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SS
SS、森の宝石のジャムとウィンディーネ 後編
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「精霊さん!!?」
アクアリーテが一生懸命描いた魔法陣の上で、その姿を変えていく水の精霊の姿。
まるでふくらんだパンの生地のように丸くなっていたその姿は、徐々に変化していく。
そして、それは完全に姿を変えるとアクアリーテを見つめて声を上げた。
「ウィンデーネ!!」
まるで自己紹介するように、自分の名前をアクアリーテに伝えたのはアクアリーテよりも少し幼く見える少女だ。
青い髪が特徴的だが、それ以外はどことなくアクアリーテに似ている。
「はわわ! 精霊さんが!?」
アデラも驚いたようにその姿を眺めると、俺たちに言う。
「どうやら、アクアリーテの姿を真似てるみたいだね。精霊の中でも特別な力を持って生まれてきた者たちの中には自由にその姿を変えられる者もいるが、それはかなりの高位精霊たちだ。まだ小さな精霊にこんな真似が出来るなんてね、私も驚いたよ」
精霊は、アクアリーテに手を伸ばして一生懸命名前を呼んだ。
「あ……くあ……あくあ!」
驚いていたアクアリーテもそれを見て目を輝かせた。
「うん! ウィンディーネ! 私、アクア!!」
「アクア!!」
アクアリーテが、ぎゅっとウィンディーネを抱きしめると幼い水の精霊は嬉しそうに笑った。
「はは、なんだかアクアリーテに妹が出来たみたいだな」
「うん! ジーク!! 私、これからもずっとウィンディーネのこと大事にする!!」
その言葉にウィンディーネも嬉しそうだ。
「アクア!!」
どうやらまだ言葉は自分の名前とアクアリーテの名前ぐらいしか言えないみたいだが、それでも気持ちは十分に伝わってくる。
アデラは笑いながら言った。
「可愛いもんだね。私もこんな小さな精霊が人化したのを見るのは初めてだ、もしかしたら将来とんでもない力を持った精霊になるかもしれないね。アクアリーテ、ウィンディーネにはあんたが言葉を教えるんだ。そうすることで、もっと深く繋がりを作れるからね」
「うん、アデラ! アデラがしてくれたみたいに私、一生懸命教える!」
アデラに文字や魔法を教えてもらっている時のアクアリーテは楽しそうだからな。
ずっと森の中で一人ぼっちだったことを考えれば嬉しいのもよく分かる。
使えないと思ってた魔法も使えるようになって、こうして精霊とも契約をすることが出来たんだ。
きっとウィンディーネにも頑張って教えることだろう。
アデラは俺たちを眺めながら笑みを浮かべると、すっかり膨らんだパン生地を眺める。
「おっと、こっちもそろそろのようだね!」
アデラは窯がある台所の机の上に軽く小麦粉をまいて、その上にふっくらとしたパン生地を置くとそれを小さくちぎって丸め始める。
そして、俺たちに声をかけた。
「あんたたちもやるかい?」
「ああ!」
「うん! アデラ!!」
この小屋での生活は、どうしても必要なものは買ってはくるがそれ以外のものは自分たちで作ることも多い。
倒魔人であるアデラはそういう生活に慣れているそうだ。
この小屋だってアデラが修行の為に自分で作ったって言ってたからな。
俺も将来、倒魔人を目指しているから色々と教わって覚えていっている。
まあ、そんな難しいことは抜きにしても料理を作るのは結構楽しいものだ。
特にこのパン作りはアクアリーテも大好きだ。
まだ机の上に手が届かないから、俺がアクアリーテの為に作った長い踏み台の上に乗ってアデラがちぎってくれたパンの生地を、アデラを真似て綺麗に丸める。
「アクア……」
「ウィンディーネもやってみる?」
「アクア!」
ウィンディーネもアクアリーテを真似て頑張るが、初めてなので上手くいかない。
しょんぼりするウィンディーネに、アクアリーテは一生懸命教えていた。
暫くすると、窯に入れるパンの成形が終わる。
「できたな!」
「うん!」
「アクア!!」
俺が作ったのはオーソドックスな形をしたパンばかりだが、アクアリーテが作ったのは面白い形をしたパンだ。
それを見てアデラが感心したように言う。
「へえ、もしかしてこれ私たちかい?」
「えへへ、そうだよ。これがアデラで、こっちがジーク、それから私とウィンディーネ!」
可愛く作られた人の顔を真似たパンは、確かにどことなく俺たちに似ている。
「へえ、器用なもんだな」
「うん! 私、絵をかくのが好きだから。ずっと話すの苦手で、地面にお絵かきするのが大好きだったの」
あの意地悪な連中にからかわれてたからだろう。
それで誰かと話すのが苦手になったんだよな。
