21 / 196
約束
しおりを挟む
クレアとメロディが小さい頃、森で迷子になった。辺りはだんだん暗くなり、怖がりのメロディは泣き出してしまった。
クレアはあまり心配はしていなかった。もし日暮れまでに帰り道がわからなければ、むやみに歩きまわるのは危険だ。今夜はここで夜明かしをした方が良さそうだ。
もし獣に襲われそうになっても、クレアは水攻撃魔法で撃退する自信があった。もし空腹になっても、メロディの植物魔法で果物を作ってもらえばいいのだ。
クレアがメロディに心配ないといくら言っても、彼女の泣き声はひどくなるばかりだった。クレアはため息をついてから、メロディの涙に濡れた手をつないだ。
メロディは驚いた顔をしたが、涙をポロポロ流しながら微笑んだ。クレアはホッと息を吐いて言った。
「やっと泣き止んだ。ずっと手つないでいてあげるから、もう泣かないの」
「本当?」
「?」
「本当にずっと手をつないでいてくれる?おばあちゃんになっても?!」
そこでクレアは吹き出してしまった。クレアはメロディに、迷子の間中手をつないでいると言ったのだが、メロディはクレアがずっと側にいてくれると理解したようだ。クレアは苦笑しながらうなずくと、メロディは花が咲いたような笑顔になった。
結局クレアとメロディは真っ暗な森で野宿をする事はなかった。クレアとメロディの父親がクレアたちを探しに来てくれたのだ。
クレアはゆっくりと意識を過去の思い出から戻した。クレアの見上げる先には、メロディが必死に笑顔を作りながらクレアの右手を握りしめていた。
思い出した。クレアはメロディと約束したのだ。ずっと一緒にいると。だがその約束がゆらぎはじめていた。クレアは死ぬつもりなんてなかった。最後の最後まで生き残る道を探す。だがもしメロディの言うように、この谷底がとても深くて落下速度がつけば、いくらクレアが水魔法を発動させても無事ではすまないだろう。
メロディはクレアを安心させるため、笑顔で言った。
「クレアちゃん、ゆっくり左手をあげて?あたしの手をしっかり掴んで?」
クレアは心の中で叫んだ。メロディ、ごめんなさい。もしかしたら約束を破ってしまうかもしれない。クレアはかんまんな動きで左手をあげた。メロディがニコリと微笑む。この左手はメロディの手を掴むためのものではない。メロディが必死に掴んでいるクレアの手を振りほどくためのものだ。
クレアの目に涙が浮かんだ。クレアは自分が傷つくより、メロディに助かってほしいのだ。
クレアはあまり心配はしていなかった。もし日暮れまでに帰り道がわからなければ、むやみに歩きまわるのは危険だ。今夜はここで夜明かしをした方が良さそうだ。
もし獣に襲われそうになっても、クレアは水攻撃魔法で撃退する自信があった。もし空腹になっても、メロディの植物魔法で果物を作ってもらえばいいのだ。
クレアがメロディに心配ないといくら言っても、彼女の泣き声はひどくなるばかりだった。クレアはため息をついてから、メロディの涙に濡れた手をつないだ。
メロディは驚いた顔をしたが、涙をポロポロ流しながら微笑んだ。クレアはホッと息を吐いて言った。
「やっと泣き止んだ。ずっと手つないでいてあげるから、もう泣かないの」
「本当?」
「?」
「本当にずっと手をつないでいてくれる?おばあちゃんになっても?!」
そこでクレアは吹き出してしまった。クレアはメロディに、迷子の間中手をつないでいると言ったのだが、メロディはクレアがずっと側にいてくれると理解したようだ。クレアは苦笑しながらうなずくと、メロディは花が咲いたような笑顔になった。
結局クレアとメロディは真っ暗な森で野宿をする事はなかった。クレアとメロディの父親がクレアたちを探しに来てくれたのだ。
