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メロディのムチ

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「クレアちゃんに何すんのよ!」

 クレアが恐怖に身体をこわばらせていると、メロディの鋭い声が聞こえた。今にもクレアを斬り殺そうとしている盗賊の手に、何かが巻き付いた。

 ムチの先端だ。クレアがそう気づいた瞬間、盗賊は後ろに引っ張られて仰向けに倒れてしまった。倒れた盗賊の腕にはメロディのムチが巻きついていた。

「クレアちゃん!大丈夫?!」

 メロディはクレアの側に駆け寄ると、仰向けに倒れている盗賊を植物魔法です巻きにした。

 メロディはクレアの肩を抱いて、支えてくれながら言った。

「すごいよ、クレアちゃん!水魔法の剣成功したね?!」

 メロディは無邪気に喜んでくれた。クレアは疲労感で弱々しく笑いながら言った。

「メロディのムチもすごかったわ。助けてくれてありがとう」
「えへへ」

 メロディは照れたらしく頭をかいて笑った。遅れてやって来たドラゴンのウェントゥスがピィピィと鳴いた。クレアは微笑んで言った。

「ええ、ウェンもとってもかっこよかったわよ?」
「ピィ!」

 ウェントゥスは得意げに鳴いた。メロディはクレアに手を貸して立たせてくれた。だがふらふらしてうまく歩く事ができない。これではクレアはもう戦力にならないだろう。

 おそらくクレアのハンパな攻撃では魔法使いは倒せなかっただろう。クレアがぼんやり考えていると、地をはうような声がした。

「クソガキィ。よくも俺さまをこんな目に合わせてくれたなぁ。八つ裂きにしてるぅ」

 血まみれになった魔法使いが、恐ろしい形相でクレアをにらんでいた。メロディとウェントゥスが、クレアをかばうように前に出た。

 モニカを抱き寄せているクロードが叫んだ。

「クレア、メロディ、ウェン。戦いから離脱しろ!防御魔法を使って待機!」 

 クロードの指示に、ウェントゥスはピィと鳴いた。ウェントゥスはクレアとメロディと自分を防御ドームで包んだ。

 クロードは魔法使いとにらみ合っていた。クレアは疲労感で倒れてしまいそうになりながら、クロードと魔法使いを見ていた。

 
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