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悲しみ
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バジーレの棺は、メロディの植物ツタ魔法で、しっかりとウェントゥスの腹に巻きつけられた。クレアはメロディと共にウェントゥスの背中に飛び乗った。
夕方頃にバジーレの家にたどり着いた。バジーレの奥さんと子供たちの悲しみようは、クレアは見ていられなかった。メロディは涙をこらえてジッとしていた。バジーレの奥さんは、クレアたちに泣きはらした顔で微笑んで言った。
「クレアさん、メロディさん、ウェンちゃん。夫を連れて来てくれて本当にありがとう。夫が冒険者になる時、こうなる事は常に覚悟していました。だけど、だめね。いくら覚悟していても」
バジーレの奥さんはそう言って嗚咽をもらした。クレアはメロディと目配せをして、二人の子供たちを家の外に連れ出した。バジーレと奥さんを二人きりにさせるためだ。
子供たちはクレアとメロディに手を引かれながらわんわん泣いていた。クレアは子供たちを、バジーレが植えたりんごの木まで連れて来て言った。
「ねぇ、二人とも。お父さんがね、このりんごの木を植えたのはね、貴方たちの事これからもずっと見守っているよって伝えたかったからなの。だからね、お父さんは、お父さんの心はずっと貴方たちとお母さんと一緒なのよ?」
クレアの言葉は、幼い子供たちには難しかったかもしれない。だが子供たちは、クレアの言葉をジッと聞いていた。クレアは子供たちの幼い顔に、バジーレの凛々しい顔の面影を見つけた。クレアは微笑んで二人の子供たちに言った。
「貴方たちのお父さんはね?若い冒険者の命を助けて亡くなったの。私はバジーレさんほど立派な人を知らないわ。私は貴方たちのお父さんをとても尊敬しているわ」
子供たちは泣きはらした顔でうなずいて言った。
「俺、大きくなったら冒険者になる。父ちゃんみたいな立派な冒険者に」
「僕も」
子供たちのいじらしい言葉に、クレアはたまらなくなり、二人をきつく抱きしめた。
バジーレの埋葬は、翌日村の人たちとする事になり、今夜はバジーレと奥さんと子供たちで過ごす事になった。クレアたちはバジーレの家族と再開を約束し、王都に戻った。
クレアたちはその足で冒険者協会に戻ると、時はすでに夜中になっていた。冒険者協会は業務時間を終了し、ドアは施錠されていた。ドアの前には、あの若い男がポツンとつっ立っていた。クレアはズカズカと男の前に歩いて行くと、厳しい口調で言った。
「バジーレさんの奥さんから伝言よ。気持ちの生理がつかないので会う事は遠慮させてください」
若い男の顔はみるみるこわばった。クレアは男をにらみながら言葉を続けた。
「夫が助けた命、大切にしてください。ですって」
若い男は驚いたようにクレアを見て、泣きながら言った。
「お、俺はこれからどうしたらいいんだ」
「そんな事、私は知らない。もう冒険者が怖ければ辞めればいい。もしこれからも冒険者を続けるなら、バジーレさんのような冒険者になればいいんじゃないの」
クレアはそれだけ言い捨てると、メロディの手を引っ張って、ウェントゥスをうながし家に帰った。
道すがら、クレアは何故あの若い男に攻撃的になったのか考えた。そして、ある考えに思いいたった。あの若い男はクレアとそっくりだったのだ。
クレアも水魔法を使えるからといって、自分の実力を過信していた。もしクレアが冒険者試験に合格して、意気ようようと冒険者の任務に出ていたら、あの若い男のような過ちをおかしていなのではないだろうか。
クレアの脳裏にバジーレの心配げな顔が浮かんだ。バジーレはクレアとメロディが冒険者になる事を歓迎してはいなかったようだ。それはバジーレが、冒険者の危険さを身を持って知っていたからに他ならない。
家に帰ると、ウェントゥスがメロディとクレアにべったりくっついて離れなかった。バジーレの家族の様子を見て、どうやらもうバジーレには会えないのだと悟ったようだ。
クレアはウェントゥスを抱っこしながら優しい声で言った。
