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子供たちの願い
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メロディは花屋の店頭に立っていた。今日はお客がちっとも来なくてヒマな日だ。これでは眠くなってしまう、メロディが大きなあくびをしていると、建物の陰からぴょこんと子供の顔がのぞいていた。男の子と女の子だ。
あの子たちはたしか。メロディは記憶をたぐる。メロディの友達であるドラゴンのウェントゥスは可愛い子ドラゴンなので、町の子供たちに大人気だ。
近所の子供たちがウェントゥスと遊びたいとやってくる。その中にいた子供たちだ。名前は男の子がアーントで、女の子がカロリンだ。二人は兄妹なのだ。
メロディは笑顔で手まねきをした。二人はおっかなびっくりメロディの前にやってきた。メロディは二人に聞いた。
「今日はどうしたの?ウェンと遊びたい?」
メロディの問いに、兄のアーントが首を振った。妹のカロリンが不安そうにメロディを見上げる。メロディは首をかしげていると、アーントが大声で言った。
「お、俺たち花が欲しいんだ!」
「お花?何の花がいい?」
メロディの言葉にカロリンが小声で言った。
「エーデルワイス。お母さんが好きなの。お母さん毎日お仕事でとっても疲れているの。大好きなお花を見れば元気が出るかもって」
「とってもいい考えね!エーデルワイスは可愛いお花だものね。あたしも好きよ」
「だけどね、私たちお金がないの」
メロディは困ってしまった。二人はお母さんにお花をプレゼントしたいけど、お金がないというのだ。メロディは二人に小声で言った。
「じゃあ内緒でエーデルワイスを咲かせてあげる」
「本当?!」
アーントとカロリンが嬉しそうに言った。メロディがうんうんとうなずいていると、背後で低い声がした。
「メロディ、ちょっとお待ち」
「ゲェ!クレアちゃん」
メロディがギクリとしながら振り向くと、クレアが不機嫌そうに腕を組んで立っていた。クレアからはいつも、意味もなく無料で花を渡してはいけないと言われていたのだ。メロディが固まっていると、クレアはメロディを無視して、アーントとカロリンの目線にあわせて身体をかがめて言った。
「アーント、カロリン。お母さんにお花をプレゼントしてあげるのはとてもいい事だけど、ここは花屋なの。お客さんは皆お金を払ってお花を購入するの。だけどアーントとカロリンがタダでお花をもらったら、お金を払って花を買ったお客さんたちはどう思うかな?」
「・・・。俺たちの事をずるいと思う」
アーントがうつむきながら答えた。クレアはうなずいて言った。
「そうね、じゃあこうしましょう。今日一日この花屋のお手伝いをしてくれる?そうしたらアルバイト代としてお花をあげるわ」
「本当か?!俺、お手伝いする!」
「わ、私も」
「決まりね?」
クレアは二人にウィンクをしてから、メロディに振り向いて言った。
「メロディ、というわけでこの子たちと店番お願い」
「?。クレアちゃんどこか行くの?」
「ええ。ウェンと外にお花を売りに行くわ。メロディ、見た目がゴージャスなお花の鉢を十個咲かせて?それを荷車に乗せてツタ魔法でウェンの身体に巻きつけて?」
クレアはやつぎ早にメロディに用を言いつけた。メロディは慌てて支度を始めた。
あの子たちはたしか。メロディは記憶をたぐる。メロディの友達であるドラゴンのウェントゥスは可愛い子ドラゴンなので、町の子供たちに大人気だ。
近所の子供たちがウェントゥスと遊びたいとやってくる。その中にいた子供たちだ。名前は男の子がアーントで、女の子がカロリンだ。二人は兄妹なのだ。
メロディは笑顔で手まねきをした。二人はおっかなびっくりメロディの前にやってきた。メロディは二人に聞いた。
「今日はどうしたの?ウェンと遊びたい?」
メロディの問いに、兄のアーントが首を振った。妹のカロリンが不安そうにメロディを見上げる。メロディは首をかしげていると、アーントが大声で言った。
「お、俺たち花が欲しいんだ!」
「お花?何の花がいい?」
メロディの言葉にカロリンが小声で言った。
「エーデルワイス。お母さんが好きなの。お母さん毎日お仕事でとっても疲れているの。大好きなお花を見れば元気が出るかもって」
「とってもいい考えね!エーデルワイスは可愛いお花だものね。あたしも好きよ」
「だけどね、私たちお金がないの」
メロディは困ってしまった。二人はお母さんにお花をプレゼントしたいけど、お金がないというのだ。メロディは二人に小声で言った。
「じゃあ内緒でエーデルワイスを咲かせてあげる」
「本当?!」
アーントとカロリンが嬉しそうに言った。メロディがうんうんとうなずいていると、背後で低い声がした。
「メロディ、ちょっとお待ち」
「ゲェ!クレアちゃん」
メロディがギクリとしながら振り向くと、クレアが不機嫌そうに腕を組んで立っていた。クレアからはいつも、意味もなく無料で花を渡してはいけないと言われていたのだ。メロディが固まっていると、クレアはメロディを無視して、アーントとカロリンの目線にあわせて身体をかがめて言った。
「アーント、カロリン。お母さんにお花をプレゼントしてあげるのはとてもいい事だけど、ここは花屋なの。お客さんは皆お金を払ってお花を購入するの。だけどアーントとカロリンがタダでお花をもらったら、お金を払って花を買ったお客さんたちはどう思うかな?」
「・・・。俺たちの事をずるいと思う」
アーントがうつむきながら答えた。クレアはうなずいて言った。
「そうね、じゃあこうしましょう。今日一日この花屋のお手伝いをしてくれる?そうしたらアルバイト代としてお花をあげるわ」
「本当か?!俺、お手伝いする!」
「わ、私も」
「決まりね?」
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「メロディ、というわけでこの子たちと店番お願い」
「?。クレアちゃんどこか行くの?」
「ええ。ウェンと外にお花を売りに行くわ。メロディ、見た目がゴージャスなお花の鉢を十個咲かせて?それを荷車に乗せてツタ魔法でウェンの身体に巻きつけて?」
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