追放王子の英雄紋! 追い出された元第六王子は、実は史上最強の英雄でした

雪華慧太

文字の大きさ
上 下
66 / 91
5巻

5-2

しおりを挟む
 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


 目の前で繰り広げられるレディンとジークたちの攻防。そんな中、傷ついていく主の姿を見て、フレアとシルフィ、そしてエルフィウスの使い魔である神獣しんじゅうオベルティアスは叫んだ。

「ジーク!!」
「アクアリーテ!」
「主よ!!」

 これまでの戦いの中で深手を負ったオベルティアスだが、アクアリーテの力でなんとか戦えるほどに回復をしたようだ。
 それは神獣と呼ばれる存在だからこその生命力と言えるだろう。
 フレアは唇を噛む。

(なんて戦いなの。今、私が行ってもジークの力になれないかもしれない……だけど!!)

 地下での戦いで凄まじい力を発現するほど成長したフレアでさえ、今の四英雄たちには遠く及ばない。
 その中心にいるのはやはりジークだ。
 人の子でありながら二つの紋章を身に宿すほどの魂の力。彼の魂に共鳴するかのようにアクアリーテやエルフィウスの力も限界を超えて高まっている。
 二千年前のレディンならば確実に倒すことが出来ただろう。
 だが、今彼らが死闘を繰り広げているのは、以前とは比べ物にならない相手だ。
 次第に傷ついていくジークの姿を見て、フレアは胸が締め付けられる。

(ジークはいつだって私と一緒にいてくれた。楽しい時も、そして悲しい時も……)

 独りぼっちだった自分の手を握ってくれた母のほむら。そしてほむらが命を落とした後、その手を握ってくれたのはジークだ。

「ジーク、貴方を死なせたりしない! この命に代えても!!」

 傍にいるシルフィを見ると、彼女もフレアと同じ気持ちなのがその瞳を見れば分かる。

「フレア……」
「ええ、シルフィ!!」

 傷ついていくジークのもとに思わず駆け付けようとする精霊たちの前に、ジュリアンが神龍しんりゅうの翼を広げ立ちふさがる。

無粋ぶすいな真似を。ここから先は通しませんよ。ふふ、それに貴方たちが行ったところで足手まといになるだけ。あのゾルデと邪龍バディリウスを倒した力は認めますが、今の彼らの足元にも及ばない。貴方たちの相手であれば私で十分です」

 ゾルデと邪龍バディリウスとはジュリアンの手駒てごまであり、フレアとシルフィにとっては故郷を滅ぼしたかたきだ。覚醒した二人の力でようやくほうむることが出来た敵である。
 しかし、力の差など二人は百も承知だ。
 フレアはジュリアンに向かって叫んだ。

「どきなさい! ジュリアン!!」

 彼女が手にした炎をまとった薙刀が、ジュリアンに向かって振るわれる。
 ジュリアンがそれを笑みを浮かべながらかわすと、同時に白い疾風しっぷうが彼の首筋を襲う。
 シルフィだ。邪龍バディリウスを倒したフェンリルクイーンの牙がジュリアンの首をねたかと思えたその瞬間、彼が手にした金の錫杖しゃくじょうがシルフィの牙をはじき返す。
 大国アルファリシアの美しき教皇きょうこうは、舞うように精霊たちの攻撃をいなしながら静かに口を開いた。

「見事ですね。ですが、それでは私は倒せませんよ」

 そんなジュリアンの死角となる頭上から声が響く。

「我らをめるなよ、ジュリアン!! 貰ったぞ!」

 そこにいるのはオベルティアスだ。
 雷を体に纏い、それを一気にジュリアンに向かって落雷させる。
 フレアとシルフィをおとりに使い、死角をとる。
 三人の鮮やかなコンビネーションに思わず上を見上げるジュリアン。彼を目掛け降り注ぐ雷に、オベルティアスは勝利を確信した表情を浮かべる。

(やったか? いやたとえ生きていても、これならばもはや動けまい)

 だが、その表情はすぐに驚愕の色に染まっていく。

「馬鹿……な」

 そこにあったのは、雷を帯びながら白い翼を広げるジュリアンの姿。彼は妖しい光を宿した目で精霊たちとオベルティアスを見つめる。

「ふふふ、貴方たちこそ賢者けんじゃの石と神龍ルクディナの力をあなどらないことです。彼女は、邪龍バディリウスなどとは違う。龍族の中でも特別な存在なのですから」

 オベルティアスは、ジュリアンの額に輝く賢者の石と、背中に広がる神龍の翼を眺めながら呻く。

「信じられぬ。いくら四英雄の血を引く王家の人間とはいえ、只の人間がどうしてこれほどの力を」

 そんな神獣の姿を眺めながらジュリアンは、再び笑みを浮かべた。

「それに、貴方たちは主の心配をしている暇などありませんよ。言ったはずです、ここから世界の終わりが始まると。そして、もうその種はかれているのですから」
「種ですって?」

 ジュリアンの言葉にシルフィが訝しげに身構えた。

(一体、何のことなの?) 

 シルフィの問いにジュリアンは優雅な仕草で答える。

「周りを見てご覧なさい。あの六枚の翼が生み出すのは、刃による死だけではありません。そこから生み出される生が、この世界の終わりを告げる種子となるのです」

 精霊たちは思わず周囲を見渡す。
 そしてフレアは、自分たちがいる地下庭園の中に起きている異変に気が付いた。

「これは……シルフィ!」

 激しい死闘を繰り広げているレディンとジークたち。
 彼らを中心に、白と黒の羽根が周囲に舞い散っているのが分かる。
 それは、レディンの背の六枚の翼が生み出したものだ。
 刃として振るわれるそれが、ジークたちの剣と激突することによって光と闇の羽根を撒き散らし、ともすると幻想的とさえ言える光景を周囲に生み出している。
 シルフィも辺りを見渡し呟いた。

「ええ、フレア」
(まさか、これがジュリアンが言っている種だとでもいうの? 分からないわ、一体どういう意味なの……でも、この羽根からは何かを感じる。嫌な予感がするわ)

 胸騒ぎを感じる精霊たちの周囲に舞い散る羽根は、つがいを見つけるかのように光と闇のそれが一枚ずつ結びつき、絡み合って地上へと落ちていく。
 そして地へ落ちた羽根は、羽毛を植物の根のごとく伸ばしていく。
 伸びた羽毛は、地下からあふれ出る赤い光を養分にして大きく成長していく。
 異様な光景にミネルバとレイアは、主である国王ゼキレオスと王女オリビアを守るように警戒を強め剣を握る。

「一体何なのだこれは!」
「ミネルバ様! あれを見てください!!」

 地に落ちて根を張り、成長していくそれは次第に長細い球体を形作っていく。
 彼女たちの周りも無数の羽根が作り上げた不気味な球体で埋め尽くされていく。
 ミネルバは息を呑んだ。

「これはまるで……」
「ええ……ミネルバ様。これはまゆです」

 レイアのその言葉にミネルバは頷いた。

「ああ、だが大きすぎる」

 それは一部の昆虫こんちゅうが作り出す繭に似ている。
 しかし、そのサイズは通常の繭とは比較にならないものだ。
 優に人間一人は中に入るであろうそれは、いたるところで根を張り、羽毛が繭を包む糸となってそれをくるんでいる。
 そして、鼓動しているかのように赤い光をその中で放っていた。
 周囲を取り囲む異様な光景に、ミネルバは背筋を凍らせながらその光を眺めた。

(あの光は何だ? まるで中に何かがいるような息遣いを感じる)

 だが、そうだとしたら一体何が。
 言いようのないおぞましさを感じて、レイアは身を震わせた。
 もし、あそこからい出てくるものがいるとすれば、それは決して自分たちとは相容あいいれない存在だ。
 レイアにはそう思えた。
 フレアとシルフィは目の前に立ちはだかるジュリアンに向かって叫ぶ。

