上 下
108 / 108

大団円

しおりを挟む
「なぁ、レオン。そろそろ父さんと再会のハグをしてくれないか?」

 ようやくレオンの涙が止まった頃、ロイドが頭をかきながら言った。そういえば、レオンは長年会いたかった父と再会したのだ。

 父に会ったら何を話そう、もしかすると泣いてしまうかもしれない。色々想像していたが、現実は違った。アルスが死んでしまうかもしれない恐怖感で、レオンの父との再会の喜びは吹っ飛んでしまっていた。

 父に改めてハグをしようと言われ、レオンは何だか気恥ずかしくなって、アルスを抱き上げながら小さな声で言った。

「父さん、僕もう十五歳だよ?」
「ガーン!息子がもうハグしてくれなくなった!」
「ギャハハ!ロイドフラれてやんのダッセェ!」

 グラディウスは、しょんぼりしているロイドの肩にひじをおいてゲラゲラと笑った。グラディウスはひとしきり笑うと、視線を自身の契約者からアルスに移して言った。

「しかしけっさくだな、アルス。お前完全に人間のガキになってるじゃないか。だから人間界に来るのはやめとけって言ったんだ。それとも何か?俺が恋しくなって会いに来ちゃったのか?」

 長身のグラディウスは身体をかがめて、アルスのりんごのようなほっぺたをつついた。

「ちがわい!グラディウスだけが強さの秘訣を知ろうとするのはズルじゃと思ったから人間界に来たのじゃ!」

 アルスとグラディウスの低レベルなののしりあいが続く。本当に彼らは天界で親友同士だったのか疑いたくなる。

 レオンはアルスを抱いたまま、父にうらみ言を言った。

「父さん、何で今まで音信不通だったの?帰って来るのが難しくても、せめて手紙くらいくれたっていいじゃないか。母さんもウィリディスも心配してたんだから」
「えっ!?手紙は半年にいっぺんは送っていたぞ?!冒険者の依頼料と一緒に!」
「そんなの一度も来てないよ。だから母さんとウィリディスが果物や野菜を街に売りに行って、僕を育ててくれたんだ」

 レオンの告白に、ロイドはがく然とした顔になった。アルスをからかう事に飽きたグラディウスがちゃちゃを入れる。

「はは、ロイドは甲斐性なしだなぁ。だから手紙と一緒に金を送るのはやめとけって言ったろ?配達員に盗まれるのがおちだって」

 ロイドはグラディウスの言葉も耳に入らないくらい落ち込みながらレオンに言った。

「じゃあ母さん、とても怒っているよな?父さんは十年、いや十一年も連絡しなかったもんなぁ」
「大丈夫だよ父さん。もし母さんが怒り狂って父さんを攻撃しようとしたら、僕が止めてあげるから」
「・・・。うん、頼む」

 情けない父の姿に、レオンは少し笑って言った。

「それにしても父さん。父さんは何で冒険者になったの?」
「?。何だ、レオンは覚えていないのか?俺が冒険者になったのは、レオンの言葉がきっかけだったんだぞ?」
「僕の、言葉?」
「ああ。父さんとグラディウスが、盗賊から商人を守った話しをレオンにしたら、レオンが言ったんだ。困っている人たちを助けに行ってって。だから俺たちは冒険者になった」

 レオンは驚いてしまった。ロイドが冒険者になったのは、レオンの一言がきっかけだったのだ。

「まぁ。冒険者を続けているうちに、魔物退治の依頼が多くなって、ずいぶんと家から遠いところまで来てしまったがな」

 レオンは何だか嬉しくなって、父にしがみついて言った。

「僕は父さんを尊敬してるよ。さぁ、これから母さんとウィリディスのところに帰って、二人に怒られて?僕たちが一緒に謝ってあげるから」

 父は苦笑しながら、アルスごとレオンを抱きしめた。

 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

異世界に降り立った刀匠の孫─真打─

リゥル
ファンタジー
 異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!  主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。  亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。  召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。  そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。  それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。  過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。 ――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。  カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。

【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~

みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】 事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。 神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。 作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。 「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。 ※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。

アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~

明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!! 『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。  無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。  破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。 「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」 【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

【毎日20時更新】銀の宿り

ユーレカ書房
ファンタジー
それは、魂が生まれ、また還るとこしえの場所――常世国の神と人間との間に生まれた青年、千尋は、みずからの力を忌むべきものとして恐れていた――力を使おうとすると、恐ろしいことが起こるから。だがそれは、千尋の心に呪いがあるためだった。 その呪いのために、千尋は力ある神である自分自身を忘れてしまっていたのだ。 千尋が神に戻ろうとするとき、呪いは千尋を妨げようと災いを振りまく。呪いの正体も、解き方の手がかりも得られぬまま、日照りの村を救うために千尋は意を決して力を揮うのだが………。  『古事記』に記されたイザナギ・イザナミの国生みの物語を背景に、豊葦原と常世のふたつの世界で新たな神話が紡ぎ出される。生と死とは。幸福とは。すべてのものが生み出される源の力を受け継いだ彦神の、真理と創造の幻想譚。

処理中です...