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城からの依頼

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 その日はいつもと変わらない日だった。午前中はメロディとウェントゥスが花屋の店番に立ち、午後はクレアが店に立った。

 客は近所の人たちが数人だけだった。今日はこのまま店じまいかと思った時、珍客があった。その男は豪華な服を着て、兵士を二人供につけたくらいの高そうな人物だった。男は偉そうな態度で言った。

「ここが植物魔法を使う花屋か?」
「はい。お客さま、何をお探しでしょうか?」
「うむ、光栄に思うがよい。貴様は恐れ多くもエレノア王女に召集されたのだ」

 クレアは驚いた。エレノア王女といえば、この国の第一王女だ。タンドール国王は変わった王で、側室を持たなかった。したがって妻に迎えたのは正妃ただ一人。そのため子供はエレノア王女しかいないのだ。タンドール国の法律で、国王は王の血筋の男児のみとされている。したがってエレノア王女には王位継承権はない。

 この国の王女がこの小さな花屋に一体何のようがあるのだろうか。クレアは不安になった。クレアの偏見かもしれないが、くらいの高い人間はごう慢な者が多い気がする。平民のクレアとは人種が違うのだと思う。平民のクレアたちは、どのような理不尽な要求をされても、断るすべはないのだ。


 クレアとメロディ、ウェントゥスはタンドール城の中にいた。振り向けば輝くような宝飾品の数々が所狭しと並べられ、目がチカチカした。

 メロディは物珍しそうにキョロキョロしていた。しばらくして十二歳くらいの女の子がやって来た。女の子は豪華なドレスを着て、偉そうに言った。

「お前たちが魔法を使う花屋か。わたくしはエレノア王女だ。お前たちにようを言いつける事、光栄に思うがよい」

 クレアはおじきをしながらエレノア王女をチラリと見た。王女は大きな瞳に上を向いた鼻、鼻のまわりにはそばかすが沢山あり、あまり可愛くなかった。これならメロディの方がよっぽどお姫さまに見える。クレアが心の中でそう思っていると、メロディがとんでもない事を言い出した。

「なんだぁ。お姫さまっていうからどんな美少女かと思ったけど、そうでもないんだね。クレアちゃんの方がよっぽどお姫さまみたい」
「ぐふぅっ」

 メロディの失言にクレアはうめいた。おそるおそるエレノア王女を見ると、顔を真っ赤にして怒っている。王女が叫んだ。

「何と無礼な!わたくしは女王なのだぞ!」
「ごめんなさい」
「お前たち、ちょっと可愛いからと言って失礼極まりないぞ!だがわたくしはかんだいだからな許してやる」
「ありがとう!お姫さま!」

 王女の許しの言葉に、クレアはほうっとため息をついた。早く王女の要求を満たして帰りたかった。

 王女は中々クレアたちを何故呼んだのか話してくれなかった。それよりも、パタパタとメロディの周りを飛んでいるドラゴンのウェントゥスに興味津々のようだ。エレノア王女はとんでもない事を言い出した。

「おお、これは可愛いドラゴンだな。わたくしはこれが欲しい。おい、そのドラゴンをわたくしによこすのだ」
 
 エレノア王女の無理な要求に、クレアは背筋が寒くなった。

 
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