66 / 73
66、気になる話
しおりを挟む
朝練が終わり、俺たちは朝食をとる。
アーシェは初めての特訓でお腹が空いたのか、可愛らしい口を大きく開けてハムと卵がのったパンを食べている。
「えへへ、美味しい! 私もロイと一緒に魔法の練習したの! そしたらお腹空いちゃって」
嬉しそうにそう報告するアーシェに、アランとママンは顔を見合わせて微笑んだ。
「そうか、良かったなアーシェ! ほら、沢山食べろ」
「ふふ、そうよ。いっぱい食べて、アーシェ」
「うん!」
すっかりうちに馴染んできたアーシェ。
無邪気な笑顔で楽しそうに二人と話をしている。
俺はアーシェの特訓の成果を二人に話した。
「アーシェは回復魔法の才能があるんだ。将来はお母さんみたいに凄いヒーラーになるかもしれないよ」
「まあ! そうなの? ふふ、楽しみね」
もちろん、まだママンみたいな魔力や治癒能力をってわけにはいかないけど、訓練を始めたばかりだからな。
さっきの光といい、ヒーラーとしての才能は相当なものだ。
アーシェはママンに言う。
「私、一生懸命勉強して、ロイのお母さんのお手伝いするの! こんなに楽しい毎日のお礼がしたくて!」
「もう! アーシェったら」
朝からママンの涙腺がまた崩壊しそうである。
俺は二人に言った。
「今日、アリシアの店に行くんだけど、そこでアーシェの魔法道具も選ぼうと思うんだ。剣よりも杖とかの方がいいかなって思うんだけど」
俺の言葉に二人は顔を見合わせると頷いた。
「そうだな、ロイ。アーシェがヒーラーの才能があるならその方がいいかもしれないな」
「そうね、私が一緒に行って選んであげたいんだけど、今日も患者さんが朝から来る予定になってるし」
それを聞いて、ラフィーネが言う。
「心配ないよ、エルディ。あたしがついていくからね」
「ラフィーネ! ありがとう!」
「いいのさ、元々ついていこうと思ってたからね」
そう言った後、先生は少し肩をすくめると二人に言う。
「でも、いいのかい? あのアリシアって子の店は、例のエバースタイン商会だろ」
ん? 例のっていうのはどういう意味だろう。
アリシアの店に何かあるのか。
含みがある言い方に俺は思わず、ラフィーネや両親の方を見る。
アランとママンは顔を見合わせると言う。
「大丈夫よ、ラフィーネ」
「ああ、昔の話だ。それに都にはあいつもいない。なんの問題もないさ」
それを聞いてラフィーネは肩をすくめる。
「まあ、アラン、あんたがそう言うのなら私が口を挟むことじゃないね。別にあんたが直接顔を出すって話でもないし」
気になるな、あいつって一体誰だろう。
俺はジト目でアランを見つめると言った。
「……お父さん、まさか、エバースタイン商会に関係している誰かと変な関係があるんじゃないでしょうね? お母さんが許しても俺が許しませんよ!」
この超絶イケメン野郎は恐ろしい程モテるからな。
アリシアだって、うちで働いていたころはアランを見る目がすっかりハートマークになっていた。
アランはぽかんとした顔で俺を見つめている。
「許さないってお前、なに言ってるんだ?」
そして、ハッとしたように声を上げる。
「ば、馬鹿野郎! お前、何変なことを考えてるんだ! 俺は、昔からずっとエルディ一筋だ!!」
「うふふ、もう朝から何言ってるの、アラン」
どうやら俺の勘違いだったようだ。
相変わらずの熱々ぶりである。
まあ、確かにアランはそんな器用なタイプじゃないからな。
アランは溜め息を吐きながら言う。
「お前が気にするようなことじゃない。昔少し、因縁があった相手が商会に関係しているだけだ。もう、俺とは関係のない相手だからな。二度と会うこともない」
「そうですか、分かりました。お父さんを信じます」
「当たり前だろ!」
ピシャリとそう言われて、逆に安心した。
しかし、因縁がある相手か。
気にするなと言われると余計に気になるな。
そう言えば、確かにおかしいよな。
アシリアの家は大商会だ。
その令嬢であるアリシアがどうしてわざわざ、俺の家でメイドとして働いていたのだろう。
トーマスが言っていたように花嫁修業だとしたら、貴族の屋敷とか他にも相応しい場所がありそうだ。
アーシェが俺を見つめて不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの? ロイ」
「はは、なんでもないさ。アーシェ」
まあ、しかしこの様子だとアランは教えてくれそうもない。
アランが言わないのなら、ママンもラフィーネも教えてはくれないだろう。
後で内緒でアリシアにでも聞いてみようか?
