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10、アリシアとの別れ 後編
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「アリシア…元気でね。いつでも寄って頂戴ね!」
いつもは光り輝く笑顔を絶やさないママンが、そう言ってすすり泣いている。
ママンのその顔を見て、アリシアもベソをかいている。
「奥様……本当に優しくして頂いて。奥様は私の憧れです!!」
アリシアがそんな事を言うものだから、ママンの瞳からはもう大洪水の様に涙が溢れている
ぽろぽろと溢れる涙はまるで真珠の様に美しい。
ママンはアリシアをギュッと抱きしめて二人で声を上げて泣いている。
そもそもアリシアは大商人エバースタイン家の一人娘で、どうやらこれから家を継ぐために世界を飛び回ることになるそうだ。
今回の花嫁修業もその一環だったらしい。
アリシアが俺に微笑んでほっぺにちゅっとキスをしてくれた。
「あ、アリ…シア」
俺は空気ぐらいは読める男だ。
俺が初めてアリシアの名前を口にしたのを見て、アリシアの涙腺が崩壊した。
「ロイ様、お元気で! ああ、わたしの天使!!」
そう言って俺を抱きしめるアリシアを見てママンの涙腺も崩壊した。
「アリシア! 貴方が娘だったら良かったのに!!」
ママンそれは無理があるぞ、ママンはまだ20歳だしアリシアは今年で14歳だからな。
二人の別れの姿を見てアランはうんうんと頷いている。
アランが用意した馬車にアリシアが乗り込むと俺達は最後の別れを伝えた。
馬車が次第に小さくなっていく。
ママンはぐすぐすと泣きながらアランの肩に頬を乗せていつまでもそれを見守っていた。
ママンのブロンドの髪をアランが優しく撫でて慰めている。
(おのれリア充め……)
ジッと二人を見つめる俺に気がついてママンは慌てたように俺を抱き上げた
「ごめんねロイ、貴方が一番寂しいわよね。ママったら自分のことばっかり」
そういってえもいわれぬ良い香りのする唇で俺のほっぺたにキスをする。
ママンの顔を側で見るとあまりの美しさで俺はドキドキしてしまう。
この癖はそろそろ直さないとな。
ママンはママンなんだから
アリシアも大人になろうとしている。
俺なんてもう実際はいい大人だからな、負けてはいられないだろう。
「ま~ま。ぼく、ま~まのお手伝いする」
ママンは驚いた様に俺を見つめる。
ちょっとやり過ぎたか、難しい言葉を喋れることに驚きはしないだろうか。
聖女の微笑が俺を抱きしめる。
「ああっ! 私の天使!! 貴方が側にいてくれるだけでママは頑張れるのよ」
本当にそうなのだろう。
母親と言うものは本当に凄い生き物だ。
アランがふと思い付いたように言う。
「なあ、ロイは普通の子とは違う。もしかしたらエルディに魔法を教えて欲しいんじゃないのか?」
ママンはジッと俺の顔を見つめる。
「そうなのロイ?」
ナイスアシスト!!
俺は父親である超絶イケメン君を久しぶりに心の中で褒めてやった。
俺はコクリと頷いて。
「ま~ま……いつも大変。ま~ま助けたい」
その瞬間、ようやく治まりかけたママンの涙腺が再び大崩壊した。
「き、聞いたぁ? アラン! ロイが、ロイが、ママがいつも大変だって……私を助けたいって」
ママンの綺麗な顔がクシャクシャになって、アランの胸に顔を埋めている。
うんうんと、アランはママンを抱きしめる。
この世界で真剣に生きていくと決めたからには学べるものはなんでも学んでおきたい。
前世でも習い事は早い方がいいと決まっていたからな、俺は今度こそ後悔の無い人生を送りたいんだ。
何を始めるにも早すぎるということは無い。
剣を学ぶのはアランからでいい。
なら魔法は?
答えは簡単だ、13歳で天才と呼ばれたママン以上に頼りになる先生はいないだろう。
そして次の日からママンによる魔法の指導が始まるのであった。
いつもは光り輝く笑顔を絶やさないママンが、そう言ってすすり泣いている。
ママンのその顔を見て、アリシアもベソをかいている。
「奥様……本当に優しくして頂いて。奥様は私の憧れです!!」
アリシアがそんな事を言うものだから、ママンの瞳からはもう大洪水の様に涙が溢れている
ぽろぽろと溢れる涙はまるで真珠の様に美しい。
ママンはアリシアをギュッと抱きしめて二人で声を上げて泣いている。
そもそもアリシアは大商人エバースタイン家の一人娘で、どうやらこれから家を継ぐために世界を飛び回ることになるそうだ。
今回の花嫁修業もその一環だったらしい。
アリシアが俺に微笑んでほっぺにちゅっとキスをしてくれた。
「あ、アリ…シア」
俺は空気ぐらいは読める男だ。
俺が初めてアリシアの名前を口にしたのを見て、アリシアの涙腺が崩壊した。
「ロイ様、お元気で! ああ、わたしの天使!!」
そう言って俺を抱きしめるアリシアを見てママンの涙腺も崩壊した。
「アリシア! 貴方が娘だったら良かったのに!!」
ママンそれは無理があるぞ、ママンはまだ20歳だしアリシアは今年で14歳だからな。
二人の別れの姿を見てアランはうんうんと頷いている。
アランが用意した馬車にアリシアが乗り込むと俺達は最後の別れを伝えた。
馬車が次第に小さくなっていく。
ママンはぐすぐすと泣きながらアランの肩に頬を乗せていつまでもそれを見守っていた。
ママンのブロンドの髪をアランが優しく撫でて慰めている。
(おのれリア充め……)
ジッと二人を見つめる俺に気がついてママンは慌てたように俺を抱き上げた
「ごめんねロイ、貴方が一番寂しいわよね。ママったら自分のことばっかり」
そういってえもいわれぬ良い香りのする唇で俺のほっぺたにキスをする。
ママンの顔を側で見るとあまりの美しさで俺はドキドキしてしまう。
この癖はそろそろ直さないとな。
ママンはママンなんだから
アリシアも大人になろうとしている。
俺なんてもう実際はいい大人だからな、負けてはいられないだろう。
「ま~ま。ぼく、ま~まのお手伝いする」
ママンは驚いた様に俺を見つめる。
ちょっとやり過ぎたか、難しい言葉を喋れることに驚きはしないだろうか。
聖女の微笑が俺を抱きしめる。
「ああっ! 私の天使!! 貴方が側にいてくれるだけでママは頑張れるのよ」
本当にそうなのだろう。
母親と言うものは本当に凄い生き物だ。
アランがふと思い付いたように言う。
「なあ、ロイは普通の子とは違う。もしかしたらエルディに魔法を教えて欲しいんじゃないのか?」
ママンはジッと俺の顔を見つめる。
「そうなのロイ?」
ナイスアシスト!!
俺は父親である超絶イケメン君を久しぶりに心の中で褒めてやった。
俺はコクリと頷いて。
「ま~ま……いつも大変。ま~ま助けたい」
その瞬間、ようやく治まりかけたママンの涙腺が再び大崩壊した。
「き、聞いたぁ? アラン! ロイが、ロイが、ママがいつも大変だって……私を助けたいって」
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うんうんと、アランはママンを抱きしめる。
この世界で真剣に生きていくと決めたからには学べるものはなんでも学んでおきたい。
前世でも習い事は早い方がいいと決まっていたからな、俺は今度こそ後悔の無い人生を送りたいんだ。
何を始めるにも早すぎるということは無い。
剣を学ぶのはアランからでいい。
なら魔法は?
答えは簡単だ、13歳で天才と呼ばれたママン以上に頼りになる先生はいないだろう。
そして次の日からママンによる魔法の指導が始まるのであった。
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