「あれは一体何なの!!」
「答えなさい! ジュリアン!!」

 精霊たちの言葉にジュリアンは嫣然えんぜんと笑うと答えた。

「ご覧の通り繭ですよ。ですが、そこから生まれる者は貴方たちの知らぬ異形いぎょうの者たちです。この世界の破壊をつかさどる魔神の使徒しととでも名付けましょうか」
「異形の者……」
「魔神の使徒ですって!?」

 衝撃を受ける精霊たちの前でジュリアンは続けた。

「あの繭からかえった者たちは魔神の使徒となり、この世界を完全に滅ぼします。ふふ、まずは手始めにこのアルファリシアが。この地に住む生きとし生けるものが、新たな世界が生まれるためのにえとなるのです」

 それを聞いて激怒の声を上げたのはオリビアだ。

「贄ですって? ふざけないで! 一体どれほどの人々がこの地に暮らしていると思っているの!!」

 アクアリーテに救われたものの、一度はジュリアンの手で胸を貫かれまだ完全には生気が戻っていない父王をその腕に抱いて、涙を流しながら怒りに震えている。

「貴方は悪魔だわ、ジュリアン! 私は貴方のことを絶対に許さない!!!」

 魔神と英雄たちの世界の命運を懸けた戦い。そして不気味に息づく巨大な繭に囲まれたこの状況。普通の王女であれば気を失ってもおかしくないだろう。
 だが、美しい顔を毅然きぜんと弟に向けて声を上げるのは、彼女の王族としての矜持きょうじの高さを表している。
 この国に生きる者たちの命を守ろうとする王女としての責務と意志が、その横顔には込められていた。
 そして、命を懸けて魔神と戦っているジークを見つめる。

(レオン。どうかこの地に、いいえ世界に救いを!! 祈ることしか出来ない私を許して……)

 出会った時に彼は、オリビアを無礼なレオナール将軍から守るようにしてその腕に抱いた。
 その時覚えた不思議な感情を思い出す。
 そして、彼と一緒にいると、自分が王女でいることさえも忘れられたことを。

「レオン……」

 オリビアはこの時、はっきりと自分が彼を愛していることに気が付いた。

(ああ、神よ! 私の命をささげてもいい。どうか、彼らに力を!)

 必死に祈る娘の姿を見て、まだ青ざめた顔をしている父王はゆっくりと身を起こした。

「お父様!」
「止めるでないリヴィ。そなたがレオンの無事を祈らずにはおられぬように、ワシにも王としてやらねばならぬことがある」

 そう言うと、ゼキレオス王はオリビアの腕を振りほどいて立ち上がる。
 そして、腰から提げた剣を抜いた。
 それはレオンとの腕試しの際に折れてしまった大剣ほど立派なものではないが、騎士王と呼ばれたゼキレオスが使うに相応ふさわしい見事な剣である。
 横顔はまだ蒼白そうはくではあるが、王として、そして武人としての威厳いげんが深く刻み込まれている。
 そんな国王を見て、傍に控えていたミネルバも立ち上がった。

陛下へいか!」

 ミネルバの言葉にゼキレオスは頷く。

「ミネルバよ、分かっておるな。レオンたちが、精霊たちが命を懸けて戦っておる。ならば、我らとてこの命を投げうってでも悪魔どもが地上に這い出るのを防がねばならぬ!」
「はい、陛下!!」

 僅かな躊躇ためらいもないミネルバのその返事と、彼女の後ろに立って同じように一礼するレイアの姿を見て、ゼキレオスは笑みを浮かべた。
 その表情は国王としてのものではない。
 一人の人間として、二人にしっかりと向き合って語り掛ける。