クレアはゆっくりと意識を過去の思い出から戻した。クレアの見上げる先には、メロディが必死に笑顔を作りながらクレアの右手を握りしめていた。
思い出した。クレアはメロディと約束したのだ。ずっと一緒にいると。だがその約束がゆらぎはじめていた。クレアは死ぬつもりなんてなかった。最後の最後まで生き残る道を探す。だがもしメロディの言うように、この谷底がとても深くて落下速度がつけば、いくらクレアが水魔法を発動させても無事ではすまないだろう。
メロディはクレアを安心させるため、笑顔で言った。
「クレアちゃん、ゆっくり左手をあげて?あたしの手をしっかり掴んで?」
クレアは心の中で叫んだ。メロディ、ごめんなさい。もしかしたら約束を破ってしまうかもしれない。クレアはかんまんな動きで左手をあげた。メロディがニコリと微笑む。この左手はメロディの手を掴むためのものではない。メロディが必死に掴んでいるクレアの手を振りほどくためのものだ。
クレアの目に涙が浮かんだ。クレアは自分が傷つくより、メロディに助かってほしいのだ。
0
お気に入りに追加
259
あなたにおすすめの小説
異世界でのんびり暮らしてみることにしました
松石 愛弓
ファンタジー
アラサーの社畜OL 湊 瑠香(みなと るか)は、過労で倒れている時に、露店で買った怪しげな花に導かれ異世界に。忙しく辛かった過去を忘れ、異世界でのんびり楽しく暮らしてみることに。優しい人々や可愛い生物との出会い、不思議な植物、コメディ風に突っ込んだり突っ込まれたり。徐々にコメディ路線になっていく予定です。お話の展開など納得のいかないところがあるかもしれませんが、書くことが未熟者の作者ゆえ見逃していただけると助かります。他サイトにも投稿しています。
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
【完結済み】番(つがい)と言われましたが、冒険者として精進してます。
BBやっこ
ファンタジー
冒険者として過ごしていたセリが、突然、番と言われる。「番って何?」
「初めて会ったばかりなのに?」番認定されたが展開に追いつけない中、元実家のこともあり
早々に町を出て行く必要がある。そこで、冒険者パーティ『竜の翼』とともに旅立つことになった[第1章]次に目指すは? [おまけ]でセリの過去を少し!
[第2章]王都へ!森、馬車の旅、[第3章]貿易街、
[第4章]港街へ。追加の依頼を受け3人で船旅。
[第5章]王都に到着するまで
闇の友、後書きにて完結です。
スピンオフ⬇︎
『[R18]運命の相手とベッドの上で体を重ねる』←ストーリーのリンクあり
『[R18] オレ達と番の女は、巣篭もりで愛欲に溺れる。』短編完結済み
番外編のセリュートを主人公にパラレルワールド
『当主代理ですが、実父に会った記憶がありません。』
※それぞれ【完結済み】
稀代の悪女として処刑されたはずの私は、なぜか幼女になって公爵様に溺愛されています
水谷繭
ファンタジー
グレースは皆に悪女と罵られながら処刑された。しかし、確かに死んだはずが目を覚ますと森の中だった。その上、なぜか元の姿とは似ても似つかない幼女の姿になっている。
森を彷徨っていたグレースは、公爵様に見つかりお屋敷に引き取られることに。初めは戸惑っていたグレースだが、都合がいいので、かわい子ぶって公爵家の力を利用することに決める。
公爵様にシャーリーと名付けられ、溺愛されながら過ごすグレース。そんなある日、前世で自分を陥れたシスターと出くわす。公爵様に好意を持っているそのシスターは、シャーリーを世話するという口実で公爵に近づこうとする。シスターの目的を察したグレースは、彼女に復讐することを思いつき……。
◇画像はGirly Drop様からお借りしました
◆エール送ってくれた方ありがとうございます!
