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帰還

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 その日クレアたちはギュンター家族の家に泊めてもらった。ギュンターの妻コーラは温かい手料理でクレアたちをもてなしてくれた。

 食事の席で、ギュンターはクレアたちに言った。

「クレア、メロディ。君たちはもう王都には帰れないと考えているようだが、一度王都に帰ってみるといい。国王陛下はきっとクレアたちの事を考えてくださっている。妻のコーラが産後に体調を崩した時、私は困り果てていた。私たちは他に近しい身寄りもなかったので幼い赤子の世話をしてくれる者がいなかったのだ。国王はふさぎ込んでいる私に声をかけてくださった。私は国王直属の護衛騎士だ、国王にお会いする機会も多かった。私は思いあまって国王に相談した。すると国王はすぐさま私に休暇を下さったのだ。休暇中の給金も支払われた。私は国王の慈悲深いお心に触れて、誓ったのだ。この方のために命をささげようと」

 ギュンターはそこで言葉を切ると、クレアたちを見つめて言った。

「国王陛下はクレアとメロディ、ウェンにとても感謝している。だからきっと悪いようにはならない」

 クレアはあいまいにうなずいた。翌日クレアたちは王都に帰る事にした。クレアとメロディはスウスウと寝息をたてているバスチャン王子の頬にキスをした。ウェントゥスは自分の鼻でバスチャンの頬をツンツンした。ウェントゥスなりの別れのあいさつなのだろう。メロディがバスチャンを見つめて言った。

「バスチャン、いい子でね?ギュンターさんたちにいっぱい可愛がってもらうんだよ?」

 クレアもバスチャンに微笑んで言った。

「バスチャン。貴方の幸せを心から願っているわ」

 クレアたちはギュンターたちに別れをつげた。ウェントゥスはクレアたちを乗せて城下町の花屋に連れ帰ってくれた。

 花屋は開店していて、人の気配がした。クレアたちが店内に入ると、マサラがホッとした顔をして出て来て言った。

「良かった。あなたたち無事だったのね?心配したわ」

 マサラはクレアに頼まれた通り、店番をしてくれていたのだ。マサラはクレアとメロディを優しく抱きしめてくれた。メロディは嬉しそうにただいまと答えた。

 マサラはメロディが用意したいった花の鉢植えを全て売ってくれて、客が欲しがる花の予約まで取ってくれていたのだ。

 クレアはマサラの優しさに涙が出そうになった。なおのこと王子を探すジョスト大公の手の者が、マサラに危害を加えるのではないかと恐れた。クレアはマサラにおずおずとたずねた。

「マサラさん。ここにおかしな連中来ませんでしたか?」
「おかしな?ああ、城からの使者が来たわよ?この手紙をあなたたちに渡してくれって」

 マサラは一通の手紙をクレアに渡した。手紙にはタンドール国王の紋章が押印されていた。
 
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