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2巻
2-3
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「アルドリアの勇者だか何だか知らないが、男なら俺と剣で勝負しろ!! 俺に勝ったらお前を認めてやる!!」
俺は、シロウと呼ばれた青年が受け取りを強要する剣を手に取る。
(へえ、これはまるで日本刀だな)
黒く美しい鞘の形は、まさしく日本刀のそれである。
このやり取りを見て、アンファルの武者達がどよめいた。
「おお! 勇者殿が、シロウ様からの決闘の申し出を受けられたぞ!!」
ヨアンが俺の肩を掴んで叫んだ。
「馬鹿! ハルヒコ、何故受け取る!! アンファルの男は、決闘を申し出た相手が己の剣を受け取れば、相手を倒すか自分が倒れるまで戦わなくてはならない。それはたとえ、どちらかが死んだとしてもな!」
俺は軽く肩をすくめた。あんなに鬼気迫る形相で剣を突き出していたので、嫌な予感はしたのだが。まあ、もはや後の祭りか。
「お兄ちゃん!」
リーアが心配そうに俺を見上げている。俺はその銀色の髪を撫でた。
「心配するな、リーア。何とかなるさ」
どうせ受け取らなければ、こいつは納得しないだろう。なら結局、同じことだ。口で言っても駄目なら力で示すしかない。
「舐めるなよ、俺のことを! 俺には半分獣人族の血が混ざっている。俺の動きを見切れるのは、アンファルでも父上と姉上ぐらいだ!」
少しとがった耳と精悍な瞳。
言われてみると、確かに普通の人間とは違う。
(なるほどな。アルドリアの地下書庫で読んだ本で存在だけは知っていたが、これが獣人ってやつか?)
正確には人間とのハーフなのだろうが、どうせ獣人に会う機会があるのなら、もっとこう、耳がフサフサとした美女に会いたいものだと思った。獣人の女の耳をモフモフするとか、やはりそれは男の夢の一つである。
俺はふとヨアンの姿を眺めた。アンファルの民独特の東洋的な美しさを持つヨアンの耳はごく一般的な形をしている。つまり、母親が異なるのだろう。
「な、何だハルヒコ? 何故、そんなに私を見つめる?」
ヨアンが少し頬を赤らめる。
その瞬間、ミルファールが俺の体から飛び出し嬉々として宣言した。
「私が、お答えしましょう!」
おいやめろ。
お前が妙な説明をすれば、いつもろくなことにならない。
「妖精さん!!」
リーアが両手を差し出すと、ミルファールは軽やかにその上に腰を下ろす。
そして、ミルファールは、こほんと咳払いをして言った。
「ハルヒコさんは今、ヨアンさんの耳が犬か猫のようにフサフサとしていれば、モフモフしたい。そう思っていました!」
「妖精さん、モフモフって何ですか?」
俺はゆっくりとその場を逃げ出そうとする。ところが――。
「どこへ行く? ハルヒコ」
振り返った俺の目の前には、アイリーネの手を引いてやって来たルビアが立ち塞がっていた。俺の後ろでは、ミルファールがリーアにモフモフについて身振り手振りを交えた熱心な説明をしている。
その側で話を聞いていたヨアンの顔が、みるみるうちに真っ赤になっていく。
「な! な!! 何を考えているハルヒコ、貴様!!」
「……お兄ちゃん、最低です」
リーアの声が厳しい。
「貴様は、どうしてそう手当たり次第に!!」
ルビアが剣を抜きかけた瞬間、黒い影が稲妻のように俺に向かって来た。
ヒュン!
空気を切り裂く音がして、俺の鼻先を剣が掠めた。シロウはそのまま、手に持った剣の切っ先を俺に突きつける。獣人族の血が混ざった青年の瞳は、怒りの色で染まっていた。
「この獣め! お前はこの俺がぶちのめす!!」
事態を悪化させるようなミルファールの熱弁とゼスチャーがまだ続いている以上、俺に反論の権利はなさそうだ。
周囲には騒ぎを聞きつけた多くの兵士達が集まって来ている。
「どうした? 何があったんだ」
「なんでも、アンファル王国の王子がアルドリアの勇者殿に決闘を挑んだらしいぞ」
城門の辺りだけでなく、城壁の上からも沢山の兵士達が注目の視線を浴びせている。
「本当か? 俺も見てみたい! あのアルースの奇跡を起こした軍師殿の戦いを」
「しかし、軍師殿は戦士ではあるまい。先ほどのアンファルの王子の動きは尋常でない速さだったぞ!」
確かにシロウの動きは速かった。獣人族の血が成せる技なのだろうか。
まあ、難しく考えても仕方がない。こうなった以上、けりをつけるしかないだろう。
俺は跳ね橋の上でシロウと対峙した。
「姉上は幼い頃、母を亡くした俺にいつも優しくしてくれた。獣人の血が混ざっていた俺を蔑む連中から守り、こう言ってくれた。お前には誇り高いアンファルの血と、そしてお前を誰よりも愛した母の血が流れているのだと。だから決して俯くな、と」
確かにヨアンならそう言うだろう。
「姉上は俺の誇りだ。このアンファルの誇りだ。お前のような奴に、姉上を任せられるか!!」
ミルファールが俺の肩の上に止まって、罪のない顔で平然と尋ねた。
「どうするんですか? ハルヒコさん」
このヤロー……。
どうするも何も、お前のせいでもう選択肢はないと思うんだが。
それに、ゲーマーとしての血も騒ぐ。
「いいぜ、かかってきな。どうせ言葉で何を言っても、お前は納得しないんだろう?」
ヨアンが顔色を変える。
「何を言っている! シロウは、まだ年は十六だが、アンファルの黒い狼と呼ばれる剣士だ! いくらハルヒコがグフールを倒した腕前といっても、スピードだけならシロウが上だ! 決闘など危険すぎる!!」
ヨアンは狼狽して、ルビアの腕を掴んだ。
「やめさせろ! お前の言うことなら、ハルヒコも聞くだろう?」
ブロンドの美しい騎士は、ヨアンの言葉をやんわりと断った。
「ハルヒコがやると言うのだから、私は止めるつもりはない。止めたいならお前が止めればいい」
ヨアンは、側に立つリーアの手を握る。
「リーア! やめさせてくれ。もし、ハルヒコが大怪我でもしたら私は……」
リーアは少し不安げではあるが、ヨアンを見返して言った。
「ルビアがそう言うなら、私も止めません。お兄ちゃんを信じます」
ヨアンの肩を男の手が掴む。
アンファルの国王、ロウガ・アルリードである。
「父上! シロウを止めてください!! ハルヒコはアンファルの恩人、それをあいつは!!」
ロウガは娘の瞳を静かに覗き込んだ。
多くのアンファルの民も、ヨアンとロウガのやり取りを窺っている。
「ヨアン、わしも見てみたいのだ。アルドリアの勇者と呼ばれる男が、どれほどの男なのか。我らは誇り高い剣士の一族。それを統べるだけの力を持ったお方なのか、皆も確かめたいと思っておる」
国王であるロウガの言葉に、アンファルの民は皆一様に頷いた。
ヨアンは唇を噛んで叫んだ。
「もういい! 私が二人を止める!! こんな戦いに意味などない!!」
跳ね橋の上で向かい合う俺達に詰め寄ろうとするヨアンを、ルビアが制した。
「やめておけ。あいつが戦うと決めたのだ。何か意味があるのだろう」
ヨアンがルビアに反論する。
「だが、あいつは剣士ではない! シロウが、あいつを殺しでもしたら私は!!」
ヨアンは、言葉では言い表せない恐怖を覚えている自分に不思議な違和感を覚えた。確かに自分は恐怖を感じている。
もしも、目の前の男が死んでしまったら、と。――あの時のように。
(私は……。この気持ちは何だ……。そんなはずがない)
ルビアは、落ち着いた調子でヨアンに声をかける。
「強いぞ、ハルヒコは。いつもふざけてはいるが、本気になったあいつは強い。私でも勝てぬほどに……」
