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魔物のしっぽ

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 レオンとアルスはひたすら北を進んだ。ある村に居座っていた魔物を倒した時、魔物がいまわのきわにこんな事を言った。

「お前らが、俺たち魔物を倒しているという人間だな?たかをくくっていられるのも今のうちだ。ジラード様がお前たちの事に気づかれた。いずれお前たちを殺しに来るだろう。ジラード様は上位の魔物、お前たちなど一瞬でしとめるだろう」

 アルスが一刀両断した魔物は、うらみ事をいいながら消えていった。

 アルスはフウッと小さくため息をついて言った。

「ようやく、親玉がしっぽを出したの。ジラードを倒せば人間界も落ち着くであろう」

 レオンは不安に耐えきれなくなり、アルスに聞いた。

「ねぇ、アル。本当にアル一人でジラードを倒せるの?もしアルだけでは難しいなら、父さんとグラディウスを探そうとよ!三人で戦えば、ジラードなんて簡単に倒せるでしょ?!」

 レオンの剣幕に驚いたのか、アルスは目を大きく開いてから、優しい笑顔になって、レオンの頭を撫でながら答えた。

「ああ、そうじゃの。オレ様とグラディウスと、レオンの父者がいればたやすいじゃろう。じゃがの、オレ様たちはジラードの目につくように派手に暴れているのじゃ。ジラードが現れるのが先か、グラディウスたちと会えるのが先かわからん」

 レオンは何だかふてくされた気持ちになり、下を向いた。アルスは苦笑しながらレオンの頭をなでて言った。

「レオン。もしもの事を話しておく。オレ様は必ずジラードに勝つ。じゃが、五体満足とはいかないかもしれない。もしかすると、この人間界で使っている肉体が滅びてしまうかもしれぬ」
「それってアルが死んでしまうって事?!僕は絶対嫌だからね!ねぇ、アル。ジラードに出会ったら逃げようよ!それで父さんとグラディウスを探したら、もう一度戦おうよ!」

 アルスは、息子のだだっ子に手を焼く父親のような顔で答えた。

「レオン。それはダメじゃ。オレ様は神であり、力ある者として、敵から逃げる事は許されないのじゃ。もしオレ様が逃げてしまえば、それでジラードに殺されてしまう人間も出てくるやもしれぬ」

 アルスの言いたい事はわかる。アルスは魔物に無惨に命を奪われている人間を、見て見ぬふりはできないのだ。頭では分かる。だが心では分からない。いや、理解したくなかったのだ。

 目の前のアルスの顔が苦しそうにゆがんだ。

「泣くなレオン。オレ様はレオンに泣かれると弱いのじゃ」

 アルスに指摘され、レオンは自分が泣いている事に気づいた。泣いてる事を自覚してしまうと、涙が止まらなくなった。アルスはオロオロしてから、レオンを抱き上げると、背中をポンポンたたいてくれた。アルスがまだ小さい頃、レオンがしてあげたように。
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