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あやしい男

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 その日クレアたちは花屋の休み時間を利用して、冒険者協会に次の依頼を探しに行った。

 冒険者協会の扉を開くと、室内はそうぜんとしていた。一人の男がものすごい剣幕でどなっていたのだ。

「女、早く空間魔法の使える魔法使いを出せ!金ならいくらでも払う!」
「ですから、空間魔法を使う冒険者は今依頼で遠くに行っております」

 おろおろしながら応対しているのは、クレアたちがいつも世話になっている受付嬢のサーラだ。

 男は激ごうしたのか、サーラの細い手をひねりあげて叫んだ。

「ならば早くここに呼び戻せ!」

 それを見たクレアは頭に血がのぼった。いかに急いでいても、か弱い女性に手を出すなど、あってはならない事だ。

 クレアは男の側によると、サーラの腕を掴んでいる男の手をひねり上げて言った。

「お客さま。あまり騒がれますと、騎士団を呼びますよ?」

 クレアの言葉に、痛みに顔をゆがめていた男がギクリと震えた。どうやらこの男、何か後ろ暗い事を隠しているようだ。

 ホッとした顔になったサーラがクレアに言った。

「クレア、ありがとう。このお客さん、すぐにある場所に行ってくれって言うんだけど、クロードたちは任務でいないし、困ってしまって」

 クレアは男をにらんで言った。

「ではお客さま、こうしてはいかがでしょう。私の仲間に風のドラゴンがいます。そのドラゴンに乗って目的地までお連れしましょう」
「うむ、仕方ない。早くしろ」

 クレアはうさんくさい男の依頼を受ける事になった。メロディはクレアの耳元で囁いた。

「なんか感じ悪いおじさんだね?クレアちゃん」

 クレアも無言でうなずいた。

 クレアたちはいったん花屋に戻る事にした。花屋は休けい中の看板を出しているので、クローズの看板に変えなければいけない。

 花屋に帰る道すがら、メロディはしきりに男に話しかけていた。ねぇ、おじさん。お仕事何してるの?ねぇ、何でそんなに急いでいるの?

 男はメロディの質問をことごとく無視し、どなった。

「うるさい!小娘!黙っていろ」

 メロディはヘソをまげてしまったらしく、フンッだと言ってクレアのとなりを歩いた。

 クレアは男を横目で見ながら、男が何者なのか詮索した。男はとてもいい身なりをしていた。そして、他人に対して命令しなれている。どうやら高い地位の人間のようだ。

 そのような人物が、何故城下町の冒険者協会にみずから出向いたのだろうか。自分の部下にさせれば済む事だ。

 これは何かありそうだ。クレアがあごを撫でながら考えていると、花屋の前に人が立っていた。

 近所でお世話になっているマサラだ。マサラはホッとした顔になって言った。

「良かったぁ。クレア、メロディ、ウェン。あなたたちが帰って来て。お城から緊急の手紙だよ?」

 
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