188 / 196
黒幕
しおりを挟む
クレアは、メロディの足元で転がっているクジネ子爵の側に駆け寄ると、クジネ子爵の胸ぐらを掴んで叫んだ。
「言いなさい!ナターシャさんを誘拐して、ボリビエさんを操ったのは誰の差し金なの?!」
クレアの剣幕に、クジネ子爵はオタオタしながら答えた。
「俺は何も知らねぇよ!俺は貴族でも何でもねぇ、ただのゴロツキだ!そこにいたフードの男に雇われたんだ。貴族のふりをして男からある人物生存の証拠を受け取るようにってな。だが本当かウソか、国王の王子は死んだようだな」
クジネ子爵をかたったゴロツキがニヤニヤと笑った。クレアは舌打ちした。またしても黒幕につながる証拠は得られなかった。クレアは望みは薄いと思いながらゴロツキに言った。
「あんたを雇った奴に、思い当たる人物はいるの?」
「そんなの決まってるじゃねぇか、そいつは、」
ゴロツキがある人物の名を言おうとした途端、ゴロツキが首にしていたネックレスが勢いよく締まった。ゴロツキはぐぐぅとうなり声をあげた。このネックレスは口封じの魔法具だったのだ。クレアはウェントゥスに叫んだ。
「ウェン!風魔法でネックレスを破壊して!」
「ピィッ」
ウェントゥスはゴロツキの首を傷つけないようにネックレスを破壊してくれた。だがゴロツキはぐったりしていた。首の骨を折って死んでいたのだ。
メロディが震えながらウェントゥスに言った。
「ねぇ、ウェン。治癒魔法して?」
ウェントゥスは困ったようにメロディを見上げた。いくらドラゴンのウェントゥスといえども、死んだ者を生き返らせる事はできないのだ。
クレアは悔しさに下くちびるを噛んだ。ジョスト大公とは、己れの欲望を満たすために、どれほどの人間を殺せば気が済むのだろうか。
クレアたちは屋敷の中を調べたが、人っ子一人いなかった。皆すでに逃げたのだろう。屋敷には哀れなゴロツキの遺体だけが残った。
ゴロツキの遺体はこの屋敷の庭に埋めた。
クレアたちはボリビエとナターシャを連れて城に戻る事にした。クレアはドラゴンのウェントゥスの背中の上で固く抱きしめ合う父娘を見て心配になった。
おそらくジョスト大公はボリビエとナターシャを消すつもりでいたのだろう。これからボリビエとナターシャはタンドール国で暮らしていけるのだろうか。
「言いなさい!ナターシャさんを誘拐して、ボリビエさんを操ったのは誰の差し金なの?!」
クレアの剣幕に、クジネ子爵はオタオタしながら答えた。
「俺は何も知らねぇよ!俺は貴族でも何でもねぇ、ただのゴロツキだ!そこにいたフードの男に雇われたんだ。貴族のふりをして男からある人物生存の証拠を受け取るようにってな。だが本当かウソか、国王の王子は死んだようだな」
クジネ子爵をかたったゴロツキがニヤニヤと笑った。クレアは舌打ちした。またしても黒幕につながる証拠は得られなかった。クレアは望みは薄いと思いながらゴロツキに言った。
「あんたを雇った奴に、思い当たる人物はいるの?」
「そんなの決まってるじゃねぇか、そいつは、」
ゴロツキがある人物の名を言おうとした途端、ゴロツキが首にしていたネックレスが勢いよく締まった。ゴロツキはぐぐぅとうなり声をあげた。このネックレスは口封じの魔法具だったのだ。クレアはウェントゥスに叫んだ。
「ウェン!風魔法でネックレスを破壊して!」
「ピィッ」
ウェントゥスはゴロツキの首を傷つけないようにネックレスを破壊してくれた。だがゴロツキはぐったりしていた。首の骨を折って死んでいたのだ。
メロディが震えながらウェントゥスに言った。
「ねぇ、ウェン。治癒魔法して?」
ウェントゥスは困ったようにメロディを見上げた。いくらドラゴンのウェントゥスといえども、死んだ者を生き返らせる事はできないのだ。
クレアは悔しさに下くちびるを噛んだ。ジョスト大公とは、己れの欲望を満たすために、どれほどの人間を殺せば気が済むのだろうか。
クレアたちは屋敷の中を調べたが、人っ子一人いなかった。皆すでに逃げたのだろう。屋敷には哀れなゴロツキの遺体だけが残った。
ゴロツキの遺体はこの屋敷の庭に埋めた。
クレアたちはボリビエとナターシャを連れて城に戻る事にした。クレアはドラゴンのウェントゥスの背中の上で固く抱きしめ合う父娘を見て心配になった。
おそらくジョスト大公はボリビエとナターシャを消すつもりでいたのだろう。これからボリビエとナターシャはタンドール国で暮らしていけるのだろうか。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
異世界営生物語
田島久護
ファンタジー
相良仁は高卒でおもちゃ会社に就職し営業部一筋一五年。
ある日出勤すべく向かっていた途中で事故に遭う。
目覚めた先の森から始まる異世界生活。
戸惑いながらも仁は異世界で生き延びる為に営生していきます。
出会う人々と絆を紡いでいく幸せへの物語。
のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
異世界転生したけどチートもないし、マイペースに生きていこうと思います。
碧
児童書・童話
異世界転生したものの、チートもなければ、転生特典も特になし。チート無双も冒険もしないけど、現代知識を活かしてマイペースに生きていくゆるふわ少年の日常系ストーリー。テンプレっぽくマヨネーズとか作ってみたり、書類改革や雑貨の作成、はてにはデトックス効果で治療不可の傷を癒したり……。チートもないが自重もない!料理に生産、人助け、溺愛気味の家族や可愛い婚約者らに囲まれて今日も自由に過ごします。ゆるふわ癒し系異世界ファンタジーここに開幕!【第2回きずな児童書大賞・読者賞を頂戴しました】 読んでくださった皆様のおかげです、ありがとうございました!
【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
異世界複利! 【1000万PV突破感謝致します】 ~日利1%で始める追放生活~
蒼き流星ボトムズ
ファンタジー
クラス転移で異世界に飛ばされた遠市厘(といち りん)が入手したスキルは【複利(日利1%)】だった。
中世レベルの文明度しかない異世界ナーロッパ人からはこのスキルの価値が理解されず、また県内屈指の低偏差値校からの転移であることも幸いして級友にもスキルの正体がバレずに済んでしまう。
役立たずとして追放された厘は、この最強スキルを駆使して異世界無双を開始する。
グラティールの公爵令嬢―ゲーム異世界に転生した私は、ゲーム知識と前世知識を使って無双します!―
てるゆーぬ(旧名:てるゆ)
ファンタジー
ファンタジーランキング1位を達成しました!女主人公のゲーム異世界転生(主人公は恋愛しません)
ゲーム知識でレアアイテムをゲットしてチート無双、ざまぁ要素、島でスローライフなど、やりたい放題の異世界ライフを楽しむ。
苦戦展開ナシ。ほのぼのストーリーでストレスフリー。
錬金術要素アリ。クラフトチートで、ものづくりを楽しみます。
グルメ要素アリ。お酒、魔物肉、サバイバル飯など充実。
上述の通り、主人公は恋愛しません。途中、婚約されるシーンがありますが婚約破棄に持ち込みます。主人公のルチルは生涯にわたって独身を貫くストーリーです。
広大な異世界ワールドを旅する物語です。冒険にも出ますし、海を渡ったりもします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる