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26、ボディーガード
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「ん? 一体なんだあの人だかりは」
都の大通りをアーシェと手を繋いで士官学校に向かっていた俺は、思わずそう呟いた。
視線の先、士官学校の校門には昨日の入学手続きの時よりも多くの人が集まっているように見える。
「おかしいな、入学式は昨日終わったし今日も何かイベントがあったっけ。アーシェ何か知ってる?」
「ううん、ロイ。今日から一週間、クラス分けのテストをするって言ってたけど……」
「だよね、アーシェ」
アーシェの言葉に俺も頷く。
あの超ド迫力の校長の挨拶の後、打って変わっていかにも事務的な職員の人からそう通達があった。
それは俺も覚えてるんだよな。
校門に近づいていくと、それは士官学校の上級生たちだと分かる。
制服の一部の色が何年生かによって違うから、相手が何年なのかは分かるようになっている。
見たところ校門のところにいるのは二年と三年だ。
もしかすると上級生が新入生を歓迎するイベントか何かあるのか?
妙に女子生徒が多いのが気になるが。
多分そうだよな。
それか、サークル的なものへの新入生の勧誘とか。
俺は行ったことがないから分からないが、元の世界でも大学とかだとそんなこともあるって聞いたことがある。
現実でどうなのかは知らないが、目ぼしい新入生に声をかけるなんてシーンをアニメとかで見たことあった気はする。
ボーイミーツガール系の学園アニメとかでありそうだからな。
悲しいことにヒキニートだった俺には現実での経験が少なすぎて、学園生活のイロハがよく分からん。
何しろ大学どころか高校も行ってないからな。
こちらを見てる女子生徒たちの声が聞こえる。
「可愛い!」
「キャー! こっち見たわよ!」
俺とアーシェが声の方を見ると、そんな黄色い歓声が起きた。
どうやらやっぱり新入生をここで待っているようだ。
まあ、確かにアーシェは可愛いし、きゃあきゃあ言われるのも分かるよな。
この可愛さは男女どちらからも愛される天使の可愛さである。
俺はなんだか誇らしい気持ちになってアーシェに言う。
「アーシェ、可愛いってさ」
「え?」
うんうん!
昨日とは見違える姿だからな。
この天使の姿に、周りが騒ぐのもよく分かる。
アーシェはこの人だかりにびっくりしている様子で、俺の手をしっかりと握り締める。
昨日あんなことがあったから不安なんだろうな。
俺はアンドニウスがいないか確認したが、どうやら奴の姿は見えない。
まあ、歓迎されてるかは別としてあいつも新入生だからな。
それに寄宿舎で生活してるなら外ではなく学園の中にいるはずだ。
両親には貴族の息子とのトラブルがあったとは話してはいるが、その相手がアンドニウスだとは伝えていない。
余計な心配をかけたくないからな。
それにラフィーネ先生からも二人には黙っているように言われた。
その代わり──
「安心しな! いざとなったら私が傍にいるからね」
そんなことを言ってたな。
どうやらラフィーネがどこかで俺たちをストーカー、いやもといボディーガードしてくれているようだ。
俺たちをどこかで観察する大義名分な気がしないこともないが、ありがたい。
アーシェに何かあったら大変だからな。
俺と先生のダブルディフェンスである。
そんなことを話してアーシェが心配するといけないので家から一緒ではないが、どこかにいるはずだ。
「昨日もずっと見てたみたいだからな」
まあ、ラフィーネのことはこの際忘れて学園生活を楽しもう。
アーシェにも心置きなく楽しんでもらいたいもんな。
そんなことを考えながら俺は、しっかりとアーシェの手を握った。
すると周りから歓声に混ざって声が上がる。
「ねえ見て! 手を繋いでるわよ……」
「隣の子、誰?」
やばい、どうやら天使と厚かましく手を繋いでる俺に視線が集まっているようだ。
女の子と手を握って登校するなんて10億年早かったか。
俺は自分に向けられている無数の視線に、戸惑いながら校門へと歩いていく。
すると、俺たちの前に誰かが立ちふさがる。
昨日のあのお姉さんだ。
彼女は俺に尋ねた。
「ふふ、ふふふ。ロイ・リンドグルーム君。その子は一体誰なのかしら、お姉さんに教えてくれる?」
なんだこのプレッシャーは!
お姉さんは優しく微笑んでいるように見えたが、その目は笑っていなかった。
都の大通りをアーシェと手を繋いで士官学校に向かっていた俺は、思わずそう呟いた。
視線の先、士官学校の校門には昨日の入学手続きの時よりも多くの人が集まっているように見える。
「おかしいな、入学式は昨日終わったし今日も何かイベントがあったっけ。アーシェ何か知ってる?」
「ううん、ロイ。今日から一週間、クラス分けのテストをするって言ってたけど……」
「だよね、アーシェ」
アーシェの言葉に俺も頷く。
あの超ド迫力の校長の挨拶の後、打って変わっていかにも事務的な職員の人からそう通達があった。
それは俺も覚えてるんだよな。
校門に近づいていくと、それは士官学校の上級生たちだと分かる。
制服の一部の色が何年生かによって違うから、相手が何年なのかは分かるようになっている。
見たところ校門のところにいるのは二年と三年だ。
もしかすると上級生が新入生を歓迎するイベントか何かあるのか?
妙に女子生徒が多いのが気になるが。
多分そうだよな。
それか、サークル的なものへの新入生の勧誘とか。
俺は行ったことがないから分からないが、元の世界でも大学とかだとそんなこともあるって聞いたことがある。
現実でどうなのかは知らないが、目ぼしい新入生に声をかけるなんてシーンをアニメとかで見たことあった気はする。
ボーイミーツガール系の学園アニメとかでありそうだからな。
悲しいことにヒキニートだった俺には現実での経験が少なすぎて、学園生活のイロハがよく分からん。
何しろ大学どころか高校も行ってないからな。
こちらを見てる女子生徒たちの声が聞こえる。
「可愛い!」
「キャー! こっち見たわよ!」
俺とアーシェが声の方を見ると、そんな黄色い歓声が起きた。
どうやらやっぱり新入生をここで待っているようだ。
まあ、確かにアーシェは可愛いし、きゃあきゃあ言われるのも分かるよな。
この可愛さは男女どちらからも愛される天使の可愛さである。
俺はなんだか誇らしい気持ちになってアーシェに言う。
「アーシェ、可愛いってさ」
「え?」
うんうん!
昨日とは見違える姿だからな。
この天使の姿に、周りが騒ぐのもよく分かる。
アーシェはこの人だかりにびっくりしている様子で、俺の手をしっかりと握り締める。
昨日あんなことがあったから不安なんだろうな。
俺はアンドニウスがいないか確認したが、どうやら奴の姿は見えない。
まあ、歓迎されてるかは別としてあいつも新入生だからな。
それに寄宿舎で生活してるなら外ではなく学園の中にいるはずだ。
両親には貴族の息子とのトラブルがあったとは話してはいるが、その相手がアンドニウスだとは伝えていない。
余計な心配をかけたくないからな。
それにラフィーネ先生からも二人には黙っているように言われた。
その代わり──
「安心しな! いざとなったら私が傍にいるからね」
そんなことを言ってたな。
どうやらラフィーネがどこかで俺たちをストーカー、いやもといボディーガードしてくれているようだ。
俺たちをどこかで観察する大義名分な気がしないこともないが、ありがたい。
アーシェに何かあったら大変だからな。
俺と先生のダブルディフェンスである。
そんなことを話してアーシェが心配するといけないので家から一緒ではないが、どこかにいるはずだ。
「昨日もずっと見てたみたいだからな」
まあ、ラフィーネのことはこの際忘れて学園生活を楽しもう。
アーシェにも心置きなく楽しんでもらいたいもんな。
そんなことを考えながら俺は、しっかりとアーシェの手を握った。
すると周りから歓声に混ざって声が上がる。
「ねえ見て! 手を繋いでるわよ……」
「隣の子、誰?」
やばい、どうやら天使と厚かましく手を繋いでる俺に視線が集まっているようだ。
女の子と手を握って登校するなんて10億年早かったか。
俺は自分に向けられている無数の視線に、戸惑いながら校門へと歩いていく。
すると、俺たちの前に誰かが立ちふさがる。
昨日のあのお姉さんだ。
彼女は俺に尋ねた。
「ふふ、ふふふ。ロイ・リンドグルーム君。その子は一体誰なのかしら、お姉さんに教えてくれる?」
なんだこのプレッシャーは!
お姉さんは優しく微笑んでいるように見えたが、その目は笑っていなかった。
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