召喚魔法で幼児が現れました僕がなりたい職業は保父さんではなく冒険者なのですが

盛平

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対決

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 レオンが手をつないていたアルスが、レオンの手を引っ張って、小さな声で言った。

「レオン。カッタの奴、どこかおかしい」
「おかしいってどういう事?」

 レオンもアルスにならって小声で聞き返す。アルスは、身体をかがめたレオンの耳元でささやくように言った。

「カッタの気配が人間のものではなくなっている。何か嫌なものが混じっている」
「嫌なもの?」
「ああそうじゃ。これは、魔物の気配じゃ」

 レオンはゴクリとつばを飲み込んだ。魔物の気配をまとう人間。レオンたちが戦った、イエーリ団の統領もそうだった。魔物の力を得て、人間ばなれした魔力と姿を有していた。

 カッタも魔物になってしまったのだろうか。レオンが激しく混乱していると、カッタが何かを呼んだ。

「出てこい!メンダークス!」

 カッタの呼びかけに、何ものかが彼の側に現れた。レオンは顔をこわばらせてアルスに質問した。

「アル、何?あれ」

 レオンは目の前に現れた醜悪な存在が何なのか分からなかった。全身真っ黒で、人間の顔のようなものはあるが、身体はクモのようで、手足が八本あり、その先は刃物のように尖っていた。八本の刃物のような手足を器用に動かして、カッタの側に近づくと、メンダークスと呼ばれた何かは、かすれた耳障りな声で言った。

「カッタ、ヤツラヲタオスノダナ?」
「ああ、二人共殺せ」
「ワカッタ。コロスノタノシミダ」

 メンダークスはニヤニヤと笑った。そのおぞましい表情に、レオンは背筋が寒くなった。アルスがレオンの手をギュッと握りながら言った。

「まずいぞレオン。カッタのバカは、召喚魔法を行って、魔物を呼び出して、あろう事か契約してしまったようじゃ」
「魔物と契約するとどうなるの?」
「レオンも見たであろう。イエーリ団の統領は、魔物の力を得て人間では無くなってしまった。・・・、人間に戻れぬ以上、殺さなければいけない」
「えっ?!カッタを殺すっていうの?!」
「うむ。カッタの場合は、魔物から力を与えられて、魔物もどきにされたわけではない。じゃが、魔物と契約して、カッタは明らかに人間とは異なってしまった。まずは契約している魔物を倒さなければならん。レオン、オレ様の食べ物を作れ」

 レオンは小さくうなずいて、カッタに見えないように、自分の背後でいちごを作った。後ろ手で探り、大きないちごを一つ摘み取ると、アルスの手に渡した。アルスは小さな声で言った。

「レオン。オレ様は目の前の魔物を倒す。おそらくカッタはレオンを殺す気でやって来る。レオン、絶対に死ぬでないぞ?」
「うん」

 アルスはレオンの覚悟を知って安心したのか、素早くいちごを頰ばった。
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