そして、美しい戦女神はアルースでの戦いを思い出しながら瞳を閉じる。
「グフールを倒した時のハルヒコの動きで、私は確信した。あいつは自分でも気がついていないのだろうが、おそらく『魔眼』の使い手だ。私はそう信じている」
ルビアの言葉にヨアンは驚いたように目を見開いた。
「『魔眼』だと? 古の勇者や英雄達が持っていたという、あの不思議な力を発揮する瞳のことか? まさか……、そんなのはただの御伽噺だろう?」
俺は城塞都市ラハンに通じる跳ね橋の中央にいる。目の前には、殺気立ったアンファルの王子シロウが闘志を剥き出しにしていた。
「早く剣を抜け、この臆病者め! この期に及んで怖くなったのか!!」
俺は肩をすくめてシロウを挑発した。
「吠えてないで、さっさとかかってこい。それぐらい、おまけをしてやるよ」
俺の言葉が決闘を開始する合図となったらしい。躊躇いもなくシロウが俺の間合いに飛び込んで来る。まるで残像にも似た打ち込みが、上下左右から執拗に俺の体に襲い掛かってきた。
凄まじい剣のスピードだった。速さだけならば、確かにグフールよりも数段上だろう。
「喰らえ!! 百牙獣影剣!!」
俺達の戦いを観戦している兵士達から、どよめきの声が上がる。
「「「おおお!! あれを見ろ。何と、凄まじい突きだ!!」」」
俺の視界を、無数の突きが埋め尽くす。シロウの剣技が恐ろしいほどの速さで繰り出されていた。その剣速は、ルビアやヨアンに匹敵するかもしれない。
避けきれずに浅く切り裂かれた俺の頬から、わずかだが血しぶきが飛ぶ。
ヨアンがあれだけ心配するだけあって、こいつは危険な相手だ。
「ハルヒコ!!」
ヨアンの叫び声が耳に届いた。
(集中しろ)
俺はその突きをギリギリのところでかわしながら、自分にそう言い聞かせた。命を秤に載せて戦うゲームほど面白いものはない。久々に俺のゲーマーとしての神経が張り詰める。
俺は視覚に神経を集中させた。
ゲーマー時代、俺の目はワンフレームつまり六十分の一秒まではっきりと捉えることが出来た。さらに今となっては、ミルファールが俺の身体能力を限界まで引き出してくれている。それが根拠となっているせいか分からないが、不思議な自信で満ちていた。
俺はさらに意識を研ぎ澄まし、全身の感覚を冴えわたらせていく。
「俺の勝ちだ!!」
半獣人の剣士が快哉を叫んだ刹那、剣を構え直した一瞬の中で俺には見えた。まるで未来を予知するかのように、シロウがこれから繰り出すであろう無数の斬撃が――。
(これは、何だ!?)
考えている暇はなかった。俺はシロウの斬撃をすり抜けるように体を動かしていき、シロウの視界から消えた。少なくともシロウにはそう見えたことだろう。
稲妻のようなシロウの無数の刃が俺の残像を切り裂いた瞬間、俺はいつの間にかシロウの背後にいた。
そして、その首筋を手刀で薙ぐ。
「何!! うぁ……。ぐぅう」
よろめいたシロウは、そのまま跳ね橋の板に膝を突いた。
集まった観衆が静まり返る。
「何だ、今のは! い、一体何が起きたんだ!? あの凄まじい突きを勇者殿がすり抜けたように見えたぞ!」
ヨアンが目を大きく見開く。
「……強い、そんな……。シロウがまるで子供扱いだ」
跳ね橋の上をふらふらと歩くアンファルの王子は、やがて力尽きたかのように、その場に崩れ落ちて動かなくなった。
「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
観戦者達の叫び声が辺りを包み込んだ。
「あれがアルドリアの勇者か。軍師だと聞いていたが、とんでもない強さだぞ!!」
「一体、ルビア様と、どちらが強いんだ? とにかくすげえ!!」
戦いが終わり、一息ついている俺の方へヨアンが歩いて来た。少し俺を睨むように見ている。
「お前は意地が悪い……。これほど力量に差があるなら、初めから私に教えてくれていれば要らぬ心配などしなかったものを……」
「いや、強かったさこいつは。本当だ」
一体あれは何だったのか?
一瞬視界に飛び込んで来たあれは、限界まで高めた集中力が見せた幻だったのか?
