている。
一方で青い精霊は妖精のような姿になって肩に腰を掛けると、エイジの顔を眺めている。
(おお! 凄いな。人の形になったぞ。それに、この子は人間の言葉が喋れるみたいだ)
さっきオリビアもそう言っていたからな、とエイジは思う。
そして、自分の肩にとまってる精霊を興味深そうに見つめているリアナたちに言った。
「なあみんな、この精霊は人間の言葉が話せるみたいだぜ。そうだ! エリクさん、この子に通してもらえるように頼んでみませんか?」
エイジの言葉にエリクもリアナは首を傾げる。
「エイジ?」
「何を言ってるの、エイジ。どうしてそんなことが分かるの?」
「え? だってさ、今この子、人間の言葉を話だろ?」
首を横に振るパーティメンバーたち。
どうやら彼女の言葉が理解できたのは自分だけのようだ、とエイジは気付いた。
(まてよ……もしかしてこれって女神の加護のせいか!?)
メルティから貰った加護を説明してくれた天使たちが言っていたことをエイジは思い出す。
「言語理解は、その名の通り、全ての言語を理解できる力です」と。
(ってことは、もしかしてこちらからも話せたり……)
エイジは咳払いすると。
『あ、あのさ。君、俺が言っていること分かるかな?』
まるで頭の中に翻訳機があるように、スラスラと精霊の言葉が頭に浮かぶ。
青い光を帯びた精霊の少女は、ビクッとした顔でエイジを見つめた。
『うそ! あんた精霊使いなの? なら最初からそう言いなさいよ』
通路の先から現れる者達を眺めながら、エイジはエリクの言葉に頷いた。
オリビアは『ソード・オブ・エンジェル』を鞘にしまいながら──。
「アンジェ、ライアン、武器はしまって頂戴。エリク先輩にそう言われたはずよ」
ライアンもアンジェも、渋々ながらその言葉に従う。
「ちっ、まだ相手が好意的かもわからねえのに、大丈夫かよ?」
「ほんとよ、ライアンもたまにはいいこと言うじゃない」
「おい、たまにはねえだろアンジェ」
小さい声で言い合いをする二人を、オリビアが諫める。
「いい加減にしなさい。面倒なことになるのは御免よ」
まだ不満そうなライアン。
そしてツンとした顔をしながらもオリビアに従うアンジェ。
そんな二人にエリクが言った。
「彼らはある程度こちらの思考や心が読めるんですよ。ですから敵意を抱いて向き合うのは得策ではありません」
なるほど、とうなずくライアンとアンジェ。
一方で、エリスとリアナは前からやってくる者達に興味津々の様子だ。
「へえ、綺麗な光ね」
「ええ、本当に。透き通って見えるわ、どうなってるのかしら?」
こちらにやってくる者達を眺めながらそう話す二人。
前方からやってきたのは、二筋の光だ。
一方は赤、一方は青。
まるで風にたなびく長い布のような動きでひらひらとやってくる二つの発光体。
通路は広く天井も高い。
距離を取り上空をクルクルと回りながらこちらを観察しているように見える。
リアナが言うように半透明で実体というよりは霊体に近い存在に見える。
「これが精霊族……」
リアナは上を見上げながらそう呟いた。
エリクは頷いた。
「ええ、その姿は色々ですけどね。中には凄まじい力を持った者もいますから」
その言葉にエイジは思い出す。
(精霊かぁ、炎の精霊とか水の精霊とか俺がやってたMMOでも出てきたけどさ、現実にこうやって見てみると凄く綺麗だな)
エイジがそんなことを考えていると、クルクルと上空を回る二筋の光から笑い声のようなものが聞こえてくる。
エリクはそれを聞いてほぉと感心した様に。
「珍しいですね。とても喜んでいる様子です、リカルドさんと来た時もよく似た反応をしていますから」
「へえ、そうなんですね。通してくれるように頼めればいいですけど」
エイジのその言葉に、エリクは肩をすくめると答えた。
「残念ながら、私たち人間には彼らの言葉が分かりませんからね。気に入らなければ追い返されるか、番人をけしかけられるでしょう。もし気に入られれば彼らの住処を通してくれるはずです」
オリビアが頷きながら言った。
「中には精霊使いって呼ばれる特殊な人間もいなくはないわ。精霊の言語を理解して彼らとともに戦う。言ってみれば、通常の魔道士とは全く違う体系の魔法使いね」
「へえ、精霊使いか」
ゲームでも普通の魔道士じゃなくて、精霊を召喚して戦うような職業もあるからな。
あんな感じだろうか。
エイジはオリビアに尋ねる。
「でもさ、精霊が作った魔具や装飾品を買いに来る人間もいるって言ってただろ?」
「ええ、ほんの少しだけど彼らの中にも人の言葉が話せる者がいるのよ。代金はお金じゃないけどね。貴重な金属や宝石、後は特別な装備品とかも好まれるらしいわ」
「へえ、そうなんだな」
エイジが感心した様にそう話していると、青い光がエイジの体にまとわりつくようにと飛び始める。
淡い青そして濃い青、それが微妙なグラデーションをつけながら揺れ動くような光景。
それは幻想的でエイジは思わず見とれてしまう。
(うわ……近くで見ると本当に綺麗だな)
まさにファンタジーという感じだ。
魔法もない世界から来たエイジにとっては驚きの光景である。
その光はすっとエイジの顔を覗き込む。
光の先が小さな妖精ぐらいのサイズの人の形を作り出す。
可愛らしい少女の姿。
笑い声を上げながら、エイジの顔の傍をクルクルと回っている。
『ねえ、凄く綺麗ですって。こいつ、人間にしては素直じゃない?』
どうやら、エリクが言うようにこちらの考えていることが分かるようだ。
エイジは悪戯っぽく笑うその少女が、自分の肩にとまるのを見た。
警戒をしているのか、まだ近づいてこない赤い精霊に話しかけている。
一方で青い精霊は妖精のような姿になって肩に腰を掛けると、エイジの顔を眺めている。
(おお! 凄いな。人の形になったぞ。それに、この子は人間の言葉が喋れるみたいだ)
さっきオリビアもそう言っていたからな、とエイジは思う。
そして、自分の肩にとまってる精霊を興味深そうに見つめているリアナたちに言った。
「なあみんな、この精霊は人間の言葉が話せるみたいだぜ。そうだ! エリクさん、この子に通してもらえるように頼んでみませんか?」
エイジの言葉にエリクもリアナは首を傾げる。
「エイジ?」
「何を言ってるの、エイジ。どうしてそんなことが分かるの?」
「え? だってさ、今この子、人間の言葉を話だろ?」
首を横に振るパーティメンバーたち。
どうやら彼女の言葉が理解できたのは自分だけのようだ、とエイジは気付いた。
(まてよ……もしかしてこれって女神の加護のせいか!?)
メルティから貰った加護を説明してくれた天使たちが言っていたことをエイジは思い出す。
「言語理解は、その名の通り、全ての言語を理解できる力です」と。
(ってことは、もしかしてこちらからも話せたり……)
エイジは咳払いすると。
『あ、あのさ。君、俺が言っていること分かるかな?』
まるで頭の中に翻訳機があるように、スラスラと精霊の言葉が頭に浮かぶ。
青い光を帯びた精霊の少女は、ビクッとした顔でエイジを見つめた。
『うそ! あんた精霊使いなの? なら最初からそう言いなさいよ』
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