冒険者になれなかったので花屋始めました

ロックの攻撃

「クレア、メロディ、ウェン！俺が地面に着地してから三十秒後に着地しろ！」

　クレアは何故ロックがそのような指示をしたのかわからなかったが、はいと返事をした。ドラゴンのウェントゥスもピィと返す。

　ロックは風飛行魔法でまたたく間に地上に降りると、腰の剣を抜き、風魔法の剣を放った。辺りにいる盗賊たちがなぎ払われた。クレアはポカンと口を開けた。

　クレアたちの真下にいた盗賊団たちは、ロックの一撃により、皆倒されてしまったのだ。ロックはクレアと試合をした時は、実力の百分の一も出してはいなかったのだろう。

　ロックは空中で待機しているクレアたちに手を振って言った。

「お前たち、ここいらに伸びている奴らをふんじばってくれ」

　クレアたちはただちに地上に降りた。メロディは植物魔法で次々と盗賊たちをグルグル巻きにしていった。クレアとウェントゥスはロックと共に、ロックの一撃をまぬがれた盗賊たちを倒していった。

　クレアは水攻撃魔法で、ウェントゥスは風攻撃魔法を使いながら、メロディを守るようにして戦っていた。

　ロックはものすごい速さで駆け回り、クレアとウェントゥスが一人の盗賊を倒す間に、三、四人の盗賊を倒していった。

　クレアは横目でロックの風魔法の剣を見ていた。ふとロックと目が合うと、彼は少し怖い顔を作って言った。

「クレア、お前の風魔法の剣はまだまだ練習中だ。決して実戦で使うんじゃないぞ？」
「はい！」

　クレアの返事を聞いたロックは、安心したように、群がって突進してくる盗賊たちを倒しに行った。

　クレアだとて己れの未熟さは充分理解している。もしクレアがまだ練習中の水魔法の剣を繰り出したら、周りにいる人たちを傷つけてしまうかもしれないのだ。クレアはドラゴンのウェントゥスと共に、確実に盗賊たちを倒していかなければいけないのだ。

　クレアは呼吸を整えながら辺りを見回した。あらかたの盗賊たちを捕縛したようだ。メロディはせっせと倒れた盗賊を拘束している。ウェントゥスはメロディを守るために辺りを警戒していた。

　メロディの安全を確認し、クレアはホッと息をついて、メロディたちから距離を取った。

　突然クロードの叫ぶ声が聞こえた。モニカ、と。クレアは耳を疑った。モニカは強い魔法使いだ、決してウィーペラ魔法団の魔法使いなどには負けないと思っていた。

　クレアが空を見上げると、真っ逆さまに地上に落ちてくるモニカの姿があった。