俺は少し目の奥に鈍い痛みを感じた。
「お兄ちゃん!」
リーアが、俺に抱きついて来て安堵の吐息を漏らす。
ヨアンが、シロウを抱え上げて揺り起こした。
「ぐぅう……。まだだ……。まだ俺は戦える……!」
そう言って俺を睨みつける弟を、姉は抱き締める。
「もういい、シロウ。お前はよく戦った」
シロウの瞳から涙が零れ落ちた。純粋無垢な子供のように、ボロボロと涙を溢れさせている。
「俺は、姉上が心配なんだ……。姉上が、美しい姉上の顔にこんな傷が……。俺がもっと強ければ、姉上をドルメールになんて渡したりしなかった!」
ヨアンは、シロウの髪を優しく撫でながら自らの思いを伝える。
「シロウ、どうか受け入れてくれ、今の私を。これが私なのだ。決して後悔などしてはいない」
ヨアンは俺を見ると、シロウの手を握り締めた。
「この男は、初めて私に言ってくれた。この傷は私が私らしく生きた証なのだと。この傷を含めて私なのだと」
そして、リーアの方へと振り返る。
「リーアは泣いてくれた、私は愚かではないと。皆のことを、そしてミアトのことを愛しただけだと。シロウ、私は戦いたいのだ。私の心を、我が祖国アンファルを救ってくれたあの二人のために、この命を燃やして」
誇り高く美しい姉の笑顔を、シロウは見上げた。
「姉上……」
シロウは、美しい姉の胸に顔を埋めて泣いている。
男が一人、俺の側に歩いて来た。アンファルの王ロウガである。ロウガは俺の前に膝を屈すると、礼をして宣言した。
「見事だ。恐れも迷いもない王者の瞳を持つ男よ。我がアンファルは、揺るぎない忠誠を貴方に誓おう」
第二話 獣人の王国
「みゅうう! 喰らうです! ひゃくがじゅうえいけんです!!」
そう言って後ろから突っ込んで来た少女を、俺はひらりとかわす。
ずべっと転んだ少女の大きな瞳に涙が浮かんだ。年齢はまだ三歳ぐらいだろうか。
「おいおい、いきなり何なんだ?」
俺達が今いるのは、アンファルの人々のために用意された宿舎である。
アンファルの国王ロウガと新生ドラグリア王国の女王アイリーネの間で無事に同盟の調印が終わったため、少し寛いだ雰囲気となり、皆で談笑している最中だった。
リーアが床に転んだ少女を抱き起こし頭を撫でた。
白いフサフサした毛並み。頭にはピコンと立った大きな耳がついていた。つまり獣人族なのだ。あっけなく倒され、涙に潤んだ可愛らしい目で俺を見上げている。
「シロウ兄たんをいじめたです! ミュウがやっつけるです!!」
どうやら、俺がシロウを倒したのが気に入らないらしい。
その姿を見て、リーアとアイリーネが目を輝かせている。
「リーアさん、何なんですか、この子! 可愛すぎます!!」
「ええ、アイリーネさん、連れて帰りたいぐらいです!!」
そこへ獣人の母子が慌ててやって来た。
「こら! ミュウ! 勇者様に何をしているの!! 勇者様はアンファルにとって恩人なのよ。勇者様、私はエハル。白狼族の長老の娘です」
そう名乗ると、エハルはリーアが抱いているミュウを叱りつけた。
隣の女の子はミュウの姉だろうか。七歳ぐらいの幼い少女だが、いかにもしっかり者といった雰囲気である。
「私は姉のリンと申します。勇者様、ミュウが失礼をしました。どうかお許しください」
母と姉に叱られてミュウは涙を浮かべる。
「ミュウ悪くないです! シロウ兄たま優しいです。ミュウ大好きです」
俺は苦笑してミュウの頭を撫でた。
「ああ、気にするな。ミュウ、シロウは強かったぞ。お前が大好きな奴なだけはあるな」
ミュウはそれを聞いて嬉しそうな笑顔になる。