「大丈夫よ?ウェン。私とメロディはいなくなったりしないわ」
メロディもうなずいて優しくウェントゥスの頭を撫でた。
夕方頃にバジーレの家にたどり着いた。バジーレの奥さんと子供たちの悲しみようは、クレアは見ていられなかった。メロディは涙をこらえてジッとしていた。バジーレの奥さんは、クレアたちに泣きはらした顔で微笑んで言った。
「クレアさん、メロディさん、ウェンちゃん。夫を連れて来てくれて本当にありがとう。夫が冒険者になる時、こうなる事は常に覚悟していました。だけど、だめね。いくら覚悟していても」
バジーレの奥さんはそう言って嗚咽をもらした。クレアはメロディと目配せをして、二人の子供たちを家の外に連れ出した。バジーレと奥さんを二人きりにさせるためだ。
子供たちはクレアとメロディに手を引かれながらわんわん泣いていた。クレアは子供たちを、バジーレが植えたりんごの木まで連れて来て言った。
「ねぇ、二人とも。お父さんがね、このりんごの木を植えたのはね、貴方たちの事これからもずっと見守っているよって伝えたかったからなの。だからね、お父さんは、お父さんの心はずっと貴方たちとお母さんと一緒なのよ?」
クレアの言葉は、幼い子供たちには難しかったかもしれない。だが子供たちは、クレアの言葉をジッと聞いていた。クレアは子供たちの幼い顔に、バジーレの凛々しい顔の面影を見つけた。クレアは微笑んで二人の子供たちに言った。
「貴方たちのお父さんはね?若い冒険者の命を助けて亡くなったの。私はバジーレさんほど立派な人を知らないわ。私は貴方たちのお父さんをとても尊敬しているわ」
子供たちは泣きはらした顔でうなずいて言った。
「俺、大きくなったら冒険者になる。父ちゃんみたいな立派な冒険者に」
「僕も」
子供たちのいじらしい言葉に、クレアはたまらなくなり、二人をきつく抱きしめた。
バジーレの埋葬は、翌日村の人たちとする事になり、今夜はバジーレと奥さんと子供たちで過ごす事になった。クレアたちはバジーレの家族と再開を約束し、王都に戻った。
クレアたちはその足で冒険者協会に戻ると、時はすでに夜中になっていた。冒険者協会は業務時間を終了し、ドアは施錠されていた。ドアの前には、あの若い男がポツンとつっ立っていた。クレアはズカズカと男の前に歩いて行くと、厳しい口調で言った。
「バジーレさんの奥さんから伝言よ。気持ちの生理がつかないので会う事は遠慮させてください」
若い男の顔はみるみるこわばった。クレアは男をにらみながら言葉を続けた。
「夫が助けた命、大切にしてください。ですって」
若い男は驚いたようにクレアを見て、泣きながら言った。
「お、俺はこれからどうしたらいいんだ」
「そんな事、私は知らない。もう冒険者が怖ければ辞めればいい。もしこれからも冒険者を続けるなら、バジーレさんのような冒険者になればいいんじゃないの」
クレアはそれだけ言い捨てると、メロディの手を引っ張って、ウェントゥスをうながし家に帰った。
道すがら、クレアは何故あの若い男に攻撃的になったのか考えた。そして、ある考えに思いいたった。あの若い男はクレアとそっくりだったのだ。
クレアも水魔法を使えるからといって、自分の実力を過信していた。もしクレアが冒険者試験に合格して、意気ようようと冒険者の任務に出ていたら、あの若い男のような過ちをおかしていなのではないだろうか。
クレアの脳裏にバジーレの心配げな顔が浮かんだ。バジーレはクレアとメロディが冒険者になる事を歓迎してはいなかったようだ。それはバジーレが、冒険者の危険さを身を持って知っていたからに他ならない。
家に帰ると、ウェントゥスがメロディとクレアにべったりくっついて離れなかった。バジーレの家族の様子を見て、どうやらもうバジーレには会えないのだと悟ったようだ。
クレアはウェントゥスを抱っこしながら優しい声で言った。
「大丈夫よ?ウェン。私とメロディはいなくなったりしないわ」
メロディもうなずいて優しくウェントゥスの頭を撫でた。
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