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クレアの決意

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 クレアはギュンターから赤ん坊を預かると、彼に仮眠を取るよううながした。ギュンターは素直に応じた。

 クレアが赤ん坊を抱っこしていると、メロディとウェントゥスは赤ちゃんが可愛いといってちょっかいを出していた。

 クレアは微笑んでメロディに言った。

「メロディ」
「何?クレアちゃん」
「お店だいぶ休んじゃうね?」
「そうだね。でもマサラさんに留守番お願いしてあるから大丈夫だよ」
「そうね、」

 クレアはもう花屋のある家には帰れないかもしれないと考えていた。ギュンターと王子を安全な所に連れて行くのに時間がかかるというのもあるが、クレアとメロディもジョスト大公に目をつけられていると考えて間違いないだろう。

 クレアたちは王妃の看病のために、ひんぱんに城をおとずれていた。きっとジョスト大公の耳にも入っているだろう。ギュンターたちを安全な場所に送り届けた後、クレアたちが花屋に戻ればジョスト大公の手の者に捕まってしまい、王子の居場所を無理矢理聞き出そうとするだろう。

 そうなればクレアたちだけではなく、クレアたちに親切にしてくれた町の人たちも危険にさらされてしまうかもしれない。だからクレアはメロディとウェントゥスと城下町を去った方がいいと考えていたのだ。

 もうあの家には戻れないかもしれない。その事をメロディに言うのは辛かった。だがメロディにも覚悟してもらわなければいけない。クレアはくちびるをなめてからメロディに言った。

「ねぇ、メロディ。もしかしたら、もうあの家には帰れないかもしれない」

 メロディは赤ん坊に向けていた視線をクレアに移した。びっくりした顔をしてから、悲しそうに微笑んで言った。

「そうだね。町に戻ったら、皆に迷惑かけるかもしれないものね」

 メロディも覚悟をしてくれていたのだ。メロディはクレアをいたわるように言葉を続けた。

「あたしたち、冒険者になれないかもしれないね?」
「そうね」

 冒険者になるためには、王都の冒険者協会の冒険者試験に合格しなければいけない。だがもうクレアたちが町に戻れなければ、二度と冒険者試験は受けられない。

 冒険者になりたい。小さい頃からのクレアの夢だった。だが今クレアの腕の中にいる幼いいのちは、クレアたちの助けを必要としているのだ。冒険者とは困っている人々を助ける存在だ。

 クレアは過酷な運命の中にいるバスチャン王子を守りたいと強く思った。メロディは赤ん坊の小さな手をちょこんとつついてから言った。

「先の事を今考えてもしょうがないね。目の前のこの子の安全を一番に考えないとね」

 メロディの言葉にクレアは微笑んだ。メロディも同じ気持ちでいてくれる事が何より嬉しかった。


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