「シロウ兄たま、強いです! ミュウをいつも可愛がってくれるです」
(へえ……、あいつ、なかなかいいところもあるんだな)
ただのケモ耳のシスコンではないようだ。
肝心のシロウは、調印式が終わると剣の修練をすると言ってすぐに出て行ってしまい、ここにはいないのだが。というのは、どうやら俺に負けたのがよほど腹に据えかねたらしい。個人的には、ああいう一本気で負けず嫌いな奴は嫌いではなかった。
俺は、シロウと呼ばれた青年が受け取りを強要する剣を手に取る。
(へえ、これはまるで日本刀だな)
黒く美しい鞘の形は、まさしく日本刀のそれである。
このやり取りを見て、アンファルの武者達がどよめいた。
「おお! 勇者殿が、シロウ様からの決闘の申し出を受けられたぞ!!」
ヨアンが俺の肩を掴んで叫んだ。
「馬鹿! ハルヒコ、何故受け取る!! アンファルの男は、決闘を申し出た相手が己の剣を受け取れば、相手を倒すか自分が倒れるまで戦わなくてはならない。それはたとえ、どちらかが死んだとしてもな!」
俺は軽く肩をすくめた。あんなに鬼気迫る形相で剣を突き出していたので、嫌な予感はしたのだが。まあ、もはや後の祭りか。
「お兄ちゃん!」
リーアが心配そうに俺を見上げている。俺はその銀色の髪を撫でた。
「心配するな、リーア。何とかなるさ」
どうせ受け取らなければ、こいつは納得しないだろう。なら結局、同じことだ。口で言っても駄目なら力で示すしかない。
「舐めるなよ、俺のことを! 俺には半分獣人族の血が混ざっている。俺の動きを見切れるのは、アンファルでも父上と姉上ぐらいだ!」
少しとがった耳と精悍な瞳。
言われてみると、確かに普通の人間とは違う。
(なるほどな。アルドリアの地下書庫で読んだ本で存在だけは知っていたが、これが獣人ってやつか?)
正確には人間とのハーフなのだろうが、どうせ獣人に会う機会があるのなら、もっとこう、耳がフサフサとした美女に会いたいものだと思った。獣人の女の耳をモフモフするとか、やはりそれは男の夢の一つである。
俺はふとヨアンの姿を眺めた。アンファルの民独特の東洋的な美しさを持つヨアンの耳はごく一般的な形をしている。つまり、母親が異なるのだろう。
「な、何だハルヒコ? 何故、そんなに私を見つめる?」
ヨアンが少し頬を赤らめる。
その瞬間、ミルファールが俺の体から飛び出し嬉々として宣言した。
「私が、お答えしましょう!」
おいやめろ。
お前が妙な説明をすれば、いつもろくなことにならない。
「妖精さん!!」
リーアが両手を差し出すと、ミルファールは軽やかにその上に腰を下ろす。
そして、ミルファールは、こほんと咳払いをして言った。
「ハルヒコさんは今、ヨアンさんの耳が犬か猫のようにフサフサとしていれば、モフモフしたい。そう思っていました!」
「妖精さん、モフモフって何ですか?」
俺はゆっくりとその場を逃げ出そうとする。ところが――。
「どこへ行く? ハルヒコ」
振り返った俺の目の前には、アイリーネの手を引いてやって来たルビアが立ち塞がっていた。俺の後ろでは、ミルファールがリーアにモフモフについて身振り手振りを交えた熱心な説明をしている。
その側で話を聞いていたヨアンの顔が、みるみるうちに真っ赤になっていく。
「な! な!! 何を考えているハルヒコ、貴様!!」
「……お兄ちゃん、最低です」
リーアの声が厳しい。
「貴様は、どうしてそう手当たり次第に!!」
ルビアが剣を抜きかけた瞬間、黒い影が稲妻のように俺に向かって来た。
ヒュン!
空気を切り裂く音がして、俺の鼻先を剣が掠めた。シロウはそのまま、手に持った剣の切っ先を俺に突きつける。獣人族の血が混ざった青年の瞳は、怒りの色で染まっていた。
「この獣め! お前はこの俺がぶちのめす!!」
事態を悪化させるようなミルファールの熱弁とゼスチャーがまだ続いている以上、俺に反論の権利はなさそうだ。
周囲には騒ぎを聞きつけた多くの兵士達が集まって来ている。
「どうした? 何があったんだ」
「なんでも、アンファル王国の王子がアルドリアの勇者殿に決闘を挑んだらしいぞ」
城門の辺りだけでなく、城壁の上からも沢山の兵士達が注目の視線を浴びせている。
「本当か? 俺も見てみたい! あのアルースの奇跡を起こした軍師殿の戦いを」
「しかし、軍師殿は戦士ではあるまい。先ほどのアンファルの王子の動きは尋常でない速さだったぞ!」
確かにシロウの動きは速かった。獣人族の血が成せる技なのだろうか。
まあ、難しく考えても仕方がない。こうなった以上、けりをつけるしかないだろう。
俺は跳ね橋の上でシロウと対峙した。
「姉上は幼い頃、母を亡くした俺にいつも優しくしてくれた。獣人の血が混ざっていた俺を蔑む連中から守り、こう言ってくれた。お前には誇り高いアンファルの血と、そしてお前を誰よりも愛した母の血が流れているのだと。だから決して俯くな、と」
確かにヨアンならそう言うだろう。
「姉上は俺の誇りだ。このアンファルの誇りだ。お前のような奴に、姉上を任せられるか!!」
ミルファールが俺の肩の上に止まって、罪のない顔で平然と尋ねた。
「どうするんですか? ハルヒコさん」
このヤロー……。
どうするも何も、お前のせいでもう選択肢はないと思うんだが。
それに、ゲーマーとしての血も騒ぐ。
「いいぜ、かかってきな。どうせ言葉で何を言っても、お前は納得しないんだろう?」
ヨアンが顔色を変える。
「何を言っている! シロウは、まだ年は十六だが、アンファルの黒い狼と呼ばれる剣士だ! いくらハルヒコがグフールを倒した腕前といっても、スピードだけならシロウが上だ! 決闘など危険すぎる!!」
ヨアンは狼狽して、ルビアの腕を掴んだ。
「やめさせろ! お前の言うことなら、ハルヒコも聞くだろう?」
ブロンドの美しい騎士は、ヨアンの言葉をやんわりと断った。
「ハルヒコがやると言うのだから、私は止めるつもりはない。止めたいならお前が止めればいい」
ヨアンは、側に立つリーアの手を握る。
「リーア! やめさせてくれ。もし、ハルヒコが大怪我でもしたら私は……」
リーアは少し不安げではあるが、ヨアンを見返して言った。
「ルビアがそう言うなら、私も止めません。お兄ちゃんを信じます」
ヨアンの肩を男の手が掴む。
アンファルの国王、ロウガ・アルリードである。
「父上! シロウを止めてください!! ハルヒコはアンファルの恩人、それをあいつは!!」
ロウガは娘の瞳を静かに覗き込んだ。
多くのアンファルの民も、ヨアンとロウガのやり取りを窺っている。
「ヨアン、わしも見てみたいのだ。アルドリアの勇者と呼ばれる男が、どれほどの男なのか。我らは誇り高い剣士の一族。それを統べるだけの力を持ったお方なのか、皆も確かめたいと思っておる」
国王であるロウガの言葉に、アンファルの民は皆一様に頷いた。
ヨアンは唇を噛んで叫んだ。
「もういい! 私が二人を止める!! こんな戦いに意味などない!!」
跳ね橋の上で向かい合う俺達に詰め寄ろうとするヨアンを、ルビアが制した。
「やめておけ。あいつが戦うと決めたのだ。何か意味があるのだろう」
ヨアンがルビアに反論する。
「だが、あいつは剣士ではない! シロウが、あいつを殺しでもしたら私は!!」
ヨアンは、言葉では言い表せない恐怖を覚えている自分に不思議な違和感を覚えた。確かに自分は恐怖を感じている。
もしも、目の前の男が死んでしまったら、と。――あの時のように。
(私は……。この気持ちは何だ……。そんなはずがない)
ルビアは、落ち着いた調子でヨアンに声をかける。
「強いぞ、ハルヒコは。いつもふざけてはいるが、本気になったあいつは強い。私でも勝てぬほどに……」