「ミネルバよ、そしてわが友ロゼルタークの娘レイアよ。オリビアと共に、そなたたちを娘のように思ってきた」

 王の言葉にミネルバもレイアも涙を浮かべる。
 ゼキレオスは決意を込めた目で二人を見つめる。

「すまぬな。この国の民のため、そなたたちの命をワシにくれ」

 ミネルバとレイアは敬礼をすると、微笑んだ。

「騎士となったその日から、もとより承知の上です」
「おともします、陛下!」

 そして、ゼキレオスはミネルバの傍に立つロザミアに言った。

「ロザミア殿、そなたは優れた翼人の聖騎士だったと聞く。この地に生きる者たちのため、そなたの力を貸してはくれぬか?」

 国王の言葉に、ロザミアは死闘を繰り広げているジークを見つめると頷いた。

「ゼキレオス陛下、私は最初からそのつもりだ。主殿は魔族の眷属けんぞくと化し全てをあきらめていた私に、もう一度笑顔をくれた。この命はその時からもう、主殿のために使うと決めている」

 迷いのない瞳で、ロザミアは腰から提げた剣を抜いた。

「ティアナや子供たち、フレアやシルフィ、そしてこの国で出会った仲間たち。みんな私のかけがえのない友だ。そのためなら、私の全てを懸けて戦うとちかう!!」 

 ロザミアの体に今までにないほどの闘気とうきが宿っていく。
 それを見てゼキレオスは頷いた。

(良い剣士だ。優れた戦士が多い翼人族の中でもこれほどの剣士はそうはおるまい。我ら四人でどこまで出来るかは分からぬが……)

 彼は剣を強く握り締める。

「やらねばならぬ、この命を燃やし尽くしたとしても!」

 ゼキレオスはオリビアを見つめる。

「リヴィ、ワシの傍を離れるでないぞ!」
「はい、お父様!」

 そして、意を決した三人の女剣士と目を合わせて言った。

「行くぞ!!」

 それに答えるミネルバたち。

「はい! 陛下!!」
「この国の民のために!」
「仲間たちのために!!」

 その掛け声と共に彼らはオリビアを囲むように守りながら、互いに背を預け四方へと体を向けた。
 それぞれの目の前にある繭を破壊するためだ。
 レイアは自分の目の前にある繭を、横薙ぎに一刀両断しようとした。

「はぁああああ!!」

 その太刀筋の鋭さは父親である剣聖ロゼルタークゆずりのもので、剣技の見事さは銀竜騎士団ぎんりゅうきしだんの中でも将軍ミネルバに匹敵ひってきするほどだ。
 だが……
 キィイイン!!
 まるで凄まじい硬度を持つ金属にぶつかったような音を放って、レイアの剣は繭の表面ではじき返される。

「くっ! 馬鹿な!!」

 思わず剣を握る手を見つめる。

(なんという硬さだ。私の剣がはじかれるとは)

 レイアが衝撃を受けるのも当然だろう。
 彼女の剣は、その冷気で敵の剣すら凍り付かせ砕くことが出来るほどのものだ。
 レイアの顔に濃い焦りの色が浮かぶ。
 繭は不気味に赤い光を明滅させ、中の邪悪じゃあくな気配が次第に強くなっていく。それは羽根が生み出した魔神の使徒が育っている証だろう。

(この中で育っているものを決して地上に出してはいけない。そんなことになれば、我が国は、アルファリシアは終わりだ)

 男装の麗人れいじんのように端整たんせいで美しいその横顔が焦燥に歪み、彼女は唇を噛む。

「くっ! 私はなんと情けないのだ」

 レイアは声を上げ、悔しさに身を震わせる。

(私の力では、レオンたちを手助けすることすら出来ないのか……)

 その時、レイアに背を向けて立っているミネルバが言った。

「レイア、諦めるんじゃないよ。自分の力を信じるんだ。今は私たちがやるしかない、限界を超えてこの体が悲鳴を上げたってね!」

 りんとしたミネルバの背中を見て、レイアはもう一度剣を握り直す。

「はい、ミネルバ様!」

 レイアは笑みを浮かべる。

(ミネルバ様らしい。幼い頃から父の剣技を忠実に再現することしか出来なかった私の心に、いつだって炎を灯してくれる)

 自分と相反あいはんして豪快で自由なミネルバの剣に、出会った当初は反発も感じていたが、次第にそんな彼女にかれていった。
 そしていつしか姉妹のように力を合わせてきたことを思い出す。
 ミネルバはレイアの方を振り返ると言った。