集団転送で異世界へ。 ~神の気まぐれによって?異世界生活~
武雅
ファンタジー
永遠の時に存在する神ネレースの気まぐれによって? その創造神ネレースが管理する異世界に日本から30000人が転送されてしまう。
異世界に転送される前になぜか神ネレースとの面談があり、提示された職業に自分の思い通りの職業が無かったので神にダメ元で希望を言ってみたら希望の職業と望みを叶えられその代償として他の転送者よりも過酷な辺境にある秘境の山奥に送られ元の世界に戻りたい以前に速攻で生命の危機にさらされてしまう!
神が面白半分で決めた事象を達成するとその順位により様々な恩恵を授けるとのこと。
「とりあえず町を目指せ!村ではなく町だ!!」とそれ以外特に神ネレースより目的も与えられず転送された人々は・・
主人公は希望の職業を要求した代償としていきなり森を彷徨いゴブリンに追われることに。
神に与えられた職業の能力を使い、チートを目指し、無事に異世界を生き抜くことを目指しつつ自分と同じ転送された人々を探し現実世界への帰還を模索をはじめる。
習慣も風俗も法律も違う異世界はトラブルだらけで息つく暇もなく、転送されたほかの人たちも暴走し・迷走し、異世界からの人々をめぐって国家単位で争奪戦勃発!?
その時、日本では謎の集団集団失踪や、令和のミステリーとして国家もマスコミも世間も大騒ぎ?
転送された人々は無事に元の世界にかえれるのか、それとも異世界の住人になって一生をおえるのか。
それを眺め娯楽とする神の本当の目的は・・・。
※本作は完結まで完成している小説になりますので毎日投降致します。
初作品の為、右も左も分からず作った作品の為、ですます調、口調のブレが激しいですが温かい目でお読み頂ければ幸いでございます。
聖女を追放した国の物語 ~聖女追放小説の『嫌われ役王子』に転生してしまった。~
猫野 にくきゅう
ファンタジー
国を追放された聖女が、隣国で幸せになる。
――おそらくは、そんな内容の小説に出てくる
『嫌われ役』の王子に、転生してしまったようだ。
俺と俺の暮らすこの国の未来には、
惨めな破滅が待ち構えているだろう。
これは、そんな運命を変えるために、
足掻き続ける俺たちの物語。
傷モノ令嬢は冷徹辺境伯に溺愛される
中山紡希
恋愛
父の再婚後、絶世の美女と名高きアイリーンは意地悪な継母と義妹に虐げられる日々を送っていた。
実は、彼女の目元にはある事件をキッカケに痛々しい傷ができてしまった。
それ以来「傷モノ」として扱われ、屋敷に軟禁されて過ごしてきた。
ある日、ひょんなことから仮面舞踏会に参加することに。
目元の傷を隠して参加するアイリーンだが、義妹のソニアによって仮面が剥がされてしまう。
すると、なぜか冷徹辺境伯と呼ばれているエドガーが跪まずき、アイリーンに「結婚してください」と求婚する。
抜群の容姿の良さで社交界で人気のあるエドガーだが、実はある重要な秘密を抱えていて……?
傷モノになったアイリーンが冷徹辺境伯のエドガーに
たっぷり愛され甘やかされるお話。
このお話は書き終えていますので、最後までお楽しみ頂けます。
修正をしながら順次更新していきます。
また、この作品は全年齢ですが、私の他の作品はRシーンありのものがあります。
もし御覧頂けた際にはご注意ください。
※注意※他サイトにも別名義で投稿しています。
収容所生まれの転生幼女は、囚人達と楽しく暮らしたい
三園 七詩
ファンタジー
旧題:収容所生まれの転生幼女は囚人達に溺愛されてますので幸せです
無実の罪で幽閉されたメアリーから生まれた子供は不幸な生い立ちにも関わらず囚人達に溺愛されて幸せに過ごしていた…そんなある時ふとした拍子に前世の記憶を思い出す!
無実の罪で不幸な最後を迎えた母の為!優しくしてくれた囚人達の為に自分頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる