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バスチャンのこれから

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 大きくなったウェントゥスの背中に乗って王都の騎士団に行くと、くしくもドラゴンハンターを捕まえた時に対応してくれた騎士がいた。

 騎士はクレアとメロディを見て、またお前たちかという顔をしていた。ギュンターはバスチャン王子を抱っこして、騎士団本部の外で待っていた。クレアは笑顔で黒こげになった魔法使いを指さして言った。

「この魔法使いはウィーペラ魔法団の一員です。厳しくじん問してください」

 騎士は驚いてクレアを見た。クレアはウィーペラ魔法団の魔法使いが、魔法具の腕輪をつけられて魔法が使えなくなった事。魔法具を外すには、国王陛下が持つカギがなければ決して外せないと伝えた。


 クレアたちは大きなウェントゥスに乗りながら、ギュンターに次の行き先を聞いた。ギュンターはバスチャン王子を大切そうに抱きしめながら答えた。

「実は東に行ってくれと言ったのは、追手を巻くためだったのだ。実際にバスチャン王子をかくまう場所は西にあるのだ。クレア、メロディ、ウェン行ってくれるか?」

 クレアとメロディ、ウェントゥスは笑顔で答えた。


 クレアたちはバスチャン王子にミルクを飲ませるために何度か村に降り立ち、野宿をし、五日をかけて目的地の場所に到着した。ギュンターが指差して言った。

「きっとあれだ。あのえんとつのある家が隠れ家だ。あそこに国王が信頼している部下が先に潜伏しているんだ。これから彼らと共にバスチャン王子を守って行くのだ」

 いつも厳しいギュンターの口調が少しだけやわらいだ。きっと王子を守るためとても緊張していたのだろう。クレアたちはゆっくりと家の前に降り立った。ギュンターが家のドアを叩き、タンドールの光。と言った。もしかすると合言葉なのかもしれない。

 ゆっくりとドアが開き、優しげな女性が出てきた。彼女を見たギュンターの顔が驚きの表情を浮かべた。

「コーラ。何故お前がここに」
「あなた、ご無事で」

 どうやらこの女性がギュンターの妻のようだ。コーラの後ろから男の子と女の子が飛び出してきた。子供たちは口々に父上、父上と叫んで嬉しそうだ。コーラはギュンターからバスチャン王子を受け取ると、慣れた手で抱き上げた。

 子供たちは待ちきれずにギュンターにしがみついた。ギュンターは子供たちを抱き上げた頬ずりをした。コーラがギュンターに言った。

「国王陛下がおっしゃたのです。我が子を信頼のできる者たちに育ててほしいと」
「ああ、我が君。必ずやら我々でバスチャン王子を健やかにお育ていたします」

 ギュンターの目から涙がハラハラとこぼれこちた。国王はギュンターにバスチャン王子を守り育てるよう命じたのだ。ギュンターの愛する家族と共に。

 クレアとメロディは顔を見合わせて微笑んだ。きっとバスチャン王子は、温かい家族の中で大切に育てられるだろう。
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