「でも、今はアデラやジークと話すのが大好き! 私の新しい家族だもん!」
「アクア!」
私もだよってウィンディーネが言っているようだ。
「へへ、もちろんウィンディーネも!」
アクアリーテがそう言うと、ウィンディーネは嬉しそうに飛び跳ねる。
アデラが二人の髪を撫でると、アクアリーテはとても幸せそうな顔をしていた。
成形したパンをしばらく置いて、もう一度発酵させた後、俺がそれを窯の中に入れる。
アデラが魔法で器用に火加減を調節していくと、次第に小屋の中にパンが焼けるとてもいい香りが漂っていく。
それから程なくしてパンが焼けた。
「いい匂い!」
アクアリーテがくんくんと小さな鼻で焼き立てのパンの匂いを嗅いでいる。
ウィンディーネもその真似をしていた。
「さあ! 少し遅くなったけど朝食にしよう!」
「ああ!」
「うん!」
俺たちは食卓につくと、焼き立てのパンに、昨日アデラが作ってくれた森の宝石のジャムをつけて食べた。
思わず目を見開く。
「こりゃ美味いな!」
「うん! ジーク!!」
「アクア!!」
ウィンディーネも大きな口を開けて食べている。
昨日森でこの苺を初めて食べた時も美味かったけど、ジャムにして焼き立てパンと一緒に食べるのは最高だ。
「確かにこりゃ美味いね!」
アデラもそう言って笑う。
アクアリーテとウィンディーネは、口の周りに少しジャムをつけて幸せそうに笑っていた。
そんなみんなにつられて俺も笑顔になる。
アクアリーテの精霊、ウィンディーネ。
俺たちは新しい家族を得て、朝食の時間をたっぷりと楽しんだ。
────
いつもご覧頂きましてありがとうございます!
今日は、この作品の書籍のイラストを担当して下さっている紺藤ココン様に描いて頂いた応援イラストを紹介させて頂きますね。
まずは四巻発売の時に描いて下さったものになります。
神秘的な雰囲気がジュリアンにぴったりですよね。
黒猫やジークの姿も四巻の色々なシーンが思い起こされて、いつも本当に素敵なイラストを描いて下さってありがとうございます!
もう一つはコミカライズの際の応援イラストになります。
ティアナや精霊はもちろんレオンもとてもコミカルで可愛くて素敵ですよね。
本当にありがとうございました!
この場をお借りして紺藤様には深くお礼を申し上げます。
そして、いつもご覧頂いている皆様に感謝します。
ありがとうございます!
これからもレオンたちをよろしくお願いします!
アクアリーテが一生懸命描いた魔法陣の上で、その姿を変えていく水の精霊の姿。
まるでふくらんだパンの生地のように丸くなっていたその姿は、徐々に変化していく。
そして、それは完全に姿を変えるとアクアリーテを見つめて声を上げた。
「ウィンデーネ!!」
まるで自己紹介するように、自分の名前をアクアリーテに伝えたのはアクアリーテよりも少し幼く見える少女だ。
青い髪が特徴的だが、それ以外はどことなくアクアリーテに似ている。
「はわわ! 精霊さんが!?」
アデラも驚いたようにその姿を眺めると、俺たちに言う。
「どうやら、アクアリーテの姿を真似てるみたいだね。精霊の中でも特別な力を持って生まれてきた者たちの中には自由にその姿を変えられる者もいるが、それはかなりの高位精霊たちだ。まだ小さな精霊にこんな真似が出来るなんてね、私も驚いたよ」
精霊は、アクアリーテに手を伸ばして一生懸命名前を呼んだ。
「あ……くあ……あくあ!」
驚いていたアクアリーテもそれを見て目を輝かせた。
「うん! ウィンディーネ! 私、アクア!!」
「アクア!!」
アクアリーテが、ぎゅっとウィンディーネを抱きしめると幼い水の精霊は嬉しそうに笑った。
「はは、なんだかアクアリーテに妹が出来たみたいだな」
「うん! ジーク!! 私、これからもずっとウィンディーネのこと大事にする!!」
その言葉にウィンディーネも嬉しそうだ。
「アクア!!」
どうやらまだ言葉は自分の名前とアクアリーテの名前ぐらいしか言えないみたいだが、それでも気持ちは十分に伝わってくる。
アデラは笑いながら言った。
「可愛いもんだね。私もこんな小さな精霊が人化したのを見るのは初めてだ、もしかしたら将来とんでもない力を持った精霊になるかもしれないね。アクアリーテ、ウィンディーネにはあんたが言葉を教えるんだ。そうすることで、もっと深く繋がりを作れるからね」
「うん、アデラ! アデラがしてくれたみたいに私、一生懸命教える!」
アデラに文字や魔法を教えてもらっている時のアクアリーテは楽しそうだからな。
ずっと森の中で一人ぼっちだったことを考えれば嬉しいのもよく分かる。
使えないと思ってた魔法も使えるようになって、こうして精霊とも契約をすることが出来たんだ。