そして、美しい戦女神はアルースでの戦いを思い出しながら瞳を閉じる。
「グフールを倒した時のハルヒコの動きで、私は確信した。あいつは自分でも気がついていないのだろうが、おそらく『魔眼』の使い手だ。私はそう信じている」
ルビアの言葉にヨアンは驚いたように目を見開いた。
「『魔眼』だと? 古の勇者や英雄達が持っていたという、あの不思議な力を発揮する瞳のことか? まさか……、そんなのはただの御伽噺だろう?」
俺は城塞都市ラハンに通じる跳ね橋の中央にいる。目の前には、殺気立ったアンファルの王子シロウが闘志を剥き出しにしていた。
「早く剣を抜け、この臆病者め! この期に及んで怖くなったのか!!」
俺は肩をすくめてシロウを挑発した。
「吠えてないで、さっさとかかってこい。それぐらい、おまけをしてやるよ」
俺の言葉が決闘を開始する合図となったらしい。躊躇いもなくシロウが俺の間合いに飛び込んで来る。まるで残像にも似た打ち込みが、上下左右から執拗に俺の体に襲い掛かってきた。
凄まじい剣のスピードだった。速さだけならば、確かにグフールよりも数段上だろう。
「喰らえ!! 百牙獣影剣!!」
俺達の戦いを観戦している兵士達から、どよめきの声が上がる。
「「「おおお!! あれを見ろ。何と、凄まじい突きだ!!」」」
俺の視界を、無数の突きが埋め尽くす。シロウの剣技が恐ろしいほどの速さで繰り出されていた。その剣速は、ルビアやヨアンに匹敵するかもしれない。
避けきれずに浅く切り裂かれた俺の頬から、わずかだが血しぶきが飛ぶ。
ヨアンがあれだけ心配するだけあって、こいつは危険な相手だ。
「ハルヒコ!!」
ヨアンの叫び声が耳に届いた。
(集中しろ)
俺はその突きをギリギリのところでかわしながら、自分にそう言い聞かせた。命を秤に載せて戦うゲームほど面白いものはない。久々に俺のゲーマーとしての神経が張り詰める。
俺は視覚に神経を集中させた。
ゲーマー時代、俺の目はワンフレームつまり六十分の一秒まではっきりと捉えることが出来た。さらに今となっては、ミルファールが俺の身体能力を限界まで引き出してくれている。それが根拠となっているせいか分からないが、不思議な自信で満ちていた。
俺はさらに意識を研ぎ澄まし、全身の感覚を冴えわたらせていく。
「俺の勝ちだ!!」
半獣人の剣士が快哉を叫んだ刹那、剣を構え直した一瞬の中で俺には見えた。まるで未来を予知するかのように、シロウがこれから繰り出すであろう無数の斬撃が――。
(これは、何だ!?)
考えている暇はなかった。俺はシロウの斬撃をすり抜けるように体を動かしていき、シロウの視界から消えた。少なくともシロウにはそう見えたことだろう。
稲妻のようなシロウの無数の刃が俺の残像を切り裂いた瞬間、俺はいつの間にかシロウの背後にいた。
そして、その首筋を手刀で薙ぐ。
「何!! うぁ……。ぐぅう」
よろめいたシロウは、そのまま跳ね橋の板に膝を突いた。
集まった観衆が静まり返る。
「何だ、今のは! い、一体何が起きたんだ!? あの凄まじい突きを勇者殿がすり抜けたように見えたぞ!」
ヨアンが目を大きく見開く。
「……強い、そんな……。シロウがまるで子供扱いだ」
跳ね橋の上をふらふらと歩くアンファルの王子は、やがて力尽きたかのように、その場に崩れ落ちて動かなくなった。
「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」」」
観戦者達の叫び声が辺りを包み込んだ。
「あれがアルドリアの勇者か。軍師だと聞いていたが、とんでもない強さだぞ!!」
「一体、ルビア様と、どちらが強いんだ? とにかくすげえ!!」
戦いが終わり、一息ついている俺の方へヨアンが歩いて来た。少し俺を睨むように見ている。
「お前は意地が悪い……。これほど力量に差があるなら、初めから私に教えてくれていれば要らぬ心配などしなかったものを……」
「いや、強かったさこいつは。本当だ」
一体あれは何だったのか?
一瞬視界に飛び込んで来たあれは、限界まで高めた集中力が見せた幻だったのか?