俺はそんなことを考えながら朝食を終えた。
ママンが、俺たちの身支度を整えてくれてアーシェは可愛らしい洋服を着てクルリと踊るように回る。
「うわぁ! 凄く可愛いお洋服」
「ふふ、知り合いのお店に頼んだの。制服でサイズは分かってるから」
アーシェはギュッとママンに抱きつく。
「ありがとう! ロイのお母さん」
「よく似合ってるわ。アーシェ! ロイも素敵よ」
俺も、真新しい服に袖を通す。
どうやら、士官学校に通い始めた俺たち二人の為に新しい服を用意してくれたようだ。
「ありがとう、お母さん!」
そんな中、既に用意を整えたラフィーネ先生が俺たちに言う。
「あたしも準備は出来たよ」
普段のいかにも魔導士といった姿も悪くないが、よそ行きの服を来たラフィーネ先生はヤバい程の美しさだ。
肩に乗っているビビの姿も相まって、まさにファンタジーの世界の住人といった様子である。
さすがエルフである。
「さてと、じゃあ二人ともそろそろ出かけるとしようか!」
俺たちは大きく頷くと、両親に見送られて家を出ると商会へと向かうことにした。
アーシェは初めての特訓でお腹が空いたのか、可愛らしい口を大きく開けてハムと卵がのったパンを食べている。
「えへへ、美味しい! 私もロイと一緒に魔法の練習したの! そしたらお腹空いちゃって」
嬉しそうにそう報告するアーシェに、アランとママンは顔を見合わせて微笑んだ。
「そうか、良かったなアーシェ! ほら、沢山食べろ」
「ふふ、そうよ。いっぱい食べて、アーシェ」
「うん!」
すっかりうちに馴染んできたアーシェ。
無邪気な笑顔で楽しそうに二人と話をしている。
俺はアーシェの特訓の成果を二人に話した。
「アーシェは回復魔法の才能があるんだ。将来はお母さんみたいに凄いヒーラーになるかもしれないよ」
「まあ! そうなの? ふふ、楽しみね」
もちろん、まだママンみたいな魔力や治癒能力をってわけにはいかないけど、訓練を始めたばかりだからな。
さっきの光といい、ヒーラーとしての才能は相当なものだ。
アーシェはママンに言う。
「私、一生懸命勉強して、ロイのお母さんのお手伝いするの! こんなに楽しい毎日のお礼がしたくて!」
「もう! アーシェったら」
朝からママンの涙腺がまた崩壊しそうである。
俺は二人に言った。
「今日、アリシアの店に行くんだけど、そこでアーシェの魔法道具も選ぼうと思うんだ。剣よりも杖とかの方がいいかなって思うんだけど」
俺の言葉に二人は顔を見合わせると頷いた。
「そうだな、ロイ。アーシェがヒーラーの才能があるならその方がいいかもしれないな」
「そうね、私が一緒に行って選んであげたいんだけど、今日も患者さんが朝から来る予定になってるし」
それを聞いて、ラフィーネが言う。
「心配ないよ、エルディ。あたしがついていくからね」
「ラフィーネ! ありがとう!」
「いいのさ、元々ついていこうと思ってたからね」
そう言った後、先生は少し肩をすくめると二人に言う。
「でも、いいのかい? あのアリシアって子の店は、例のエバースタイン商会だろ」
ん? 例のっていうのはどういう意味だろう。
アリシアの店に何かあるのか。
含みがある言い方に俺は思わず、ラフィーネや両親の方を見る。
アランとママンは顔を見合わせると言う。
「大丈夫よ、ラフィーネ」
「ああ、昔の話だ。それに都にはあいつもいない。なんの問題もないさ」
それを聞いてラフィーネは肩をすくめる。
「まあ、アラン、あんたがそう言うのなら私が口を挟むことじゃないね。別にあんたが直接顔を出すって話でもないし」
気になるな、あいつって一体誰だろう。
俺はジト目でアランを見つめると言った。
「……お父さん、まさか、エバースタイン商会に関係している誰かと変な関係があるんじゃないでしょうね? お母さんが許しても俺が許しませんよ!」
この超絶イケメン野郎は恐ろしい程モテるからな。
アリシアだって、うちで働いていたころはアランを見る目がすっかりハートマークになっていた。
アランはぽかんとした顔で俺を見つめている。
「許さないってお前、なに言ってるんだ?」
そして、ハッとしたように声を上げる。
「ば、馬鹿野郎! お前、何変なことを考えてるんだ! 俺は、昔からずっとエルディ一筋だ!!」
「うふふ、もう朝から何言ってるの、アラン」
どうやら俺の勘違いだったようだ。
相変わらずの熱々ぶりである。
まあ、確かにアランはそんな器用なタイプじゃないからな。
アランは溜め息を吐きながら言う。
「お前が気にするようなことじゃない。昔少し、因縁があった相手が商会に関係しているだけだ。もう、俺とは関係のない相手だからな。二度と会うこともない」