きっとウィンディーネにも頑張って教えることだろう。
アデラは俺たちを眺めながら笑みを浮かべると、すっかり膨らんだパン生地を眺める。
「おっと、こっちもそろそろのようだね!」
アデラは窯がある台所の机の上に軽く小麦粉をまいて、その上にふっくらとしたパン生地を置くとそれを小さくちぎって丸め始める。
そして、俺たちに声をかけた。
「あんたたちもやるかい?」
「ああ!」
「うん! アデラ!!」
この小屋での生活は、どうしても必要なものは買ってはくるがそれ以外のものは自分たちで作ることも多い。
倒魔人であるアデラはそういう生活に慣れているそうだ。
この小屋だってアデラが修行の為に自分で作ったって言ってたからな。
俺も将来、倒魔人を目指しているから色々と教わって覚えていっている。
まあ、そんな難しいことは抜きにしても料理を作るのは結構楽しいものだ。
特にこのパン作りはアクアリーテも大好きだ。
まだ机の上に手が届かないから、俺がアクアリーテの為に作った長い踏み台の上に乗ってアデラがちぎってくれたパンの生地を、アデラを真似て綺麗に丸める。
「アクア……」
「ウィンディーネもやってみる?」
「アクア!」
ウィンディーネもアクアリーテを真似て頑張るが、初めてなので上手くいかない。
しょんぼりするウィンディーネに、アクアリーテは一生懸命教えていた。
暫くすると、窯に入れるパンの成形が終わる。
「できたな!」
「うん!」
「アクア!!」
俺が作ったのはオーソドックスな形をしたパンばかりだが、アクアリーテが作ったのは面白い形をしたパンだ。
それを見てアデラが感心したように言う。
「へえ、もしかしてこれ私たちかい?」
「えへへ、そうだよ。これがアデラで、こっちがジーク、それから私とウィンディーネ!」
可愛く作られた人の顔を真似たパンは、確かにどことなく俺たちに似ている。
「へえ、器用なもんだな」
「うん! 私、絵をかくのが好きだから。ずっと話すの苦手で、地面にお絵かきするのが大好きだったの」
あの意地悪な連中にからかわれてたからだろう。
それで誰かと話すのが苦手になったんだよな。
「でも、今はアデラやジークと話すのが大好き! 私の新しい家族だもん!」
「アクア!」
私もだよってウィンディーネが言っているようだ。
「へへ、もちろんウィンディーネも!」
アクアリーテがそう言うと、ウィンディーネは嬉しそうに飛び跳ねる。
アデラが二人の髪を撫でると、アクアリーテはとても幸せそうな顔をしていた。
成形したパンをしばらく置いて、もう一度発酵させた後、俺がそれを窯の中に入れる。
アデラが魔法で器用に火加減を調節していくと、次第に小屋の中にパンが焼けるとてもいい香りが漂っていく。
それから程なくしてパンが焼けた。
「いい匂い!」
アクアリーテがくんくんと小さな鼻で焼き立てのパンの匂いを嗅いでいる。
ウィンディーネもその真似をしていた。
「さあ! 少し遅くなったけど朝食にしよう!」
「ああ!」
「うん!」
俺たちは食卓につくと、焼き立てのパンに、昨日アデラが作ってくれた森の宝石のジャムをつけて食べた。
思わず目を見開く。
「こりゃ美味いな!」
「うん! ジーク!!」
「アクア!!」
ウィンディーネも大きな口を開けて食べている。
昨日森でこの苺を初めて食べた時も美味かったけど、ジャムにして焼き立てパンと一緒に食べるのは最高だ。
「確かにこりゃ美味いね!」
アデラもそう言って笑う。
アクアリーテとウィンディーネは、口の周りに少しジャムをつけて幸せそうに笑っていた。
そんなみんなにつられて俺も笑顔になる。
アクアリーテの精霊、ウィンディーネ。
俺たちは新しい家族を得て、朝食の時間をたっぷりと楽しんだ。
────
いつもご覧頂きましてありがとうございます!
今日は、この作品の書籍のイラストを担当して下さっている紺藤ココン様に描いて頂いた応援イラストを紹介させて頂きますね。
まずは四巻発売の時に描いて下さったものになります。
神秘的な雰囲気がジュリアンにぴったりですよね。
黒猫やジークの姿も四巻の色々なシーンが思い起こされて、いつも本当に素敵なイラストを描いて下さってありがとうございます!
もう一つはコミカライズの際の応援イラストになります。
ティアナや精霊はもちろんレオンもとてもコミカルで可愛くて素敵ですよね。
本当にありがとうございました!
この場をお借りして紺藤様には深くお礼を申し上げます。
そして、いつもご覧頂いている皆様に感謝します。
ありがとうございます!
これからもレオンたちをよろしくお願いします!
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