冒険者になれなかったので花屋始めました

メロディの結婚観

　メロディとクレアは、大きくなったドラゴンのウェントゥスに乗って、城下町へと飛んでいた。メロディの腰に腕を回して、後ろに乗っているクレアが言った。

「どうするのよメロディ。デルクにプロポーズされちゃったじゃない」
「あはは。何言ってんのクレアちゃん。子供の言った事だよ？デルクだってすぐに忘れちゃうよ」

　メロディのあっけらかんとした答えに、クレアはメロディの腰に回す手に力を入れて言った。

「そんな事ない。デルクにとって、メロディはあこがれになったの。幼い頃のあこがれはずっと心の中に残っているものよ？」

　クレアの真剣な声に、メロディも少し考えてから答えた。

「うぅん。でも、あたしは結婚はしないかな。クレアちゃんが結婚して、クレアちゃんとウェンの次に好きな人ができたら結婚するかもしれないけど」
「何よそれ！」

　メロディの答えにクレアが怒る。メロディはクスリと笑った。クレアの考えは正しい。幼い頃のあこがれは容易には変わらない。メロディは幼い頃、クレアにあこがれたのだ。真っ直ぐに前だけを見て、ひたすら努力を重ねる後ろ姿を必死に追いかけて来たのだ。

　クレアが道を進むなら、メロディはその後を何が何でもついて行く。クレアはメロディの腰にぎゅっとしがみついて小さな声で言った。

「だとしたら当分メロディは結婚なんてできないわよ？私はこれからもずっと冒険者であり続けるんだから」
「じゃあ、あたしたち独身貴族だね！あれ？何で結婚しないだけで爵位がもらえるんだろう」
「もう、メロディったら変な事言って！」

　クレアの声色が柔らかくなった。もう怒っていない証拠だ。メロディは話題を変えた。

「クレアちゃん。そういえば、しょうかんって何？パメラさんに聞いたら変な顔されちゃったの」
「！。メ、メロディにはまだ早いから、もう少し大きくなってから説明するわ！」
「えぇ？！何で、クレアちゃんとあたしは同い年だよ？！ズルい！」
「ずるくないの！」
「じゃあケチ！」
「ケチじゃない！」
「ピィー！」

　メロディとクレアが言い合っていると、メロディたちを乗せているドラゴンのウェントゥスが鳴いた。クレアがメロディに聞いた。

「ウェン、何て言ったの？」
「あたしたちが楽しそうだから仲間に入れろだって！」
「楽しそうにしてたんじゃないの！」
「ウェンも一緒に言おう！クレアちゃんのケチ！」
「ピピィ！」
「もぉ、ケチなんかじゃないったら！」

　メロディは何だかおかしくなって笑った。怒っていたクレアもつられて笑う。ウェントゥスは嬉しそうにピィッと鳴いた。