「そうですか、分かりました。お父さんを信じます」
「当たり前だろ!」
ピシャリとそう言われて、逆に安心した。
しかし、因縁がある相手か。
気にするなと言われると余計に気になるな。
そう言えば、確かにおかしいよな。
アシリアの家は大商会だ。
その令嬢であるアリシアがどうしてわざわざ、俺の家でメイドとして働いていたのだろう。
トーマスが言っていたように花嫁修業だとしたら、貴族の屋敷とか他にも相応しい場所がありそうだ。
アーシェが俺を見つめて不思議そうに首を傾げる。
「どうしたの? ロイ」
「はは、なんでもないさ。アーシェ」
まあ、しかしこの様子だとアランは教えてくれそうもない。
アランが言わないのなら、ママンもラフィーネも教えてはくれないだろう。
後で内緒でアリシアにでも聞いてみようか?
俺はそんなことを考えながら朝食を終えた。
ママンが、俺たちの身支度を整えてくれてアーシェは可愛らしい洋服を着てクルリと踊るように回る。
「うわぁ! 凄く可愛いお洋服」
「ふふ、知り合いのお店に頼んだの。制服でサイズは分かってるから」
アーシェはギュッとママンに抱きつく。
「ありがとう! ロイのお母さん」
「よく似合ってるわ。アーシェ! ロイも素敵よ」
俺も、真新しい服に袖を通す。
どうやら、士官学校に通い始めた俺たち二人の為に新しい服を用意してくれたようだ。
「ありがとう、お母さん!」
そんな中、既に用意を整えたラフィーネ先生が俺たちに言う。
「あたしも準備は出来たよ」
普段のいかにも魔導士といった姿も悪くないが、よそ行きの服を来たラフィーネ先生はヤバい程の美しさだ。
肩に乗っているビビの姿も相まって、まさにファンタジーの世界の住人といった様子である。
さすがエルフである。
「さてと、じゃあ二人ともそろそろ出かけるとしようか!」
俺たちは大きく頷くと、両親に見送られて家を出ると商会へと向かうことにした。
1
お気に入りに追加
2,293
あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される
こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる
初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。
なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています
こちらの作品も宜しければお願いします
[イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

幼女と執事が異世界で
天界
ファンタジー
宝くじを握り締めオレは死んだ。
当選金額は約3億。だがオレが死んだのは神の過失だった!
謝罪と称して3億分の贈り物を貰って転生したら異世界!?
おまけで貰った執事と共に異世界を満喫することを決めるオレ。
オレの人生はまだ始まったばかりだ!

神速の成長チート! ~無能だと追い出されましたが、逆転レベルアップで最強異世界ライフ始めました~
雪華慧太
ファンタジー
高校生の裕樹はある日、意地の悪いクラスメートたちと異世界に勇者として召喚された。勇者に相応しい力を与えられたクラスメートとは違い、裕樹が持っていたのは自分のレベルを一つ下げるという使えないにも程があるスキル。皆に嘲笑われ、さらには国王の命令で命を狙われる。絶体絶命の状況の中、唯一のスキルを使った裕樹はなんとレベル1からレベル0に。絶望する裕樹だったが、実はそれがあり得ない程の神速成長チートの始まりだった! その力を使って裕樹は様々な職業を極め、異世界最強に上り詰めると共に、極めた生産職で快適な異世界ライフを目指していく。

転生したら神だった。どうすんの?
埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの?
人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)
いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。
---------
掲載は不定期になります。
追記
「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。
お知らせ
カクヨム様でも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる