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アルスの話し

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 アルスは精霊族のなりたちも話してくれた。

「精霊の王がオレ様にぼやいておった。うちのバカ娘が、あろう事か人間の男に恋をしてしまったのだと」

 レオンはアルスの話しを面白く聞いていた。レオンが小さな頃、母から聞かされた昔話が、アルスにとっては少し前に起こったできごとなのだから。精霊族の始まりは、精霊の王女と人間の若者が一緒になったのが始まりだ。

 精霊の王は、精霊の王女と伴侶の子孫に祝福を与えた。彼らの子孫たちは、高い魔力を持ち、ある年齢に達すると、精霊と契約して、生涯精霊に守られるようになったのだ。

 アルスは可愛い声でぺちゃくちゃとおしゃべりを続ける。

「オレ様は放っておけと言ったじゃ。人間との恋などはしかのようなものじゃと、いずれ幻滅して天界に帰ってくるであろうと。ほどなくして精霊の王がどなりこんできおった。放っておいたら娘は人間と結婚してしまったと」
「その人たちが僕ら精霊族のご先祖なんだね?」
「ああ。精霊の王め、孫が生まれたら手のひらを返したように、喜びおって。じゃからレオンたち精霊族は、ずっと精霊の王に守られているのじゃ」
「精霊の王女さまはどうなったの?」
「伴侶である人間の男が死んでから、天界に帰った」
「じゃあ、王女さまも僕らを見守ってくれているんだね?」

 アルスは大人びた微笑みを浮かべて、そうじゃなと答えた。

 またある夜は、アルスが人間界にくるきっかけの話しをしてくれた。グラディウスの話しになったからだ。

「グラディウスの奴とは何度も剣の手合わせをしたものじゃ。オレ様は一万五千勝、一万三千敗したの」
「アルもグラディウスもそんなに戦ってたの?周りの人たちは迷惑だったろうね?」
「うむ、ほんの少し迷惑をかけたかもしれぬな。まぁ、それは置いておいて、オレ様たちはどうやったら剣技を高められるか真剣に話し合った。そこでグラディウスが言ったのじゃ。自分は人間の力の強さを知りたいと。オレ様は反対した、何故なら人間はとてもか弱き存在じゃからじゃ。だがグラディウスの決心はかたかった。おりしも精霊の王が、精霊族を祝福して、人間と契約できる環境が整っておったからの」
「そうか、それでグラディウスは父さんと契約したのか」
「そうじゃ。オレ様はグラディウスに遅れをとってはならんと思い、オレ様の契約者たりうる精霊族を探しておったのじゃ。それがレオンだったのじゃ!」

 レオンは自分がアルスに選ばれた事が嬉しかった。


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