俺は少し目の奥に鈍い痛みを感じた。
「お兄ちゃん!」
リーアが、俺に抱きついて来て安堵の吐息を漏らす。
ヨアンが、シロウを抱え上げて揺り起こした。
「ぐぅう……。まだだ……。まだ俺は戦える……!」
そう言って俺を睨みつける弟を、姉は抱き締める。
「もういい、シロウ。お前はよく戦った」
シロウの瞳から涙が零れ落ちた。純粋無垢な子供のように、ボロボロと涙を溢れさせている。
「俺は、姉上が心配なんだ……。姉上が、美しい姉上の顔にこんな傷が……。俺がもっと強ければ、姉上をドルメールになんて渡したりしなかった!」
ヨアンは、シロウの髪を優しく撫でながら自らの思いを伝える。
「シロウ、どうか受け入れてくれ、今の私を。これが私なのだ。決して後悔などしてはいない」
ヨアンは俺を見ると、シロウの手を握り締めた。
「この男は、初めて私に言ってくれた。この傷は私が私らしく生きた証なのだと。この傷を含めて私なのだと」
そして、リーアの方へと振り返る。
「リーアは泣いてくれた、私は愚かではないと。皆のことを、そしてミアトのことを愛しただけだと。シロウ、私は戦いたいのだ。私の心を、我が祖国アンファルを救ってくれたあの二人のために、この命を燃やして」
誇り高く美しい姉の笑顔を、シロウは見上げた。
「姉上……」
シロウは、美しい姉の胸に顔を埋めて泣いている。
男が一人、俺の側に歩いて来た。アンファルの王ロウガである。ロウガは俺の前に膝を屈すると、礼をして宣言した。
「見事だ。恐れも迷いもない王者の瞳を持つ男よ。我がアンファルは、揺るぎない忠誠を貴方に誓おう」
第二話 獣人の王国
「みゅうう! 喰らうです! ひゃくがじゅうえいけんです!!」
そう言って後ろから突っ込んで来た少女を、俺はひらりとかわす。
ずべっと転んだ少女の大きな瞳に涙が浮かんだ。年齢はまだ三歳ぐらいだろうか。
「おいおい、いきなり何なんだ?」
俺達が今いるのは、アンファルの人々のために用意された宿舎である。
アンファルの国王ロウガと新生ドラグリア王国の女王アイリーネの間で無事に同盟の調印が終わったため、少し寛いだ雰囲気となり、皆で談笑している最中だった。
リーアが床に転んだ少女を抱き起こし頭を撫でた。
白いフサフサした毛並み。頭にはピコンと立った大きな耳がついていた。つまり獣人族なのだ。あっけなく倒され、涙に潤んだ可愛らしい目で俺を見上げている。
「シロウ兄たんをいじめたです! ミュウがやっつけるです!!」
どうやら、俺がシロウを倒したのが気に入らないらしい。
その姿を見て、リーアとアイリーネが目を輝かせている。
「リーアさん、何なんですか、この子! 可愛すぎます!!」
「ええ、アイリーネさん、連れて帰りたいぐらいです!!」
そこへ獣人の母子が慌ててやって来た。
「こら! ミュウ! 勇者様に何をしているの!! 勇者様はアンファルにとって恩人なのよ。勇者様、私はエハル。白狼族の長老の娘です」
そう名乗ると、エハルはリーアが抱いているミュウを叱りつけた。
隣の女の子はミュウの姉だろうか。七歳ぐらいの幼い少女だが、いかにもしっかり者といった雰囲気である。
「私は姉のリンと申します。勇者様、ミュウが失礼をしました。どうかお許しください」
母と姉に叱られてミュウは涙を浮かべる。
「ミュウ悪くないです! シロウ兄たま優しいです。ミュウ大好きです」
俺は苦笑してミュウの頭を撫でた。
「ああ、気にするな。ミュウ、シロウは強かったぞ。お前が大好きな奴なだけはあるな」
ミュウはそれを聞いて嬉しそうな笑顔になる。
「シロウ兄たま、強いです! ミュウをいつも可愛がってくれるです」
(へえ……、あいつ、なかなかいいところもあるんだな)
ただのケモ耳のシスコンではないようだ。
肝心のシロウは、調印式が終わると剣の修練をすると言ってすぐに出て行ってしまい、ここにはいないのだが。というのは、どうやら俺に負けたのがよほど腹に据えかねたらしい。個人的には、ああいう一本気で負けず嫌いな奴は嫌いではなかった。
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