「レオンたちと行った森は楽しかったね。レイア、またあんたと一緒に行きたいよ。オリビア様や、みんなと一緒にさ」
「ええ、ミネルバ様」

 二人は、レオンたちと一緒に食材を探しに行った森のことを思い出した。
 騎士として生きてきた人生に後悔はない。
 だが、二人にとってあれが安らぎの時間だったのは間違いのない事実だ。
 レイアは、一緒に行った子供たちの、皆の笑顔を思い出す。
 そして、この世界を守りたいと心から思った。
 レイアは剣を握る手に力を込めると天をあおいだ。

「父上、私に力を! この身に代えても守りたいものがあるのです!!」

 凄まじい闘気がレイアの体を包んでいくと、それは青い炎のように揺らめいた。

「はぁあああああ!!!」

 気合と共に限界を超えた力が、レイアの剣を強烈に輝かせていく。
 力を更に凝縮させるために居合いあいの姿勢で剣を構えると、青い光は臨界点りんかいてんを超えるような光を放つ。
 その瞬間、レイアの剣は恐るべき速さで振られていた。

練気氷刃奥義れんきひょうじんおうぎ!! 氷牙一閃ひょうがいっせん!!!」

 冷気を剣に宿して敵を斬り、凍り付かせるレイアの練気氷刃。その奥義である氷牙一閃は父の剣聖ロゼルタークの技だ。
 まだ極めることが出来ていなかったはずの技を彼女は今、見事に使いこなし、周囲にはきらめく氷の結晶が輝いている。
 その技のえは父親の剣聖すら凌駕りょうがする。
 もし、この姿を見ることが出来たとしたら、父であるロゼルタークは、自分を超えた娘を誰よりも誇らしく思うことだろう。
 レイアの技は、鮮やかに目の前の繭を切り裂くと同時に凍り付かせ、氷の結晶と化したそれは粉々に打ち砕かれた。
 ミネルバはその姿を見届けると、今度は自らが剣を構える。

「やるもんだね、レイア。どうやら私も負けてはいられないようだ」

 同時にミネルバの体には強烈な闘気が宿っていく。
 ミネルバは未だ魔神と死闘を続けているジークを見上げた。
 そして、初めて彼と出会った時のことを思い出す。

(初めは生意気で可愛い坊やだと思ったのにね……)

 冒険者ギルドで出会ったレオンはミネルバにとって確かにそう思えた。
 だが、共闘した作戦で闇の術師と戦った時に助けられたのはミネルバの方だった。

「ふふ、慣れないドレスなんか着て、らしくないったらなかったね」

 誰もが見とれてしまうほどの魅力を持つ女将軍が、ドレスを着て訪れた小さな教会での夕食。レオンを貴族に推薦すいせんするという申し出と公爵家こうしゃくけ晩餐ばんさんへの招待を断られた時の驚きを思い出す。
 誰もが飛びつきたくなる条件だ。
 それを断ったレオンとあの教会で食べた夕食の味を、ミネルバは忘れることが出来ない。
 招待を無下むげにされたにもかかわらず、こんな男もいるのだと何故か嬉しくなったことを覚えている。
 そして、その強さと美貌びぼうゆえに沢山たくさんの貴族の子息たちから恋文を送られ、ため息をつくミネルバに、相変わらずの鈍感さで答えたレオンの姿を思い出して笑った。

(本当に生意気な坊やさ。でもなんでだろうね、あんたが現れてからこの世界が前よりもずっと輝いて大切に思えるのさ)

 ミネルバは剣を握る手に力を込める。
 炎のように湧き上がるミネルバの闘気は限界を超えて高まっていき、その美貌を更に際立させていく。
 まるでこの地に舞い降りた戦女神いくさめがみのように。
 彼女の背に、自らがひきいる騎士団のシンボルともいえる竜の形に湧き上がったオーラが燃え上がると、剣に宿る。


しおりを挟む
感想 114

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

願いの代償

らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。 公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。 唐突に思う。 どうして頑張っているのか。 どうして生きていたいのか。 もう、いいのではないだろうか。 メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。 *ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。 ※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。